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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第24話 合宿中断

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130 GW前半の終わり

「これは気持ちいいですね。でもどうせならお湯から出て少し休める場所も欲しいです。横になれるベッドっぽいものとか。あとは椅子っぽい、ゆったり身体をもたせかけられるものも欲しいですね」


 これは花音さん。

 どうもはまってしまった様だ。


「何なら適当に材料を調達して作っておくよ。次の合宿までには完成させればいいかな」


「このお風呂は毎日常設してもいいと思います。近未来予知魔法で天気や屋上の予定を確認して、雨や雪が降らない夜は基本的に設置ということで」


 愛美さんもそう言っているということは、きっと決定だ。

 学校屋上で露天風呂なんて、背徳的過ぎる気がするけれど。


「あとこれは、合宿にも持っていきましょう。向こうのお風呂も良かったのですけれど、屋外の方が気持ちいい気がしますから」


 ……まあ合宿は、どちらにせよ混浴だから、仕方ない。

 でも待てよ、確か花梨さんの他に、何人か応援が来る筈だよな。

 なら風呂は、混浴ではないかもしれない。

 

 ただ次の合宿の5日夜には、戦闘か何かが起きる。

 ケイトさんによれば『衣緖菜を失わない様にする』ことを考えなければならない事態になる。

 なら……


 取りあえずここでも、魔力を上げる訓練をしておこう。

 水温を上げ下げしたら他の人に影響があるから、今度は気温で。

 屋外でそこそこ風があるから、多少上げすぎたり下げすぎたりしても、影響は少ないだろうし。

 

 ということで、取りあえず見えている範囲の上空に、正六面体の範囲をイメージしてみる。

 この中の気温を、今日はちょっと暖かいと言うより暑いから、3℃下げることをイメージ。

 

 どうやら空気の方が、水より温度を上げ下げしやすい様だ。

 なら今度は3℃上げることをイメージして、そして次はまた3℃下げて……

 何度か繰り返したところで、急に眠気が襲ってきた。

 まずい、やり過ぎたと気付いたけれど、意識が……

 

 ◇◇◇


 気がつくと、いつもの俺の部屋の、俺のベッドだった。

 隣に衣緖菜がいるのも、いつも通りだ。

 遠見魔法で時間を確認すると、22時過ぎ。


 思ったより寝てしまった様だ。

 そう思ったところで、横から衣緖菜の声がした。


「ありがとう。でも無理しすぎないで」


 確かにそうかもしれない。

 でも少しでも魔力を上げておきたい。

 それにあの場なら俺が意識を失っても、すぐに誰か気付くだろう。


 強いて言えば女子の中、全裸で救出されるというのが悲惨というか、何というか……

 そのくらいだ、問題は。


「とりあえずここまでの補足説明。最初に倒れたのに気付いたのはメイ。水中に顔が沈まない様にメイがかかえて、飲み込んだ水は結菜が魔法で出して、愛美の転移魔法でここまで運んだ。その後ここへ皆で移動して、あの風呂に追加したいものをネットで探して注文して、最後に夕食を食べて帰ったところ」


 なるほど。


「悪かったな、そこで露天風呂が中止になって」


「問題ない。1時間近く入ったから、私としては充分。あと香里奈は隣の私の部屋のベッドで寝ている。あっちの部屋も一通り揃っているし、普段使わないから、ちょうどいい」


 とりあえず状況は、理解した。

 要は俺が倒れただけで、他は問題ない様だ。

 そう思ったところで、また衣緖菜の言葉がはじまる。


「陽翔が魔力を上げようとしている理由は、見えている。誰がそう助言したかも、大体は。ただそれで何があるのか、どういう意味があるのかは、私にはわからない。そこまでの未来は私には見えない」


 そこは正直、意外だった。

 だからつい、聞いてしまう。


「衣緖菜でも見えないのか?」


「愛美、美羽、陽菜は、空間操作魔法専門に遺伝子操作されて生まれている。特に陽菜の空間操作魔法は圧倒的。私が3まで見えるとすれば、10くらいまで見えるはず。ただし経験が足りないから、見える未来の幅が狭い。愛美が8まで3の幅で見えるとすれば、陽菜は10まで1の幅で見える。私は3まで、5の幅」


 陽菜さん自身からも、似たようなことを聞いた覚えがある。

 でも、それなら……


「衣緖菜の方が、見える幅が広いのか」


「おそらく戦闘経験のせい。見えている一番可能性の高い未来を、揺さぶってわざと変化させる。何を変えれば別の未来になるかを探して、そういった戦闘もしていた様だから。私の記憶にはないけれど」


 作戦終了ごとに、衣緖菜の記憶は消去されていた。

 だから記憶にないわけだ。


「でもそれはそれとして。陽翔は無茶しないで欲しい。今度の合宿で、おそらくは部下を全員、取り戻せる。しっかりとは見えないけれど、そこは見えつつある。だから陽翔は、心配しなくていい」


 いや、俺が心配なのは、そこじゃない。

 少なくともケイトさんは、メールでこう書いていた。


『衣緖菜は間違いなく無理をする。それでも衣緖菜を失わない様にするのは、陽翔の役割だ』


 俺が何をすればいいのかは、わからない。

 魔力を上げろとは言われているけれど、上がった魔力で何をすればいいのかが、わからない。

 誰かに何かを聞いたような気がするけれど、思い出せない。


「ならお願い。今の私に、目一杯陽翔を感じさせて。私が陽翔の元に絶対帰りたいと思わせるように」


 この言葉が、その通りの意味なのかは、俺にはわからない。

 この場で、これ以上の話を誤魔化すためかもしれない。 

 合宿中というかGW中、ムラムラする事が多くて、いいかげん限界なのが衣緖菜にバレているからかもしれない。


 それでも、この場にいる衣緖菜を、俺は思いきり抱きしめてしまう。

 愛かただの性欲かはわからないけれど、それでも失いたくなくて。

 

 

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