10 実行
私と部下、そして大司教は、転送装置のある部屋に到着した。
私は情報・諜報隊の任務に使用するため、この部屋の使用権限を持っている。
だから私の御力で扉は開くし、転送装置の操作も可能だ。
「それではまず、この大司教から転送をかける」
この者に任務を与える。
具体的には、命令99に準じた内容を、精神操作で絶対的な命令として書き込む。
『転移後は、可能な限り敵現地指揮所に近づき、これ以上近づけないと判断した時点で、魔力と生命力をすべて使用し、自爆せよ』
これまでに犯した行為に対する罰としては、軽すぎる。
この男は罪のない者に対しても、気軽に死を命じていたのだ。
しかし現状では、私たちの脱出時間を稼がせるのが一番効果的な使い方だろう。
私は近未来予知御力で、もっとも適切と思われる移動先座標を確認。
この男の体重の重さゆえに、そう遠くまでは飛ばせない。
しかし体重が重い分、生命力を使用した自爆の威力が高くなる。
結果、そこそこの時間は稼げるだろうと判断。
「それでは転移位置につけ。転移後は命令を忠実に遂行せよ」
決まり文句で男を転移位置に追いやって、転移御力を起動。
男の姿が消えた後、改めて部下に指示する。
「それでは次に、生年の若い者から順に転移させる。5360012、転移位置について」
うちの部隊は、年齢が若い者ほど小柄で軽い。
そして転移は軽いほど御力で送りやすく、使用する御力も少なくて済み、転移先の位置も制御しやすい。
つまりは転移を成功させやすい。
私は近未来予知御力を使用し、彼女が今後よりよく生きていけること、楽しいと感じること、来て良かったと感じることを条件に座標を確認。
見えた最適座標を移動先として、転移御力を発動させる。
次に5350051、さらに5340112、5340018、そして先任の5310037を送り出す。
これで残りは私だけだ。
ただ5人連続で近未来予知御力と転移御力を発動した結果、私が使える御力の残りが少なくなった。
大丈夫。まだ時間はある。
私ひとりなら、敵を察知してから転移魔法を起動しても問題ない。
敵を感知直後に転移できるよう、転移位置の上に移動した時だ。
爆発音、そして振動を感じた。
音と振動がほぼ同時に来たということは、距離はそれほど遠くない。
状況を知りたいが、御力が惜しい。
現在の私の御力でも、近未来予知御力と転移御力を使用して、あの異世界の最適座標へ転移することは、辛うじて可能だろう。
ただし御力に余裕がない場合、転移先位置が若干不安定になる。
だからできればぎりぎりまで御力を回復して、少しでも余裕を持たせたい。
それに、不明な場所に転移したうえ御力が使えないという事態は、できれば避けたい。
これから行くのは異世界、どんな世界なのか未知なのだから。
また爆発音と振動を感じた。
今度は連続。それも段々近づいているようだ。
どうやら敵は、爆破系統の魔法でここを制圧する方針にしたらしい。
御力の回復を図る余裕はなさそうだ。
仕方ない。
私は近未来予知御力を発動。
予知した私にとっての最適座標に向け、転移御力を発動させた。
殷々鬱々した異世界編は、ここまでです。




