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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第1章 中学3年7月 第1話 はじまり

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3 説明

 なるほど、理解した。

 確かにこれは魔法だ。

 催眠術だって、実際にはもっと複雑な仕掛けが必要だろう。

 催眠術でここまでのことが出来ると、僕は思わないけれど。


 ただ疑問に思ったので、聞いてみる。


「そういう魔法が使えるのなら、俺を魔法で操ることも出来るんじゃないか?」


『出来る。でも、そうしたくはないし、そうした場合は完全には目的を達成できない』


 「そうしたくない」というのは倫理的な問題だろうか。

 それとも「完全には目標を達成できない」という方だろうか。


「目的とは何か、聞いていいか?」


『私が送り出した5人が、この世界で平穏に暮らしているのを確認すること。確認できるまでの間、この世界で平穏に暮らすこと。そのための拠り所を見つけること』


 状況がわからない。

 それは彼女も理解したのだろう。

 すぐに次の説明が入る。


『全て説明すると冗長になる。必要なことを伝えられる自信もない。私の常識や思考様式は、私がかつていた世界のもの。だからこの世界で何が重要で、何がそうでないか――何が常識で、何が非常識なのか――それがわからない。

 だからもしよければ、私の知識や記憶のすべてを貴方に転送したい。そうすれば、私がここへ来た経緯を含め、全部わかる。

 危険はない。性格や考え方が変わることもない。本を一冊読むのと同程度。あと、私の知識を得れば、魔法を使えるようになるかもしれない』


 魔法を使えるようになるか。

 現実にはありえないと言いたいけれど、何せ僕は先ほど魔法を見せてもらっている。

 だから一概に否定することはできない。


 ただ、記憶を全部となると、色々と問題があるような気がする。

 俺自身に危険がないとしても……


「プライバシーの問題とかはいいのか? 知識や記憶すべてというと、問題がありそうな気がするけれど」


 彼女の名前を聞いていないことに、話しながら気づいた。

 彼女が頷くと同時に、声ではない声が響く。


『問題ない。一つの作戦行動が終わったら、魔法の知識と戦闘に必要な知識・経験を除き、記憶は消去される。

 個人的な記憶は、前回の諜報任務終了時の記憶消去以降、約3日分しかない』


 ――ちょっと待ってくれ!

 それってどういう意味だ!?

 戦闘って、戦争でもやっているのか!

 俺よりどう見ても小さく見えるこの子が。


『名前については待ってほしい。ここへ来る前の呼称は、ここでの意味に直すと5290107番。

 ただ、そういう呼び方はこの世界でいう「名前」というものとは違う気がする』


 名前ではなく、番号呼びか。

 異世界もののファンタジーというより、ディストピア系SFという感じだ。


 ただ、彼女が嘘を言っていないのなら、これは現実だ。

 この世界ではなく、他の世界の話ではあるけれど。

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