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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第6話 俺は気づかなかった

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34 クラスメイトと

 誰の声かは、すぐにわかった。

 図書館で出くわすようなクラスメイトは、基本的に一人しかいない。


「なんだ、メイさんか」


 中学で同じクラスの佐藤(さとう)楓(かえで)だ。

 メイというのはあだ名で、佐藤(さとう)楓(かえで)→サトウカエデ→メイプルシュガー→略してメイ、となったと聞いた。


 女子ではあるけれど、今のクラスの中では一番話しやすい。

 というか女子に限らず、生徒の中で一番よく話すし、話せる相手だ。


 同じ課外活動ということもあるけれど、話す理由はそれだけではない。

 ちゃんと会話が通じるし、よく見れば顔も可愛い方だと思う。

 言葉が男っぽいせいか、成績がいいせいか、男子には人気がないけれど。


「なんだとはなんだ、というのはまあ置いておいて。ちょうど質問があるんだけれど、フリースペース側へ行っていい?」


 図書室部分ではあまり会話できないが、フリースペース側なら多少は話しても問題ない。

 そして衣緖菜なら、俺が多少移動しても問題なく位置がわかるだろう。

 なら質問とかそれ以外の話をするなら、移動した方がいい。


「わかった」


 ノートとタブレットをディパックに入れ立ち上がり、移動開始。

 フリースペースはそこそこ空いていた。

 窓際の机を横並びでキープしたところで。


「ところで、昨日はいなかったけれど、何かあった?」


 そんなことを突然聞かれた。


「俺だって、常駐しているわけじゃないぞ」


「休日はほぼ常駐してるよね。大雨で動けない日を除いて」


 その通りだけに、とっさに返せない。


「まあ、それは置いておいてさ。三者面談、金曜日にあったでしょ。私が終わった時には、もういなかったけれど、津久井もやっぱりシュウ高?」


 シュウ高というのは、愁多高校の通称。

 この前行った県庁所在地にある、県のトップ校だ。

 つまり引っ越してから三者面談までの間、俺の志望校だった学校。

 しかし今は……


「残念ながら俺や先生の意見と、うちの父の意見は一致しなかった。進学はゴ高しか認められないらしい」


 ゴ高というのは、ここの最寄りの伍醍醐高校のこと。

 昔はそこそこの高校だったらしいけれど、過疎化が進み人口が減りまくった結果、十年くらい前から定員割れが常態化している。

 当然、レベルは推して知るべし状態。


「何それ……でもまあ、文句を言いたいのも事情に詳しいのも津久井(つくい)だし、私がこれ以上言うのは野暮か」


 こういった場合に、根掘り葉掘り聞かないで察してくれる辺りが、メイと話していて楽な理由だ。

 なお思考が口に出るのは、本人曰く『頭の回転がそれほど速くないから、ひとつ考えていると他のコントロールが効かない』から。


 ただ、実際はわざとだろうと俺は思っている。

 相手に余分な誤解を与えさせないために。

 ただ誤解するだけならまだしも、馬鹿は理解不能な理屈で曲解して、勝手に怒って攻撃してくることがあるから。


 そういった連中から身を守る方法は、俺の場合は『近寄らないし、話さない』だった。

 その点はメイの方が俺より数段賢いし、社交的だ。


「なら別件というか、本来の用件。この問題の解き方がわからないんだけれど、津久井なら解けるだろうと思って」


 メイは時々、こういった問題を俺の所に持ってくる。

 というのは、うちの学校の先生の半分以上は、授業以上のことを聞くと嫌な顔をするから。


 うちの担任は割とまともな方だけれど、たとえば数学の高橋先生は駄目駄目側。

 あれこれ思うところはあるけれど、生徒ひとりで変えられるものではないし、恨みを買って内申点を下げられるとまずい。

 なのでメイも先生に聞くなんてことをせず、俺に聞いてくるわけだ。


 今回持ってきたのは数学の、折り返し図形を使った問題。

 これはこれで定石の解き方はある。

 うん、そこそこ複雑だけれど、問題なく解ける。


「こういった場合、わかる部分は、まず図形に書き込んでしまった方が早い。折り返しだから、ここの長さとここの長さ、ここの角度は同じ。そうなると、ここは90°だから……」

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