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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第2話 彼女の記憶

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10/129

10 実行

 私と部下、そして大司教は、転送装置のある部屋に到着した。

 私は情報・諜報隊の任務に使用するため、この部屋の使用権限を持っている。

 だから私の御力で扉は開くし、転送装置の操作も可能だ。


「それではまず、この大司教から転送をかける」


 この者に任務を与える。

 具体的には、命令99に準じた内容を、精神操作で絶対的な命令として書き込む。


『転移後は、可能な限り敵現地指揮所に近づき、これ以上近づけないと判断した時点で、魔力と生命力をすべて使用し、自爆せよ』


 これまでに犯した行為に対する罰としては、軽すぎる。

 この男は罪のない者に対しても、気軽に死を命じていたのだ。

 しかし現状では、私たちの脱出時間を稼がせるのが一番効果的な使い方だろう。


 私は近未来予知御力で、もっとも適切と思われる移動先座標を確認。

 この男の体重の重さゆえに、そう遠くまでは飛ばせない。

 しかし体重が重い分、生命力を使用した自爆の威力が高くなる。

 結果、そこそこの時間は稼げるだろうと判断。


「それでは転移位置につけ。転移後は命令を忠実に遂行せよ」


 決まり文句で男を転移位置に追いやって、転移御力を起動。

 男の姿が消えた後、改めて部下に指示する。


「それでは次に、生年の若い者から順に転移させる。5360012、転移位置について」


 うちの部隊は、年齢が若い者ほど小柄で軽い。

 そして転移は軽いほど御力で送りやすく、使用する御力も少なくて済み、転移先の位置も制御しやすい。

 つまりは転移を成功させやすい。


 私は近未来予知御力を使用し、彼女が今後よりよく生きていけること、楽しいと感じること、来て良かったと感じることを条件に座標を確認。

 見えた最適座標を移動先として、転移御力を発動させる。


 次に5350051、さらに5340112、5340018、そして先任の5310037を送り出す。

 これで残りは私だけだ。


 ただ5人連続で近未来予知御力と転移御力を発動した結果、私が使える御力の残りが少なくなった。

 大丈夫。まだ時間はある。

 私ひとりなら、敵を察知してから転移魔法を起動しても問題ない。


 敵を感知直後に転移できるよう、転移位置の上に移動した時だ。

 爆発音、そして振動を感じた。

 音と振動がほぼ同時に来たということは、距離はそれほど遠くない。


 状況を知りたいが、御力が惜しい。

 現在の私の御力でも、近未来予知御力と転移御力を使用して、あの異世界の最適座標へ転移することは、辛うじて可能だろう。


 ただし御力に余裕がない場合、転移先位置が若干不安定になる。

 だからできればぎりぎりまで御力を回復して、少しでも余裕を持たせたい。


 それに、不明な場所に転移したうえ御力が使えないという事態は、できれば避けたい。

 これから行くのは異世界、どんな世界なのか未知なのだから。


 また爆発音と振動を感じた。

 今度は連続。それも段々近づいているようだ。


 どうやら敵は、爆破系統の魔法でここを制圧する方針にしたらしい。

 御力の回復を図る余裕はなさそうだ。


 仕方ない。

 私は近未来予知御力を発動。

 予知した私にとっての最適座標に向け、転移御力を発動させた。

殷々鬱々した異世界編は、ここまでです。

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