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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第6話 俺は気づかなかった

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35/99

35 予感

 メイは頭がいいし、飲み込みも早い。

 どれだけ難しい問題でも、順を追って説明すれば1回で理解してくれる。

 今回は、補助線を2本引いた辺りで解法に気付いたようだ。

 ただ一応ということで、解が出るところまでささっと解説する。


「サンクス。やっぱり津久井に聞くと早いよね」


「メイさんでも今の問題、よく考えれば解ける気がするけれどな。実際、補助線を2本引いた時点でわかっていただろ」


「その補助線に気付くまでが大変なんだよ。津久井はあっさり引いたけれど。私は頭がいい方じゃないから、どこに引くべきかがわからない。だから、とにかく数をこなして、こうやって出来るパターンを増やしていくしかないわけ。津久井にお世話になりつつね」


 いや、ちょっと待て。

 頭がいい方じゃないというのは、間違いなく嘘だ。


「俺が来るまでだって、メイさんは一人で何とか出来ていただろ。業者テストの偏差値も70を切ったことは無いはずだし」


 メイは俺以外ではクラスで、つまりはうちの中学校でトップの成績だ。

 業者テストの偏差値も、ぎりぎりだけれど毎回70以上を保っている。

 これはうちのような田舎の1クラスしか無い中学では、実はとんでもなく難しい。

 授業が遅すぎて、業者テストの範囲まで行っていないからだ。


 だから『授業は復習もしくは確認』くらいのつもりで、授業よりずっと早く、自力で教科書やネットの問題集で勉強する必要がある。

 そうしないと自由登校で授業が終わるまでに、県立高校入試の範囲すら終わっていない、なんて事になりかねない。


 ただ、こうなると、わからないところがあっても先生に聞くという事が出来なくなる。

 授業以上の事を聞くと、嫌な顔をするような先生が多いから。

 たとえその科目の先生は大丈夫でも、職員室に行って、そういうことを聞くと、勝手に横から聞いて嫌な顔をしてくるし。


 この環境でそれなりの成績をキープ出来るというのは、つまり1人でも問題ないという事だ。

 俺自身も1人で苦労しているから、それくらいはわかる。


「それでも1人ってのは、正直しんどい時があるんだよ。小学校の頃にはあと1人、出来るのがいたんだけど、中受して愛媛の方の寮がある進学校へ行っちゃったし。だから、津久井が転校してきてくれて、気分的に助かっているのは本当。こうやって、わからない部分を教われるなんてメリットを除いても」


 その気持ちは、正直よくわかる。


「戦友みたいなものだからな、実際」


「それでも、津久井は、またすぐ別の場所に行ってしまうんだろうけれどね」


 えっ!?

 意外な言葉に、一瞬思考が混乱する。

 別の場所というと……

 こういう意味だろうか。


「俺が、ゴ高しか行けないからか?」


 メイは、首を横に振る。


「津久井は、また東京の方に戻っていく気がする。私はここから出られないけれど。何となく、そう感じるだけだけれどね」


 東京の方に戻るか。

 それが出来れば、万々歳なんだけれど。


 実際は、そうはならないだろうと思う。

 衣緖菜をもっとましな場所に送り出して、俺は代わり映えのない日常に戻るだけ。

 でもそのことは言えないし、その件を除いても返答しにくい。

 メイが言った『私は、ここから出られない』というのが、気になって。


「あ、気にしないでいいよ。単なる勘で根拠はないから。私も大学は県外へ行っていいって言われているし」

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