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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第24話 合宿中断

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124 わからないヒント

 広間は午前中と同様にシートが敷かれ、料理をしても床やテーブルが汚れない様になっていた。

 まずはメイから、今日の作業の説明。


「今回は主戦力(花音さん)がいないから、全員でやるよ。ということで、この前もやった魔法で魚を捌く作業から。要は鱗やヒレ、エラ、頭、内臓をを取って、並んでいる骨を避けて肉を出来るだけ塊でを取り出すだけだけどね。そうやって捌くところまでを、まずは全員でやってしまおう。捌き方が普通と違うのは、私がやるから。あと私と都筑は収納魔法を使えないから、美羽と陽菜、収納お願い」


「了解」


「了解なのです」


 そうして始まる、下拵え作業。

 一応今朝のメイの説明で、魚の捌き方そのものはわかっている。

 だから今は自分が釣ってきた小魚くらいは、魔法で捌くことは出来る。

 丁寧にやれば時間が掛かるし、早くやろうとすると身が骨に残ってしまうけれど。


 しかしメイは、そういった普通の魚ではないもの、具体的にはカレイやコチといった形が普通の魚と違うものとか、イカやタコなんてものも捌ける。

 タコのヌメリ取りなんて作業も、鍋に塩と水を入れて魔法でかき混ぜてやっているし。


 それでいて、あれこれ指示したり適宜指導もしているし、骨や頭部分を魔法で洗った後に焼いて出汁を取る準備を、同時進行でやっていたりもする。

 前も思ったけれど、やっぱり俺と比べて出来る事が段違いに多い。


 俺が何も出来ないのではなく、メイが何でも出来るだけだろうとは思っている。

 それでもやっぱり、若干の劣等感を感じずにはいられない。

 なので、ついこう言ってしまう。  


「何というかメイ、本当に何でも知っているな。イカやタコの捌き方なんて、普通は知らないだろう」


「いつもは父の趣味が釣りで、あれこれ生の魚やイカなんてのを持って帰ってきたからだって返答するけれどね」


 そういえば、前にそう言っていたなと思い出す。

 でも『いつもは』なら、何か違う答があるのだろうか。

 

「実際は、誰とも話せず、誰にも頼れない状態になっても独りで生きていける様に、少しでも使えそうなことは覚えられるだけ覚えた。そう言ったら信じる?」


 えっ!?

 全く予想外で想定外の言葉が返ってきた。

 誰とも話せず、誰にも頼れない状態で、独りで生きていける様に……

 そんな事態、現代の日本であり得るのだろうか。


 でも冗談にしては面白くないし、メイらしくない気がする。

 理屈も微妙に通っていない気がした。

 どういう意味があるのだろう。

 わからない。

 そう思ったところで、メイはふっと微笑を浮かべた。

 

「気にしないで。単なる冗談だから、今となっては」


 冗談というのは、多分違う。

 でもだからといって、聞いていいものかどうかはわからない。

 何なんだろう、そう思ったところでふと思い出した。

 大雑把に思い出した内容から、知識整理の魔法が該当する言葉を引っ張り出してくる。


『そしてメイは、きっとわかりやすいヒントも出しています。陽翔が気づいていないということは、メイ自身が思っているほど、わかりやすいヒントではなかったのでしょうけれど』


 昨晩釣りの時に、愛美さんが言った言葉の一部だ。

 きっとこれも、わかりにくいヒントひとつ。

 でもいわゆる勉強以外は得意なものは何もない俺には、今の材料だけでは読み解けない。


「さて、今のはおいておいて、作業の進みはどう? 終わったら次の作業に行こうと思うんだけど」


 今ので俺の手が止まってしまっていた。

 あとどれくらいだろう。

 適宜、陽菜さんに出したり収納したりして貰っているから、わからない。


「大物はほぼ終わったのです。陽翔担当の小サバが、まだ30匹ほど残っているのです」


 俺の代わりに陽菜さんが答えてくれた。


「なら全部終わったら教えて。シメサバとフライとジャーキーにするから」


 見ると俺以外は、魚を捌く作業はほぼ終わって、切ったり焼いたりソースを作ったりなんて作業に入っている。

 メイはタコやイカの刺身だのゲソ天だのを作ってもいるし。

 という訳で……


「わかった」


 考えるのは後にして、とりあえずは小魚捌き作業に集中する。


 ◇◇◇


 小魚を捌ききった後は、揚げたり、魔法で乾燥させたり、汁に漬けたり。

 この辺もメイなりに、あれこれ微妙なこだわりがあるらしい。


「表面の水分は臭みが出るらしいから、魔法で消すのではなく、キッチンペーパーで拭き取って」


「魔法での脱水や加熱は対象全体に均一に作用するけれど、魔法を使わないで料理した場合は、表面がより脱水されたり熱が加わったりする。そのおかげで中がほっくり仕上がるなんてこともあるから、乾燥や加熱は表面と内部別にかけるとか意識する」


 こんな感じで、あれこれ作ったところで。


「それじゃ一通り終わったから、会場設営して、ちょっと早いけれど香里奈さん含めてみんなで夕食にしよう。ということで、ここからは結菜、お願い」


「はいはい。それじゃシートを外して座卓を並び替えるよ」


 陽菜さんの魔法で、座卓とシートが一瞬消えた後、今朝の朝食と同じ状態に組み替えられる。

 全部を一度収納して、配置を変えて座卓を出し、今作った料理の一部を並べれば、夕食の準備は完了だ。


 この部屋の外、あの和室にいた3人の魔力が、動き始めた。

 今の俺でも、それくらいは壁越しに見える。

 そして大広間入り口の引き戸が、開いた。

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