49 放課後
この学校は、定期テスト期間や三者面談なんてのがない日は、課外活動というか部活に参加するのが習わしだ。
部活は全員参加で、不参加は認められていない。
正直ありえない制度だと思うけれど、きっと生徒が余分なことをしないようにという意味合いなのだろう。
東京の中学のように放課後に塾に行くなんて生徒はほとんどいないし、そもそもそういった進学系の塾はこの町にないし。
なお帰宅部なんてのは当然なく、本を読むだけの読書部なんてのも無い。
あるのは何か大会があるような活動か、さもなくば創作活動で成果物が出るような活動だけ。
つまりは『成果を見せろ』って奴だ。
ということで俺も転校早々、部活に入らされた。
どうせ中3なら7月くらいには部活引退だから、入らなくてもいいと思うのだけれど。
入ったのはもちろん運動部ではなく、文化部だ。
それでも吹奏楽部みたいな準体育会系的拘束バリバリは勘弁して欲しいし、囲碁部のように今ひとつ俺には面白みを感じないものも避けたいし、漫研はお絵かきの技量が必要。
という訳で俺が選んだのは、文芸部。
成果物も10月の文化祭までに、短編の小説かノンフィクション、あるいは詩作なんてのをしておけばOK。
選べる中では一番ゆるい部活と判断したからだ。
部員は非常に少なく、3年生2人、2年生1人、1年生1人だったりする。
俺が入らなければ、1学年1人だったわけだ。
なお3年のもう1人はメイだったりする。
おかげで気楽でいい。
活動場所は図書コーナーの隣にある、学習支援室5。
元教室っぽい場所をパーテーションで前後に区切っている、前側だ。
そこで本を読んだりタブレット&キーボードで創作していたり、創作するふりをしてWeb記事を読んでいたり。
なお図書コーナーとは、2階の中央階段前にあるフリースペースのことで、本棚が20架くらい並んでいる。
本の冊数そのものは昨日行った図書室と同じ程度で、簡単な調べ物には十分。
今はネットで調べた方が何でも早いのだけれど。
三者面談期間は終わったので、今日からは部活がある。
何か特別な用事でもない限り、授業が終わったからといって帰るのは許されない。
最低でも午後6時までは、部活を強制される。
もうすぐ夏休みだからいいじゃないかと思うのだが、夏休み前までは絶対的に部活参加が義務だそうだ。
ということで放課後、掃除までひととおり終わった後。
「なあ津久井、土曜に一緒にいた女子のことだが……」
「そんな人はいない」
俺はカバンに教科書やタブレット等をひととおり入れて、さっさと教室を出る。
といっても活動場所の学習支援室5は、隣の部屋だ。
前の扉側なので、扉1つ分は離れているけれど。
それでも流石に他の部活の部屋までは入ってこなくて一安心。
左奥の窓際、つまり廊下から一番遠い席を占拠して、タブレットとキーボードを取り出す。
ただこのままWeb閲覧なんてやっていると、稀に顧問の加賀谷先生に見つかって文句を言われる。
だから先生が来て出席を確認して消えるまでは、創作の準備ですよという姿勢をとっておくことが重要だ。
小説投稿サイトの俺のページ、書きかけの短編小説もどきを出して、校正しているふりをしながら様子を伺う。
ちなみにこの小説は、生成AIに『中学生3年生、進路、親と意見が異なる、葛藤という内容で、3,000文字の短編小説を書いてください』と注文して出力したもの。
結果として出てきた小説は、文字数が注文の半分以下で、感情の描写が今ひとつの代物だった。
でもたたき台としてなら、ちょうどいい。
ということで、気に入らない部分を書き直したり、足りない部分を書き加えたりなんてしていると、加賀谷先生が巡回してきた。
こちらのタブレットをちらっと見て、そして去っていく。
さて、それではノルマの文芸部的活動は終わり。
Webの適当なサイトの閲覧をはじめようと思ったところで、画面に通知が届いた。
生徒間用の連絡に使っているメッセンジャーアプリの通知で、メイからのもの。
メッセージにはメジャー無料Chatサービスの、招待アドレスだけが書かれている。




