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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第10話 改変された未来予想図

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55 面談

 衣緖菜がゆかたに着替えて、大浴場へ向かった後。

 いかにも旅館の和室という感じの座卓を挟んで、ケイトさんと向かい合う。


「さて。私が今回、早急に陽翔君と話し合う必要があると判断したのは、衣緖菜さんから聴取した将来像の希望と、君に回答してもらったアンケートの間に、齟齬を感じたからだ。念の為に今日の午後、衣緖菜さんに齟齬が生じた場合にどう判断するか、確認した」


 ケイトさんは、テーブル上に置かれたお茶セットで急須にお茶を入れながら、そう説明する。

 しかし齟齬を感じたと言ったが、どんな齟齬なのだろう。

 将来像といっても、衣緖菜が無事日本国籍を取って、まともな保護者の元に行く以外は無さそうに感じるのだけれど。


「率直に言おう。衣緖菜さんは、日本国籍が取れてきちんとした保護者の元に行けるとしても、陽翔君と離れることになるのなら、行きたくないと言っている」


 えっ!?


「そして陽翔君は、衣緖菜さんの日本国籍が取れてきちんとした保護者の元に行けるとすれば、離れるのは容認せざるを得ないという考え方だ。違うか?」


 その通りだ。

 ただ先程の衣緖菜の判断のせいで、うまく言葉が出てこない。

 その通りだと頷くのが精一杯だ。


「良識的な日本人として、常識的な考え方では、きっと陽翔君の考え方が正しいんだろう。ただ衣緖菜さん本人の気持ちとしては、そうなんだそうだ。ついでに言うと、衣緖菜さん得意の近未来予知魔法で見た場合でも、そう主張した方が本人的に満足出来る感覚があるらしい。

 ただこれには『衣緖菜さんが陽翔君と一緒にいられること』の満足感が反映されているのだろう。だから世間一般的な判断とは異なるかもしれない。これは衣緖菜さん本人も気付いてはいたけれど」


 今の言葉の間に、少しだけ思考が動いて文章を形作った。

 俺はそれを、口に出す。


「それでも俺は、いわゆる一般的で、他でも通じるくらいに汎用的な形で、衣緖菜に幸せになって貰いたいです。今の俺のいる環境は、先が見えなすぎますから」


「陽翔君の家庭環境については、衣緖菜さんから聴取した上で、現在裏付け調査中だ。個人的には、なかなか同情に値する。私も母親が駄目駄目だったからな。なお私の父親は不明だ。母親本人も把握していない」


 父親不明で、母親すら把握していないのか。

 確かにそれは酷い気がする。


「そんな頭ハッピーな女がつけた名前がケイトだ。海外に出ても通用する名前としてつけたと言っていた。ただあの女の頭の解像度では、海外というのはいわゆる欧米で、インドは含まれていなかったらしい。おかげでインド神話やインド占星術では、凶を示す首無し鬼神の名前になってしまった。漢字まで同じにならずに済んだのは、当時金沢八景が最寄り駅だったからだろう。計算の計の字でなくて幸いだった」


 計都星か。

 インド占星術上では黄道と白道が交わる点、つまり日食や月食が起きる点のひとつを示すんだっけか。

 元は確かインド神話に出てくる悪神で、アムリタを盗み飲みしたためにヴィシュヌ神に首を切り落とされたうちの胴体側だった気がする。


「ラーフとかケトゥなんて、日本では一般知識ではないと思いますが」


「まあそうだが、そこはお約束の愚痴って奴だ。ただケートゥなんて知っていて話が通じる中3なんて普通じゃない。相当に無駄な知識をため込んでいそうだな、というのはともかくとして。

 母についてだが、1年前に新潟の施設でくたばった。16の時から私からは連絡を取ってなかったけれどな。生活保護だのなんだので、援助できるか役所が聞いてきたから把握できていたけれどさ。まあ、おかげで面倒が大分片付いた」


 どうやらケイトさん、俺以上に苦労をしたようだ。

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