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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第11話 早送りのスケジュール

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61 今日は控えようと思ったけれど

 隣の部屋も、中は先ほどの部屋とほとんど同じ。

 12畳の和室に広縁という構造だ。

 違いは布団が2組、くっつけて敷かれているところ。


 隣の部屋にケイトさんがいるし、今日はエロ系のことをしないのが正解だろう。

 したくないという訳ではないけれど。


「寝る前に魔力車を出してくれないか。訓練して寝るから」


「今日はしない?」


 直接的に聞かれてしまった。

 ただこれについては、一応返答と対応策を考えてある。


「あれこれ考えて疲れたからさ。訓練だけして寝ようかと思う」


 訓練をすれば魔力を使い果たして眠れるから、多少ムラムラしても問題ない。

 そういう対応策だ。


「わかった。でも一緒に布団で寝ていい?」


 そう来たか!

 確かに、いつもは同じ布団で寝ているけれど、今日はちゃんと布団が2組あるのに。


 でも衣緖菜にそう言われると、俺は断れない。

 今までの衣緖菜の苦労というかどうしようもない環境を、俺は自分の知識として知っている。

 だから一緒にいた方が不安がないというのなら、ついこう返答してしまうわけだ。


「いいよ、もちろん」


「ありがとう」


 衣緖菜は部屋の中央側の布団を枕2つにして、その布団の枕元に魔力車を出してから、掛け布団をめくる。


「一緒に寝よう」


「ああ」


 衣緖菜と同じ布団に入って、掛け布団をかけて。

 いつもは掛け布団の前にあれこれやるから、だいぶ違う感じだ。

 そう思って、すぐに気づいた。

 衣緖菜が来てからまだ4日目というか4晩目なのに、もう『いつも』という感覚になってしまっていることに。


 これでいいのだろうかという気持ちは、正直消えない。

 衣緖菜のおかげで、あの家から脱出できる見込みが出来た今は、余計に。

 俺ばかり何かうまい汁を吸っているような気がする。

 そう思った時だ。


「陽翔は、私がいると邪魔?」


 衣緖菜が、とんでもないことを言った。


「そんなことはない」


 反射的にそう言った後、どう言うべきか、少し考えてから口に出す。


「衣緖菜が来てくれたおかげで、俺の生活はだいぶましになった。それに今の家を脱出出来そうだし」


「でも何か、陽翔は悩んでいるような感じがする。魔法ではっきり読んだわけではないけれど、感じる。私と一緒にいていいかどうか。言葉にすると、そんな思考」


 なるほど、衣緖菜なら魔法を使わなくても、そういうことを感じ取れるのか。

 念のため、俺の中の衣緖菜の知識で確認してみる。

 少なくとも魔法としては、そういった魔法は存在しない。


 しかし衣緖菜は、思考を読む魔法や思考を操作する魔法を得意としている。

 だから近くにいる相手の明文化した思考くらいは、感じてもおかしくない。

 意識して魔法を発動しなくても。

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