129 予想したくなかった事態?
その後の作業は、こんな感じだ。
① 巨大な青いビニールシートを2枚広げる
② その上に空気が抜けた巨大な青いゴムボートみたいな形のものを置く
③ 更にメイの指示通りポールを各所に置いて
④ ②で置いた青いゴムボートみたいなものに、ポールを通して組み立てる
メイを含む5人で作業すること、10分程度。
合宿所の風呂より広いし深い、プールというよりは非常用水槽みたいな代物が完成した。
幅だけで、俺の部屋と同じ位。
しかし長さは、間違いなく俺の部屋より広いというか、倍近くありそうだ。
うちの家だと、多分リビングにも広げられない。
それに高さも結構ある。
俺でもまたいで入るのは不可能な高さで、プール端と中に専用の脚立っぽいものを立てて入る形だ。
「大きいな、これ」
「カタログによると、長さ4.5メートル、幅2.2メートル、深さ最大84センチ。誤差はあると思うけど」
「でもこれだけ大きいと、置く場所が無いだろう。水を入れたら重くなるから、ここで試すわけにはいかないと思うし」
目一杯水をいれないとしても、7トンくらいの重さはあるはずだ。
そう思ったところで。
「この建物のこの位置なら問題ない。下に太い柱が走っている真上」
「重さに耐えるということで、寮ではなく教室棟屋上の、この位置にしたのです。この先1年使用しても、これで問題が出る未来は見えないのです」
美羽さんや陽菜さんが、魔法で確認済みということらしい。
「それじゃざっと水で洗って、それからお湯を貯めようか。ということで、洗うのは誰にお願いすればいい?」
「私がやります」
香里奈さんがやってくれる様だ。
美羽さんと陽菜さんは本来は空間操作専門だし、メイや俺は論外。
そして香里奈さんは衣緖菜と同じなら、得意な魔法は精神操作だけれど、他も割と万能に使えるタイプ。
だから妥当なところだろう。
魔力がプール全体に広がった。
おそらく綺麗にするとか洗うという感じの魔法がかかったのだろう。
俺の目では、何が起きたかわからないけれど。
「この大きさの対象相手に洗浄魔法ですか。私では無理なのです。正直うらやましいのです」
「私も効率的に無理。多分途中で魔力が限界」
「そのかわり、移動魔法や予知魔法を私の数段上のレベルで使えますから」
やはり衣緖菜と同じような魔法の傾向らしい。
そして香里奈さん、陽菜さんたちの魔法についても把握済みのようだ。
花音さんが、魔法でひととおり伝達したのだろう。
「さて、綺麗になったところで、美羽と陽菜にお願いしていい? 当初の予定通りで、あえて加温しないで」
「承知」
「了解なのです。多少温度低めの方が、今日の気温にはちょうどいいのですよ」
加温しない?
その言葉に微妙に疑問と不穏さを感じたところで、プール内に水が一気に流れ出てきた。
見ればただの水ではないことがわかる。
明らかに黒っぽい。
きっとこれは、家の風呂に出していたのと同じ温泉だ。
不穏な予感、更に!
黒いお湯が、あっという間にプールの中に溜まった。
島の風呂でやった時より、数段早い。
きっとあの時は、俺やメイの訓練のために、ゆっくりお湯を出していたのだろう。
水が黒ければ、もし漏れている場所があればわかりやすいからだろうか。
あえて思考をそういう方向に曲げつつ、プールを観察。
今のところ水、いやお湯が漏れている様子は無さそうだ。
そしてプールの中と外をつなぐはしごの外側の前に、美羽さんが分厚く大きいマットっぽいものを置く。
「ちょうどいいマット、ありがとう」
「カナ姉の農場の、洗体所に敷いていたもの。勿体ないから確保していた。でも今まで、使い道がなかった」
不穏な予感、更に高まる!
なんて思ったところで、ふっと魔力を感じた。
衣緖菜、花音さん、愛美さん、結菜さんが出現する。
「向こうでの作業は、ひととおり終わりました。香里奈さんの希望通り、危険が去ったら向こうに戻れるようにしてあります」
「ということで、皆、こっちに合流するよ。ところでこれ、温泉というか、いわゆる露天風呂って奴? 島の温泉より広いし、浴槽も大きいしで快適そうだけど」
俺が考えないようにしていた可能性が、ついに言葉として出てしまった!
でも違うよな、まさか学校の屋上で露天風呂なんて、そんなことしないよな。
必死にそう思い込もうと思ったところで。
「そう。島で温泉水を出した時、思ったんだ。この方法なら、こっちでも温泉が楽しめるんじゃないかって。それで都筑の家で試して温泉水が出ることを確認した後、このプールを手に入れてやってみたってところ。でも、まだ入っていない。試すのはこれから」
「なら服も含めて全員、全身洗浄魔法! ってことで、これでもう入れるよね。ということで、一番風呂!」
確かに今、俺も何か清涼感を覚えた。
きっと身体の汚れ等を落とす魔法がかかったのだろう。
そして結菜さんの姿が消え、浴槽というかプール内に出現した。
ちらっと魔法で確認して、すぐ視界を解除する。
既に全裸だったから。
「気持ちよさそうですね。あとで合流します」
「同感」
「それではさっさと、作業を終わらせてきます」
衣緖菜たちの姿が消える。
そして……
「それじゃ入ろうか」
メイが服を脱ぎだした。
学校の屋上で、思い切り日が当たっている中、堂々と。
「おい大丈夫か、こんな場所で」
「周囲から見えない様に魔法が掛かっているから、問題ない」
おいおい。
そして他の皆さんは、既にプールに浸かっている。
魔法で服を脱ぐというか収納して、転移魔法を使えば一瞬で風呂には入れる。
衣緖菜の知識でそれはわかっているけれど、何というか……
「都筑もさっさと諦める! ということで、お先に失礼」
メイは全裸で、堂々とはしごを使って、プールの中へ。
見ようとしたわけではないけれど、遠見魔法であれこれ、胸以上に見てはいけない部分が見えてしまった。
そして敷物の端に置いてある、メイが脱いだ服。
簡単に畳んではあるけれど、下着類が丸見え。
「俺はいいよ。こっちでのんびりしている」
「そう言うと思った。だから陽菜さん、やっておしまいなさい!」
えっ!?
そう思った次の瞬間、俺の周囲が変化した。
いるのは同じ屋上、ただし位置はプールの中。
膝くらいまでお湯と水の中間くらいの感触。
そして全裸状態。
とりあえず、もろ出しのまま立っているのは、風紀上良くない。
ということでさっとお湯の中に座り込む。
「服は畳んで、外のマット上に置いておくのです」
つまり出るのは全裸であのはしごを越えて、外に行く必要がある。
そして中は、混浴温泉状態と。
確かに島の風呂で、全員と混浴した。
でも太陽の下で、しかも学校の屋上なんていうもろ生活圏。
それでこの状態だと、背徳感がはんぱない。
そのせいか立ち上がれない状態なのだけれど、正直勘弁してほしい。
健全な青少年男子としては、当然の生理現象だ。
そう思ったところで。
「そう深く考えずに、のんびり風呂を楽しめばいいだけだと思うよ。なんなら色々見えてラッキーと思う位でもいいと思うし。陽翔以外、誰も気にしていないから」
いや結菜さん、それが難しいのだ。
なんてこと、言う訳にはいかないけれど。




