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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第11話 早送りのスケジュール

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67 ホテル泊の夜と朝

「複雑に考えなくていいと思う」


 衣緖菜はそう言って、一呼吸おいて続ける。


「私は陽翔に一緒にいて欲しい。陽翔は私が嫌いではないし、今の環境から脱出したい。なら今の環境を離れて、私と一緒に行ってほしい。私は陽翔と一緒にいたい。

 陽翔ももっといい環境で、また考えればいい。それにケイトさんは、陽翔が私と一緒に行くことを前提に用意をしている。だから陽翔が私と一緒に行っても問題ない」


 そうか、それくらい簡単に考えてもいいのかもしれない。

 というか衣緖菜が一緒がいいと言ってくれている以上、選択肢は残っていない気がする。

 このままあの家にいて冬に学校にどう通うか悩んだり、ゴ高に通うことになるより、ずっとましだ。


 でも……

 何かひっかかることがある気がする。

 それが何かはわからないけれど。

 でも、それでも。


「確かにそうだな」


 そう衣緖菜に返答はしておく。


「ありがとう。それじゃ寝よう。今日は疲れた」


 そう言ってくっついてくる衣緖菜の頭を撫でた後、


「わかった。俺も魔力車を回して寝る」


 とりあえず今日はケイトさんが隣の部屋にいるから、エッチは無し。

 ということで、魔力車に意識を集中して……


 ◇◇◇


 翌朝は5時に起きて、寝ている衣緖菜を部屋に残して朝風呂へ。

 せっかく高い温泉付きホテルに泊まったのだ。

 食事前の20分程度ではなく、もっとしっかり温泉に入っておこうと思ったのだ。

 

 しかし俺の体質は、風呂には向いていなかった。

 温めの風呂でも、1分以上浸かるともう上がりたくなる。


 露天風呂なら水蒸気が籠もっていないから大丈夫か。

 そう思って試したけれど、駄目だった。

 なので洗い場で歯磨きしたりヒゲをそったりした時間を含めても、昨日と同様20分程度で撤退。


 荷物は基本的に衣緖菜の魔法収納に入れるから、準備するというほどの手間はない。

 ネットでも見て時間つぶしをしようかと部屋に帰る。

 扉を開けたら衣緖菜がもう起きて、布団を畳んでテレビのニュースを見ていた。


「ごめん、起こしたか?」


「特に何も設定しなければ、このくらいの時間になると目が覚める。テレビを実体験したことが無かったから、見ていた」


 俺の部屋にはテレビは無い。

 父の部屋や母の部屋にはあるけれど。

 だから衣緖菜がテレビを体験するのは、これが初めてなのだろう。


「なにか面白いものをやっているか?」


「内容的にはいまひとつ。でもこの大きさの画像が動くのは楽しい」


 なるほど。


「あと、もし陽翔に時間があるなら、見てほしいものがある。ケイトさんが今後どうするかについて、昨晩メモとして書いてくれている。アドレスを送ったから、見てみて」


 それって今の俺や衣緖菜にとって、とんでもなく重要だろう。


「ありがとう」


 俺はスマホの電源を入れる。

 確かに衣緖菜からメッセージが着ていた。

 更にケイトさんからのメールが着信したという通知も入る。

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