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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第8話 調査

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44/100

44 ただ埋もれるよりはましだろう

 次に俺が発掘したものを、こたつ上に広げる。

 ● 折りたたみ式まな板

 ● まな板の折りたたみ部分に入っていた包丁

 ● お皿セット、3種類×4枚組

  (深い小皿、やや深い中皿、浅めの大皿。ステンレスに黒いつや消しコーティング仕上げ、専用収納袋入り)

 ● シェラカップ 4個


「レトルトなんかは、これに出して温めればいい。箸やスプーンは使い捨てのを使えばいいしさ。それじゃ夕食にしようか。適当に選んで」 


「わかった。それじゃ今日は、このお皿を使う」


 レトルトのハンバーグを2個ずつ、サラダ、パックご飯、愛媛名産の柑橘ジュース。

 レトルトとパックご飯は、魔法で温めた後、お皿へ。

 シェラカップをコップ代わりにして柑橘ジュースを入れれば、本日の夕食だ。


「やっぱりこっちの世界は、食べ物がおいしい」


「最近のレトルトはおいしいからさ」


 実際おいしいと思う。

 少なくともカップラーメンや菓子パンよりは、だいぶましだ。

 そう思ったところで、外から車の音がした。

 父が帰ってきたようだ。


「匂いとか大丈夫か」


「大声で話していても問題ない。こっちに近づく気にならないよう魔法をかけてある。念のため廊下を通ったところで増しがけする」


 なら大丈夫か。

 そう一安心して、そして気づいた。

 今の状態が不自然で不安定なことに。


 今の状態は、衣緖菜のおかげで成り立っている。

 おいしい夕食も、あれこれ気恥ずかしくも楽しいこの生活も。


 それでも明日からは学校があるから、日中ほとんどの時間は衣緖菜と一緒に動けない。

 それにケイトさんが動けば、じきに衣緖菜も普通に戸籍を取って、この家を出ていくだろう。

 そうしたらきっと、また前と同じ生活の繰り返し。


 何故か突然、メイが言った言葉を思い出した。


『津久井はまた東京の方に戻っていく気がする。私は此処から出られないけれど。何となくそう感じるだけだけれどね』


 実際はそうはならないのだろう。

 きっとこの場所で異物のまま、俺は埋もれていくのだろう。


 それでも衣緖菜が幸せになるのならば、少しはましかなと思う。

 ただ何もなく何も出来ずに埋もれていくだけでなく、衣緖菜だけでもよりよい場所へと送り出せるのなら。

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