53 登場
言われた通りのルートで生徒会室へ。
鍵は開いていたけれど、中には誰もいなかった。
スマホの時刻表示で午後4時22分まで待った後、窓を開けて左右を確認、椅子を踏み台にして窓を乗り越える。
こちらは校庭とは反対側だからか、人通りはない。
目の前に電柱が見えるのでその直近の塀へ。
学校の敷地側が高いので、学校内から塀を乗り越えるのは簡単だ。
すぐ左に三叉路があるので、学校から離れる方向、北へ。
家一軒分歩いたところでスマホを取り出し、衣緖菜宛に適当なスタンプを送信する。
すぐに返信があった。
『そのまま北へ歩いて。回収する』
自転車に乗ってきているのだろうか。
そう思いつつ、俺は指示された通り歩き続ける。
更に家1軒分、田舎だから家1軒といっても50mくらいはあるのだけれど、それくらい歩いたところで前から白い車がやってきた。
学校脱出を見とがめられたらまずいかな。
でも何か用事があって下校していると主張すれば、大丈夫だろうか。
そんなことを思いつつ、つとめて何でもないように歩き続けたのだが。
前から来た白い車が速度を落として、俺のすぐ前で止まった。
何かまずい事態だろうか、でも逃げたら余計まずい事態になる気がする。
なんてことを思ったところで、車の後扉が開いた。
「陽翔、乗って。運転しているの、ケイトさん」
衣緖菜だ。
えっ!? 昨日の今日で、もうここに来ているのか。
俺は何も連絡を受けていないけれど。
ただ衣緖菜がいる以上、疑う必要はない。
魔法で確認が出来るだろうから。
ただあまりに急な展開に納得できていないだけだ。
フロントガラス越しに見えるのは、20代半ばから後半くらいに見える女性。
今までのメールやNPOなんて肩書からもっとずっと上、中年以上を想像していたのだけれど。
とりあえず車の後席に、衣緖菜といっしょに乗り込む。
「走りながら状況を説明する」
ちょっと低めの声で、メールとはかなり違う口調で、ケイトさんと思われる人は話し始めた。
「まず今の状況。この車は、私が泊まっているホテルに向かっている。理由は今後に向けて、陽翔君の意思と状況を確認するため。家の方は心配しなくていい。ちょうど君の両親がいたので、さっくり魔法をかけて、明日まで帰らなくても問題ないという精神操作をしておいた。私も一応その程度には魔法を使える。衣緖菜さんほどではないけれどな」
魔法が使えるということは、この人も異世界出身なのだろうか。
それとも俺のように、異世界の知識を手に入れて訓練したのだろうか。
車は学校前の三叉路を過ぎて体育館方向に進み、更に右へ曲がって国道の方へ。
「陽翔君への質問は着いてからということで、私の自己紹介をしておこう。都筑景都、日本人だがケイトというのは本名だ。この辺はまあ親に対して積もる話があるんだが、それはあとにして。
3年ほど公務員をやった後、職を辞してNPOを立ち上げて今に至る。きっかけはまあ率直に言うと、異世界から逃げてきた奴を保護したからだ。思ったよりこういった事案が多そうなんで、仕事にした。こちらの仕事ではまったく儲かっていないというか、持ち出し続き。ただ魔法のおかげでFXだの株だので儲けられるようになったから問題ない……」




