50 彼女の本質
この招待アドレスだけ送るというのは、実は割とよくある連絡方法だ。
これを使えば、先生や他の生徒に気づかれずに画面上で会話が出来る。
授業中は画面共有でバレてしまう可能性が高いけれど、放課後なら問題ない。
学校公式のメッセンジャーサービスとは違い、学校の記録に残るということもない。
今どきVRも何もない単なるテキストChatだけれど、だからこそ学校支給のタブレットでも問題なく動く。
ということで俺はアドレスをタップし、Chatルームに入る。
『おっと、きたきた。ということで、今日はしつこい馬鹿共に対して、徹底否認お疲れ様』
すぐにメイから、そんなChatが飛んできた。
何のことを指しているかは、わかっている。
『土曜日に出かけたとか、女子と一緒だったとかいう件か?』
『そうそう。何というか、ガキだよね。紹介しろとかなんとか。勝手にストーリー作って盛り上がって。津久井は全否定しているし、たとえ本当にいたとしても紹介するメリットなんて何もないのに』
『他人側の立場を考えられるような頭がないんだろ。もしくは力で押せばだいたいは何とかなるとしか思っていないか』
『それで生きてきたし、この先も生きて行く奴はいるんだろうね。私としては中学校卒業後に縁がないことを期待したいけど。と前置きはこのくらいにして、衣緖菜さんに会ったよ』
一瞬、文章の意味がわからなかった。
なぜ衣緖菜の名前がここで出て……
「えっ!?」
意味を理解した瞬間、思わずそんな声が出てしまった。
念の為周囲を確認、2年の麻木も1年の小田野も無反応だ。
メイも素知らぬ顔をしてタブレットに向かってやがる。
まあそういった反応をするというのは、文芸部の活動中には時々あることだ。
お気に入りのWeb小説を読んでいる時とかに。
だから麻木や小田野が無反応でもおかしくはない。
そう自分に言い聞かせたところで、続きの文章が送られてきた。
『会ったのは昨日の午前中、津久井と話した後。話した内容は、この世界に逃げた理由から、津久井のところに世話になった状況と理由、あとついでに津久井から得たいわゆる学力的な知識と、衣緖菜さんの持っている魔法の知識一通り。まあ話したというよりは、同意した後に知識を送り込まれたという形だけれどね』
つまりは衣緖菜の件ほぼ全部を、メイは知っているわけか。
『あとこの件について私に話した理由は、衣緖菜さんによると『魔法でそうした方がいいと判断した』から。私が津久井に話したのは『津久井自身にこのことを話さないのはフェアじゃない』から』
何か頭が無茶苦茶こんがらがって、思考がうまく動かない。
ただこれだけは感じたし、伝えたいと思ったのでキーを打って送信する。
『フェアじゃないってのが、メイらしいな』
『そのくらいの矜持がないと、放課後まで津久井に食い下がっていたあの馬鹿共を笑えないからね』
教室内で見せる無難な優等生姿ではなく、ごくたまに見せるこの毒混じりの厳しさと、更にその先に見える優しさがメイの本質なんだろう。
いつもながらに俺は思う。




