58 理由
なるほど。
俺が調べてもわからなかった衣緖菜に戸籍を与える方法が、魔法と組織力を使うにせよ、あっさりと解決した。
それでも疑問は残る。
「そこで陽翔君に質問だ。私は何故、衣緖菜さんに対していつもと違う方法で、しかもわざわざ自分の養子にするなんて方法をとることにしたか。文字数制限はつけないし簡潔に答える必要もない。考えて回答してくれ」
俺の疑問に直結する質問が飛んできた。
ちょっと待って欲しい。
そんなことを言われても、すぐに答えるのは困難だ。
「……業務で使用出来そうな魔法を実戦的に使用可能だから、手元に置いておきたいというのは」
「確かに衣緖菜の魔法は魅力だが、せめて大学を卒業するまでは学校優先にしたい。夏休みで急ぎの案件があれば、手伝って貰うこともあるかもしれないが。
というわけで不正解。他には何か思いつかないか?」
他にはか。
待てよ、俺は思う。
そうやって出題するからには、既に何かヒントが出ているのではないかと。
もちろんそんなことを考えず、自分だけの論理で動いている奴も多い。
しかしケイトさんは違う気がするのだ。
たとえばこの部屋に来て割と早い内に話した、母親が駄目駄目だった話。
あれはやはり駄目な親を持つ俺に安心させたり共感させたりするのと同時に、衣緖菜の戸籍を取る方法の伏線になっていた。
ならきっとここで質問することにも理由がある。
ヒントもきっと、既に出ている。
そう考えてケイトさんがこれまでした話を思い出す。
そうすると何というか、申し訳ないというかありがたいというか、まさかそこまでということに思い至ってしまうわけだ。
「俺を養子にして、兄妹扱いにする為ですか」
「惜しい、95点。姉弟の方だ。調べたら衣緖菜さんの方が出生が早そうだからな。
ただその理解力は正直ありがたい。毎回のクライアントや役所などのカウンターパートがそれくらい物わかりがいいと、私としても楽なんだがな。ということで、詳細の説明だ」
ケイトさんは急須を揺らす感じで中のお茶を回転させた後、湯飲みに注ぐ。
お茶らしい浅緑色になったのを確認して、湯飲み2つに茶を注ぎ、1つを俺の前、1つを自分の方においた。
急須を置いてお茶に軽く口をつけた後、更に先を続ける。
「兄弟姉妹なら、同じ場所に住んでいても問題ない。それに養子に取っても、私は細かい面倒をみる気はない。ただ生活出来る程度には手を貸そう。具体的にはアパートを借りて住所を移すのと、最初の家財道具一式を揃えること、あと学校側で用事がある際は保護者として顔を出すこと位だな。
あとは資料を作っているから、そっちを参照してもらう。そろそろ風呂に入りに行かないと、夕食に間に合わない。せっかくの温泉だ。しっかり堪能しようじゃないか」




