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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第11話 早送りのスケジュール

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72 別の作戦?

 昨日と同様に届いたアドレスをタップし、Chatルームに入る。


『おっと、きたきた。ということで、そろそろ真面目に小説を完成させた方がいいと思うよ。部活はあと3日しかないし』


 おい待てメイ。


『どこまで知っているんだ? 衣緖菜から何か聞いているのか?』


 反射的にそう打ち込んでしまう。


『衣緖菜さんからも、じきに連絡が来るとは思うけれどね。今のは単なる私の勘だよ。ということは、転校がほぼ決まったと思っていいのかな』


 勘だったのか。

 でもメイには話していいし、話しておいた方がいいだろう。

 そう思ったので、正直に書いて送る。


『本決まりではないけれどさ。順調にいけば木曜日に親と縁を切って、金曜日の終業式の後に引っ越し』


『そっか。寂しくなるな』


 その言葉で、俺は思い出した。

 ついこの前、メイと図書館で話した時のことを。


『結局、メイがあの時言った通りになりそうだ』


 それ以上は、俺としてはちょっと書きにくい。


『それでも1人ってのは、正直しんどい時があるんだよ。小学校の頃にはあと1人、出来るのがいたんだけど、中受して愛媛の方の寮がある進学校へ行っちゃったし。だから、津久井が転校してきてくれて、気分的に助かっているのは本当。こうやって、わからない部分を教われるなんてメリットを除いても』


『津久井は、余所から来た異物だけれどね。私は此処の異物なんだよ。だから、此処から逃げられない』


 そんな言葉と、その言葉に含まれた絶望感を思い出してしまったから。

 あの時は、まさか俺がここを脱出できるとは思っていなかった。

 でもこうやって、ほぼ脱出が決まってしまうと、メイになにか申し訳ない気分になる。

 俺が出来ることは、何もないのだけれど。


『はいはい、津久井は余分なことで悩まないの。私もこの学校に通うのは、のこり半年だし。その後はその後で、実はまた少し別の作戦を考えてもいるから』


 別の作戦?


『シュウ高に行くんじゃないのか?』


『それも方法論のひとつだけれどね。また別の方法も思いついて両親に工作中。前にも言ったかもしれないけれど、うちの場合は両親ともに県外の大学出身だし、現状を知っているから。中学に入るときもやりあったし、実際中学の現状は両親より私の予想の方が当たっていたと、両親ともに認めているし。だからシュウ高に行く以外の作戦も、割と何とかなると思うよ』


 親に何かを認めさせて、何をするのだろう。

 この辺の高校の進学実績は、シュウ高がダントツで、二番手校、三番手校も公立。

 だから狙うとすれば、シュウ高くらいしか思いつかないのだけれど。


 もちろん、いい大学に行くのが全てというわけではない

 けれどメイはそういった違う道を選びそうではないし。


『どんな作戦か、聞いてもいいか?』


『まだ駄目。それに津久井の場合は、まず小説を一本書いて提出すること』


 まだ駄目か。

 拒絶されるとは思わなかったけれど、なにか秘密にしたいことがあるのだろうか。

 でも確かに、小説を提出しなきゃならないのは事実だ。


『この学校にいる間に書けなかった場合、メールでメイに送るのはありか』


『最悪の場合はありだけれど、一応はここで書く努力をした方がいいと思うよ。ここでしなければならないことが、他にないのなら』


 確かにメイの言うとおりだ。

 なら仕方ない。


『わかった。それじゃ何とか、明後日までに書いてみる』


『うむ、よろしい』


『はいはい』

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