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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第11話 早送りのスケジュール

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62 俺の理由

 どう説明しようか。

 衣緖菜と一緒の布団の中という思考には適さない状況で、それでも俺は考える。


 衣緖菜の知識によると、心を読む魔法で読み取るのは、厳密には思考そのものではなく、思考のベースとなる知識。

 思考は瞬間瞬間で変化するので、そういった魔法で読むには適していない。

 瞬間瞬間の思考を追う魔法も存在はするけれど、思考そのものは短時間で変化するから、確実に思った部分を読み取るのは難しいようだ。


 だからこの場で適切なのは、考えを伝えられるような魔法ではなく、言葉での説明。

 それが難しいのだけれど、何もしなければ何も伝わらない。

 だから俺は、必死になって言葉を絞り出す。


 衣緖菜は『私がいると邪魔?』と言っていた。

 この言葉を使って返答するのが、きっとわかりやすいだろう。

 頭の中で文章として組み立てて、口に出す。


「衣緖菜と一緒にいていいかどうかは、確かに考えた。でもそれは衣緖菜が邪魔だからじゃない。その逆で、衣緖菜にとって、俺の存在が邪魔じゃないかと感じたからだ」


「何故そう思うか、聞いていい?」


 また必死に考えて、言葉を編み出す。


「衣緖菜は戸籍さえ手に入れば、日本で困ることは何もない。お金を稼ぐのだって簡単だというのは、土曜日の競輪でわかったと思う。知識だって、少なくとも勉強においては、もう中学3年レベルでは困ることはない。だったらもう俺に頼る必要はないし、自分で好きなように生きていけるはずだろう」


 ついでに思い出したことがあったので、付け加えておこう。


「あと今は俺を、元いた国の代わりに拠り所にしている。でもこれだって、時間が経てば必要はなくなる。それに拠り所にしたままでも、近くに俺がいる必要はない。むしろ何気ない言葉が、命令にとられてしまう危険性を考えたら、近くにいない方が安全な気がする」


 今の言葉で、意味合いがばらけてしまったかもしれない。

 だから最後に、要点をまとめておこう。


「衣緖菜は、最初に俺と会ったからといって、俺に縛られる必要はないんだ。むしろ俺がいない方が、可能性が広がる気がする。以上が、俺が衣緖菜と一緒にいていいかどうか悩んでいる理由だ」


 これで、伝わるだろうか。

 そして衣緖菜は、どう思うだろうか。

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