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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第8話 調査

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43 発掘作業

 衣緖菜の件については、メールで質問が来るまで、やることはない。

 どんな方法で衣緖菜の戸籍を作るかは、正直なところ不明だ。

 ただケイトさんはこの件の専門家らしいから、きっと何か方法があるのだろう。

 ネットで調べただけの俺にはわからないような方法が。


 なら調査物の時間は、とりあえずここまで。

 いつものように勉強をしておこうと思う。


「ここは午後5時で閉まるからさ。とりあえず4時50分まではここで勉強してようと思うけれど、衣緖菜はどうする?」


「時間まで少し本を読んでいる」


 そんな感じで時間までいて、自転車で帰って。

 家に帰ったところ、車がない。

 ならちょうどいいだろう。


「部屋で待っていて。ちょっと道具を取ってくる」


 この隙に父のキャンプ道具のうち、食事に使えそうなものを確保しておこう。

 父は1階南西側にある、襖で仕切られた続きの3部屋を使っている。

 合計20畳以上ある半分以上に物が散乱していて、かつ掃除もしていないので畳に埃が積もっているという、入りたくない部屋だ。


 それでもキャンプ道具の小鍋(コッヘル)や食器、調理用ガス器具、ガス缶あたりがあれば、部屋で食事をする時に便利だ。

 あと皿などの食器があれば、キッチンに行かずに済む。

 衣緖菜の魔法で親と出会わないようにはしているけれど、できるだけ共用部分には出ないほうがいい。


「一緒に探す。あと30分帰ってこないから大丈夫」


 確かに2人で探した方が早いだろう。

 衣緖菜も俺の知識を持っていることだし、探すのに便利な魔法もあるだろうし。


「頼む。探すのはキャンプで料理に使うもの一式」


「わかった」


 脱ぎ散らかした服とかより、段ボールだの大きなザックだのがある辺りにありそうだ。

 ごつい革靴だのテントらしい袋入りの大きいのだの、下に敷くマットだのをかき分ける。

 小さいトートバッグにごそっと入った、折りたたみまな板と包丁セット、そして食器セットを発見。

 ちょうどいいから持っていこう。


「あった。ガス缶とガス器具。あと小さな鍋」


 俺より2mくらいキッチン側で、衣緖菜も発見したようだ。


「ありがとう。こっちは食器のセットを発見した。食事に使えそうなものは一通り持っていこう」


「わかった。こっちにあるのはガス缶とガス器具。あとガソリンを使う大きいバーナーセットやバーベキューセットがあるけれど、どうする?」


 そんな大物、使ったことがない気がする。

 でも、あの父は計画性なく欲しくて金があれば買ってしまう性格だ。

 だからあっても不思議ではない。

 ただ今は、俺と衣緖菜が使うのに便利なものだけで十分だ。


「大きいのは置いていこう。あの部屋のコタツの上で使っても問題ない大きさの物だけで」


「わかった。ならガス缶とガスバーナー、鍋セットを確保する」


「こっちも食器セットを持っていく。今はこれでいいだろう」


 発掘した部分はできるだけ元の状態に戻して、俺達は父の部屋を出る。


「靴下を脱いだ方がいいな。汚れた気がする」


「あとで魔法で洗う?」


 いや、そこまでは必要ない。


「洗濯機で洗うから、後で乾燥だけお願いしていいか。どうせ洗濯機は回すしさ」


「わかった」


 靴下を脱いで、そして俺達の部屋へ。


「それじゃ持ってきたものを確認しよう。それじゃコタツの上に、まずは衣緖菜が持ってきた物から頼む」


 ということで出てきたのは、こんな感じだ。

 ● 登山用ガス缶に直接接続する、ごく小さなガスバーナー

 ● 一般用のポータブルガス缶を使う、卓上コンロといってもいい大きさのもの

 ● 登山用の黄色いガス缶3、一般用のポータブルガス缶6

 ● 四角い鍋、大中小セット

 ● 小さいけれど分厚い鉄製で重い鍋1


 どれもほとんど使った形跡がない。

 キャンプブームで買ったのはいいけれど、行く事がなくて放置していたのだろう。

 勿体ないけれど、便利そうだ。


「これだけでも、それなりの料理が作れそうだよな」


「何か作る?」


「いや、そういう知識が無いからいい」


 炊飯器があればご飯は炊けるし、作り方を見ながらなら袋ラーメンは作れる。

 俺の料理能力はその程度だ。

 母は以前から自分で料理を作らない主義だから、見本なんてのはない。

 経験も小学校の家庭科で、何とか説明通りにカレーを作った程度。


「今すぐ使うのが無ければ、魔法で洗浄して仕舞っておく」


「ありがとう。収納容量は大丈夫か?」


「まだ10kgくらいは大丈夫」


「わかった。頼む」


 そのうち2人で料理を作るなんてのをやってもいいな。

 そう思って、そして慌ててその考えを取り消す。


 衣緖菜は出来るだけ早く、この家や俺の前を離れた方がいいのだ。

 ケイトさんが、よりよい保護者を見つけてくれるとかして。

 それに衣緖菜は、近未来予知魔法を使えば金銭上は困らない。

 昨日競輪場へ行ったから、やり方はもうわかっている筈。


 ここにいたら、学校すら通えない。

 だから出来るだけ早く別れるのが、きっと正しい。


※ 今回出て来た装備は、だいたいこんな感じです。登山用とオートキャンプ用がごっちゃになっているのは、知識がない誰かさんがアウトドアショップに行って、欲しいと思った物を適当に買ったせいです。

 ・ ごく小さなバーナーとは、イワタニプリムスのP-153辺り

 ・ 卓上コンロは、同じく岩谷のカセットフー タフまるXG

 ・ 黄色いガス缶はイワタニプリムス用のノーマルガス大

 ・ ポータブルガス缶は、その辺の適当なブランドの250g缶3缶パックを2つで6本

 ・ 四角い鍋は、よくあるラーメンクッカーとも俗称される奴

   (例:ユニフレーム(UNIFLAME) 山クッカー角型)

 ・ 鉄製で重い鍋とは、20cmクラスのダッジオーブン


(実は作者が実際に持っている物を参考にしたとかしていないとか……ワンゲル崩れなので、つい……)

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