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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第11話 早送りのスケジュール

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65 その感情の名称 (3)

「私が陽翔の記憶や知識を魔法を使用して意識的に読んだのは、3日前の1回だけ。それでも私は、陽翔ができるだけ私にいい生活をさせよう、いい将来を迎えさせようとしていたのを知っている。陽翔自身についてよりも優先させて考えていたことを、知っている。

 私はそれまで、戦争と軍の記憶しかなかった。命令で動く以上の関係は無かった。強いて言えば大司教の知識を読んで、それ以外の関係や感情を知ったかもしれない。結果、その後に部下をこの世界に送り出す際、命令や任務とは少し違う感情を持ったかもしれない。

 それでも命令関係にない相手からの一方的な好意というのは、初めてだった。少なくとも私の記憶にある中では」


 そんなに褒められたものじゃない。

 それに最初の時点では、衣緖菜が言うことを全て信じていたわけじゃない。

 ただ夢が欲しかったのだ。

 何もかも上手く行かない中で、少しは希望を持てそうな夢が。


「陽翔がどういう気持ちでそうしたかは、別の問題。でもどこの何者かわからない私の言葉を信じて、受け入れてくれたのは事実。どうすればいいかを真剣に考えてくれたのも、できる限り動いてくれたのも事実。結果、部下を探せそうなのも、この世界で無事生活できるようになりそうなのも事実」


 結果的にそうなった、それだけだ。

 俺だからできた、というわけではない。

 それに思いっきり性的搾取している気もする。

 俺から言い出したわけではないにせよ。


「こういった状況で、私が陽翔を好きになるのは当然だと思う。もちろん好きにはいくつも種類がある。Love、Like、fond、prefer、favorite。interestなんてのも好きの部類かもしれない。

 私の知識と経験では、この好きという感情の確実な定義づけはできない。それでもできれば陽翔と一緒にいたいと思うし、くっついていると安心できる。陽翔の役に立ちたいと思うし、陽翔が喜んでくれると嬉しい。陽翔が私のために色々やってくれたから、その代わりにというだけではなくて。

 だからケイトさんに相談して、陽翔とより一緒にいられる方法を考えた。陽翔が今の環境を嫌っていることを知識で知っていたから、ちょうどいいと思った」


 好きか。

 定義がはっきりしないのは、俺自身がよくわかっていないからだろう。


 ただこうストレートに言われると、正直あれこれ考えてしまう。

 俺がそう言われるのに値するような人間かどうかとか。

 ただ衣緖菜に『そうしたのは事実』と言われてしまうと、反論できない。


「ただこういう感情や行動は、この世界的には重いと感じられるかもしれない。だから陽翔が嫌だと思ったら、正直に教えて欲しい。私は陽翔が好きだけれど、だからこそ陽翔が望まないことはしたくない。だから嫌だとわかれば、一緒に住むのは諦める」


 ストレートな質問だけに、ごまかしは効かない。

 でもどう返答するのが正しいかが、わからない。

 いや、正しいかが問題なんじゃない。

 俺がどう考えているかが問題なのだ、多分。


 でも俺は、俺自身はどう考えているのだろう。

 改めて考えると、難しい。

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