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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第1章 中学3年7月 第1話 はじまり

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4 送信

 話を聞いていると、確かに話すべきことが多すぎて説明が難しそうな気がする。

 何せ異世界の、日本と大分違う社会が背景にあるようだから。


 それに俺は、彼女を信じる気になっていた。

 いや、騙される可能性を覚悟した上で、それでも信じてみたいというのが正しいだろうか。


 このままでは俺の人生は、ハードモード確定だ。

 ならここで失敗したところで、何もしないのとそう変わりはしない。

 なら少しは夢が欲しい。

 そんなやけっぱちな感覚が、実のところ最大の理由だ。


「わかった。それで俺はどうすればいい?」


『そのままでも転送は可能。でも、身体を接触させた方が確実。

 だから手を握って転送したい。それでいいなら、手を私の方に出して。右でも左でもいい』


「わかった」


 身体を接触というところで、少しだけ余計なことを考えてしまった。

 気づかれていないよなと思いつつ、右手を前に出す。


 彼女は両手で俺の手のひらを握った。

 俺より一回り小さい白い手が触れた部分が、熱く感じる。

 手汗をかいていないか気になったけれど、この状態ではもうどうしようもない。


『これから送る。少し衝撃があるかもしれない。

 出来るだけ力を抜いて、気分を楽にしていて』


 実は結構どきどきしている。

 年下っぽいし得体が知れないけれど、それでも綺麗な女子に手を握られている状況だから。


 それでも出来るだけ手の力は抜くよう意識する。

 余計に彼女の手の熱さと柔らかさを感じるようになった。


 我ながら意識しすぎだと思った、次の瞬間。

 びりっ!

 静電気のような衝撃。

 場所は手のひら、彼女と触れた熱い部分。


 とっさに引っ込めそうになる腕の動きを何とか止めて、力を抜く。

 これが今、彼女が言った衝撃だろう。

 そう思った思考に、今度は何かが流れてくる。


 ぱっと感じるイメージ的には、黒色の何か。

 ただ見てみようと意識すると、黒色に感じるのは色々なイメージや情報を圧縮したからだと気づく。

 ただその情報ひとつひとつを吟味することは、今は無理。

 全力で走りながら、足下の砂粒ひとつひとつを観察するようなものだから。


 視線を手から上に向ける。

 彼女は俺の手を握った状態で、目を瞑っている。

 これは魔法に意識を集中しているからだろうか。


 こうやって改めて顔を見てみると、やっぱり綺麗だし可愛い。

 あとこうやって見ると、年齢的には俺とほぼ同じくらいに感じる。

 小柄だからもっと下だろうと思っていたけれど、全体の雰囲気はもっと上に感じるのだ。


 まあその辺は、今流れている知識を確認すればわかるだろう。

 だからそれ以上細かいことは考えないでおく。


 ふっと流れが消えた。

 彼女が目を開けて、そして両手を僕の手のひらから離す。


『終わった。これで自分の知識や記憶と同様に、私の知識や記憶を使えるはず』


 俺自身の意識は、この魔法以前と変わっていないように感じる。

 もちろん意識できないような形で書き換えられている可能性はある。

 ただそこまで疑ったら、きりがない。


 そう思ったところで、俺に使った魔法についての知識を思い出した。

 知らないはずの知識を思い出すというのは言葉としておかしいけれど、そんな感じで。


 この知識送信魔法は、あくまで知識や思考を送り込むためのもの。

 送り込む知識の内容は、知識整理魔法で整理すれば、事前に選ぶことは可能。


 ただ送り込む直前の彼女の記憶によると、知識整理魔法はかかっていないようだ。

 理由も記憶の同じあたりに入っている。

 自分が嘘を言ったり、俺をいいように操っていないという証明のためだと。

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