表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第3話 連れて帰って

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/99

13 最初の食事

 彼女が何を食べられるか、何が好きかわからない。

 だから取りあえず適当に種類を持ってきた。

 具体的にはあんパン、クリームパン、ジャムパン、カップラーメンの味噌味、愛媛産ブランドものオレンジジュースの1Lパック。


 結果としては、彼女はこの中ではジャムパンとクリームパン、そしてオレンジジュースが好きだった様だ。


『美味しい。こういった甘いものは、多分食べたことがない』


 クリームパンを思い切り頬張っている彼女は、これまでよりちょっとだけ幼く見えた。

 一気に頬張って、頬張りすぎて飲み込むのに苦労して、そしてジュースのコップを口に運んだところで、また彼女の伝達魔法が入る。


『この飲み物も凄く美味しい。甘くて濃くて味が深くて。大司教の記憶にもこんなものは無かった。柑橘を搾った似たような飲み物の記憶はある。しかしもっと酸味が強くて甘くない。酒に入れて飲むもので、そのまま飲むものではないらしい。

 これって凄く貴重なものではないのだろうか。私に出しても良かったのか?』


 話しているわけではないから、飲食しながらでも彼女の意思は伝わる。


「普通の飲料より少し高めだが、うち程度の家でも普通に買える程度のものだ。何なら全部飲んでもいい」


 実際は買ったのではないだろう。

 うちの父が買ってくる食品は、基本的には激安系。

 そうでない物が混じっている時は、まずパチンコの景品だ。


 あとカップラーメンは、どうやら彼女は食べないようだ。

 なら俺の夕食としよう。


「それじゃこっちは、俺が食べるから」


 パンならフォークや箸を使わずに食べられる。

 カップラーメンを食べないのは、箸やフォークを使う必要があるからだろうか。

 そう思いつつカップを左手に持って、麺をすくうため箸を汁の中へ入れたところで、俺は気付いた。

 彼女がカップラーメンを避けた理由を。


 彼女の記憶にある食事は、前回の任務終了後から此処へ逃げてくるまでの12食。

 全てが軽い塩味の、野菜入りの粥だ。


 味は薄い塩味と、青菜のえぐみ。

 一緒に煮込まれている大麦の粒は、かすかすになっていて歯ごたえのない状態。

 その結果、食事は楽しみではなく、1日に1回義務としてとるものと意味づけられている。


 この食事のせいで、汁物に抵抗感がある様だ。

 無理もないな、と俺は感じる。

 俺の想像以上に彼女がいた環境は酷すぎた。

 今の俺の状況が天国に思える程だ。


 ただ、このまま彼女をここに置いておくのはまずいだろう。

 何せ日本的にまともな食事だって摂れない状態だ。

 基本的に家で食べられるのは、菓子パンかカップラーメンだから。


 俺は学校給食があるから、何とかなっている。

 父や母は俺には言わないが、時々外食しているようだ。

 俺の養育費が入った時とかに。


 それにこの世界に馴染んで貰うためにも、学校くらいは通った方がいい。

 ただ現状では彼女は、戸籍がない。

 何とかして戸籍を作る方法を考えないと、この先、人生が詰んでしまう。


 それ以前に、着替えとかまともな食事とかは当然必要だろう。

 なら当座のお金が必要だ。


 しかし俺の小遣いは0。

 現在、家で使う金は父のスマホに入った何とかペイとやらに入っている。

 そうしないと母が無駄遣いしまくるからだけれど。


 一応俺名義の郵便貯金が、2万円くらいある。

 母が離婚するまでの順調だった頃、お年玉を貯めたものだ。

 あとそのころ小銭をこっそり貯めておいたものが、2千円くらい。


 これはいざという時のため、父にも母にも見せずに取っておいたもの。

 でも2万2千円ちょっとでは、あっという間に無くなりそうな気がする。

なら彼女の魔法を使って……


 なんて考えている間に、俺は自分の分のカップラーメンを食べ終えた。

 彼女もパン2つで食べ終わりの様だ。

 でも一応聞いておこう。


「オレンジジュース、もう一杯いるか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ