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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第2話 彼女の記憶

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6 破戒者

 もしこの最終命令が、直属上官である中隊長5270158か、中隊伝令の5280121に命令されたのなら、私は素直に従っただろう。

 私の思考には『■■■■■■■と■■■こそが己の拠りどころであり、絶対である』と御力で書き込まれている。

 故に、正規の命令に逆らうのは難しい。


 しかし今回、私に命令してきたのは知らない男だ。

 一応、大主教と名乗っているし、相応の祭服を着ている。

 しかし現段階では、本人と証明できない。


 だから私は、この男が正規の命令権者か確認するため、御力を使用する。

 使用した御力は、思考操作・行動停止・記憶読み出し。

 不明な者の命令に従うわけにはいかないから、当然の行動だ。

 そのため、私の思考に御力で書き込まれた枷も作動しない。


 今まで受けた教えが確かなら、位階が高い者は神に選ばれた存在で、位階が下の者よりあらゆる点で優れているはず。

 大主教は、一介の長輔祭である私より遥かに上の位階。

 だからこの男が真に大主教であるのなら、私が御力を発動させても、思考は読めない。

 より優れた存在には、私の御力は通用しないからだ。


 一方で敵の場合は、大隊指揮官クラスでも御力で思考を読んだ記憶がある。

 つまり、私が御力で思考を読もうとすれば、読めても読めなくても、この男の命令に従うべきかがわかる。

 だからこれは、判断のための適切な行動だ。


 男の動きが止まった。

 思考も記憶も読めた。

 この男には、私が使用した御力が通用する。

 つまりこの男は、位階の高い者ではない。


 しかし同時に見えた記憶によれば、この男が大主教であるのも確からしい。

 記憶には、地区本部責任者としての活動が残っている。

 さらにそれ以前の、■■■■■本部教会での業務も。


 頭痛が始まった。

 思考を途切れさせるほどの強さで鼓動を刻んでいる。

 書き込まれた思考の枷が、私の思考と行動を攻撃し始めたのだ。

『■■■■■■■と■■■こそが己の拠りどころであり、絶対である』

 この書き込みに従えと。


 しかしこの男は、教え通りの位階の高い者ではない。

 だから真実を確認する必要がある。

 そう自分に言い聞かせ、思考と記憶の読み取りを続ける。


 頭痛の中、少しでも確実に読み取るため、私は立ったまま静止している男の腕を掴んだ。

 接触したことにより、更に高速で男の知識と記憶が流れ込んでくる。


 情報量の多さと頭痛の酷さで、情報を整理しきれない。

 それでも情報整理の御力を発動させ、男の知識と記憶を整理する。


 整理された情報の一部を確認。

 この男の生活も価値観も、私が教えられてきたものと大きく異なるようだ。

 全てを■■■■■に捧げるのとはあまりに違い、むしろ世俗主義として厳しく罰せられるような思考や行為の数々が、記憶に書き込まれている。


 この男だけではない。

 他の高位聖職者についての情報も入っていた。

 一般国民を蔑みつつ酷使し、忌むべきとされた世俗主義を謳歌しているとしか思えない情報が。


 私は悟った。

 こういった情報が漏れることを防ぐため、記憶を消去したり制御したりしていたのだろうと。

 もはや、今の■■■■■■■に従う気は起こらない。


 この者の記憶には、『上位聖職者の間で少し前に流行った、下々の少年や少女を召し上げ、御力で呼吸できなくした状態で犯して殺す“殺害性交”という遊び』などというものまで入っていた。

 上層部と、そういった上層部を保護しているも同然の■■■■■■■に、嫌悪感が湧く。


 教国に反発するような考えをした結果、書き込まれた思考の枷の攻撃が一層強まる。

『■■■■■■■と■■■こそが己の拠りどころであり、絶対である』

 頭痛に襲われる中、私は思う。

 それなら、こう考えるのはどうだろうと。


『この男は記憶によると、■■■■■■の理念と正しい教えに背いた破戒者である。ならば■■■■■■に則った救済をするため、この男に必要な措置を行うべきだ』


 もちろん言い訳だ。

 それでも頭痛が少し治まった。

 どうやら■■■■■■のための行動という名目は、この枷に有効らしい。


 とりあえず、この男の思考は読み終わった。

 私はもはや、この男を許すことはできない。

 しかし数少ない戦力として、使い道はあるだろう。

 だから私は、思考操作の御力でこの男に命令を書き込む。


「次に私が命令を下すまでの間、私に従え。私の5歩後をついてこい」


 抵抗はほとんどなかった。

 これは、この者が神に従順だからではない。

 私と比べて、圧倒的に低い御力しか持っていなかったからだ。

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