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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第3話 連れて帰って

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12 家へ到着

 自転車2人乗りで家まで帰る。

 家まではゆるいとはいえ、基本的に上り一方の坂道。

 だから苦労するのは覚悟していた。

 しかし走り始めてすぐ、彼女がこんなことを伝えてきた。


『この乗り物は理解した。魔法で助力する。足に力を入れて動かす必要はない。動く方向と、止まるべき場所だけ意識して』


 そこからはもう、オートバイみたいなものだ。

 漕がなくても、自動で自転車が前に進む。

 楽だけれど、ちょっと申し訳ない気がするので聞いてみた。


「楽でいいし助かるけれど、無理はするなよ」


『大丈夫。この程度ならそれほど力を使わない』


 もともと田舎で、しかも街外れの方向に向かう道だ。

 6kmちょっとの道のりでも、信号は1箇所しかない。

 だからあっさり快適に、家へと到着。


 車がないから、父はまだ帰っていないようだ。

 母は家から出ないから、家にいるだろうけれど。

 家の敷地前で自転車を降りて、彼女に頼む。


「家にいる母や、これから帰ってくる父に気づかれないようにするとか、干渉されないようにするような魔法をかけて貰えるか?」


「母? 父? ……この家に住む私と貴方以外の人が、私に気づかないようにした上で、貴方に干渉しないようにするという精神操作魔法でいい?」


 なぜ母や父という言葉に疑問形で、しかも返答まで間があったのだろう。

 ただ返答としては問題ないので、とりあえずお願いしておく。


「頼む。君だけでなく俺にも不干渉でいてもらえると、楽でいい」


「了解……魔法を設定した。この家とその周囲で、1日間有効」


「ありがとう。それじゃこっちだ」


 先ほどの疑問形や間を気にしつつも、自転車を押して砂利の敷いてある部分を通って敷地内へ。

 ここも雑草がかなり茂ってしまっている。

 父が車を停めたり走らせたりしている部分だけが、何とか通れる状態。

 引っ越してから一度も草刈りをしていないので当然だ。


 玄関前で自転車を停めて玄関へ。

 風除室というらしい雪落とし用のサンルームっぽい場所へ入り、玄関扉を鍵で開けて家の中へ。


 玄関も廊下も散らかっている。

 まず靴類がサンダル、運動靴、運動靴その2、先が妙に尖った形の革靴。

 これらは全部父の靴だ。

 他に草刈り用として買ってきたけれど使っていない鎌と鍬、引っ越してきた時からある大きいスコップ2種類、やはり前の住民が置きっぱなしにしているポリタンク……


 俺を含め、誰も片付けない。

 下手に片付けると、以降はその作業が俺の仕事になってしまうからだ。

 感謝されるのではなく、して当然で、しなければ文句を言われる。

 父も母もそういう思考の持ち主だから、下手なことはしない方がいい。


「散らかっているけれど、ここで靴を脱いでくれ」


『了解』


 彼女が脱いだ足首くらいまでのショートブーツを持って、玄関から上がってすぐ左の引き戸を開ける。

 畳7畳と押し入れ、机代わりのコタツがある俺の部屋に到着だ。


「ここで待っていて。食事と飲み物を持ってくるから」


 カップラーメンと菓子パン、どっちがいいだろう。

 そう思いつつ、俺は鞄を置いてキッチンへ向かう。

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