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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第3話 連れて帰って

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11 当座の方針

 なるほど……

 俺は彼女の事情を、とりあえず理解した。


 彼女が近未来予知の御力で見た転移先は、この学校の中学3年の教室。

 しかし御力がぎりぎりだったため正確な転移ができず、中学校から5km東の山林の中に出現。

 転移で御力を使いきったため、場所確認や近未来予知の御力を使えず、それ以上動くことができないまま一晩待機。


 翌朝、近未来予知能力で改めて移動先と到着すべき時間を確認。

 隠蔽御力という、周囲の人に気づかれない魔法を使いつつ、この中学校へ移動。


 人が来ないだろうと判断した体育館2階観客席で、時間まで休んだ後。

 隠蔽御力を発動させたまま周囲に気づかれないようここへ来て、近未来予知御力で会うべき相手が俺だと確認。

 俺だけに隠蔽御力を解いて姿を現した、という流れだ。


 ここまで記憶を確認して、今さらながら気づく。


「昨日から飯を食べてないけれど、大丈夫か?」


『任務の時はそれくらい珍しくない。水は御力、いや魔法で出せるから大丈夫』


 いや、大丈夫ではないだろう。

 どう考えても無理している。

 確かに記憶では「任務中はよくあること」となっているが、それは基準が間違っているのだ。


 昼までに気づいていれば、給食を一食分くらい誤魔化すことができただろう。

 しかしこの時間には、すべて片付いてしまっている。

 どこかで買いたいところだが、俺は小遣いを貰っていない。


 俺が確実に食料を入手できる場所となると、やっぱり家だ。

 母が買い物も料理もしない代わりに、父が菓子パンやカップラーメンを買い込んでいる。


 パンは賞味期限が切れているものもあるが、気にする余裕はない。

 今までの経験からすると、1週間くらいなら大丈夫だ。


 それに彼女はこちらの世界のことを知らないし、この後のプランも全然持っていない。

 俺は先ほどまでの彼女の全記憶を持っているから、それくらいはわかる。


 ならこの後に彼女が取れる行動は、

 ・取りあえず俺が連れ帰って一晩泊める

 ・警察などの公的機関に連れて行き、以降の扱いを任せる

 のどちらか。

 法的に正しいのは警察だ。


 しかし彼女は近未来予知魔法で、“俺の前に姿を現すべきだ”と判断した。

 警察に行くという判断ではなく。

 彼女の記憶と知識がある俺には、その意味がわかる。

 彼女にとって最適な手段は警察ではなく、“俺がどうにかできる範囲”にある、ということだ。


 なら家に連れて帰って問題は……

 父と母は、彼女の精神操作魔法でごまかせる。

 彼女に対しても俺に対しても、全く気づかず無関心になるよう操作するのは難しくないらしい。


 問題は、うちの家が俺の部屋以外、散らかっているところ。

 トイレや洗面所は帰ったら、彼女が使う前にささっと掃除しておこう。

 寝るのは俺の部屋を使うしかない。

 部屋数は結構あるのに、父や母が散らかしまくって片付けないから。


 あとは彼女にベッドを使ってもらい、俺はキャンプ用寝袋を使えばいい。

 同じ部屋で寝るのは避けられなくても、寝袋で寝ればそう変な気は起きないと思うし、思いたい。


 それに一緒に帰れば、今後のことについてじっくりと話し合える。

 ただその前に、取りあえず何か食べてもらって、そして休んでもらった方がいい。

 では方針を彼女に確認しよう。


「とりあえず今日は俺の家に来て、何か食べて、休んでもらうということでいいか。散らかっているけれどさ」


『ありがとう』


 あっさりと、そう返ってきた。

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