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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第12話 家を出た日

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74 脱出

 7月19日木曜日、朝。

 もう二度と戻らないだろう家を出る。


 この家に未練はない。

 マイナス的な思いばかりで、いい思い出はほとんどないから。


 強いて言えば、衣緖菜と暮らしたこの数日間は悪くなかった。

 でもそれは、新天地でもっと思い出をつくりまくればいい。

 それでもこの家を懐かしむ時が、いつか来るのだろうか。


 それでも以前ほど嫌な感じがしないのは何故だろう。

 すぐに気が付いた。

 衣緖菜が来てから、両親と顔をあわせていないからだと。

 

 つまりはそれだけ俺は、今の両親を嫌っていたということか。

 でももう二度と顔を見ることはないだろう。

 そうあって欲しい。

 

 敷地を一度出るときに振り返って、あとはそのまま学校へと自転車を走らせる。

 家を出て4分程度、最初の橋を渡ったところで、衣緖菜から魔法で連絡が入った。


『ケイトさんから、予定通り飛行機に乗ったというメールが来た。今のところ、飛行機が遅れるという情報はないそう』


 今朝スマホを確認したときは、そんなメールは入っていなかったはずだ。


「気づかなかったな。俺が支度をしていた時か?」


『つい今。スマホをポケットに入れて、魔法で操作している。タッチ操作する時に、ただ押すのではなく、表面の電気というか電荷を吸い取るイメージを持たせれば動く。画面は遠くを見る魔法と同じ方法で見ることが出来るはず。今の陽翔ならきっと可能』


 そんなことが出来るのか。

 魔法についてはまだ、俺はほとんど訓練出来ていない。


 今はまだ魔力量が少ないので、下手に魔法を使った場合は、魔力が足りなくなって意識を失う可能性がある。

 寝ていい状態なら、そのまま時間経過とともに魔力が回復する。

 けれど、そうでない場合は何かとまずい。


 だから魔力量が十分になるまでは、寝る前の魔力循環による訓練以外はしない方がいい。

 だから灯火魔法で、魔法が使えるかを確かめるくらいしかしていなかったのだけれど……

  

『その程度なら、今の陽翔の魔力なら問題ない。ただ念のため、3時間に1回、メールを確かめる程度にした方がいい。あと眠気を感じたら、すぐに操作を中止すること』


「わかった」


 地味だけれど、かなり便利な魔法だ。

 これならスマホをカバンの中に隠したまま、メールやSNSの確認が出来る。

 学校に着いたら試してみよう。

 一層機嫌よく自転車を走らせる。

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