44 ただ埋もれるよりはましだろう
次に俺が発掘したものを、こたつ上に広げる。
● 折りたたみ式まな板
● まな板の折りたたみ部分に入っていた包丁
● お皿セット、3種類×4枚組
(深い小皿、やや深い中皿、浅めの大皿。ステンレスに黒いつや消しコーティング仕上げ、専用収納袋入り)
● シェラカップ 4個
「レトルトなんかは、これに出して温めればいい。箸やスプーンは使い捨てのを使えばいいしさ。それじゃ夕食にしようか。適当に選んで」
「わかった。それじゃ今日は、このお皿を使う」
レトルトのハンバーグを2個ずつ、サラダ、パックご飯、愛媛名産の柑橘ジュース。
レトルトとパックご飯は、魔法で温めた後、お皿へ。
シェラカップをコップ代わりにして柑橘ジュースを入れれば、本日の夕食だ。
「やっぱりこっちの世界は、食べ物がおいしい」
「最近のレトルトはおいしいからさ」
実際おいしいと思う。
少なくともカップラーメンや菓子パンよりは、だいぶましだ。
そう思ったところで、外から車の音がした。
父が帰ってきたようだ。
「匂いとか大丈夫か」
「大声で話していても問題ない。こっちに近づく気にならないよう魔法をかけてある。念のため廊下を通ったところで増しがけする」
なら大丈夫か。
そう一安心して、そして気づいた。
今の状態が不自然で不安定なことに。
今の状態は、衣緖菜のおかげで成り立っている。
おいしい夕食も、あれこれ気恥ずかしくも楽しいこの生活も。
それでも明日からは学校があるから、日中ほとんどの時間は衣緖菜と一緒に動けない。
それにケイトさんが動けば、じきに衣緖菜も普通に戸籍を取って、この家を出ていくだろう。
そうしたらきっと、また前と同じ生活の繰り返し。
何故か突然、メイが言った言葉を思い出した。
『津久井はまた東京の方に戻っていく気がする。私は此処から出られないけれど。何となくそう感じるだけだけれどね』
実際はそうはならないのだろう。
きっとこの場所で異物のまま、俺は埋もれていくのだろう。
それでも衣緖菜が幸せになるのならば、少しはましかなと思う。
ただ何もなく何も出来ずに埋もれていくだけでなく、衣緖菜だけでもよりよい場所へと送り出せるのなら。




