123 待ち時間
土を平らにして、乾燥させて、焼いて。
何とか同じような道を、海辺の岩場地帯まで繋げ終えた。
「たったこれだけの長さなのに、結構魔力を使ったのです。ここまであっさり終わらせているなんて、力の差を見せつけられた気がするのです」
「空間操作魔法以外の熟練度の差」
「俺の場合は、単純に魔力量だけれどな。それでどうする? まだ1時間半はあるけど」
時間は13時31分。
まだ衣緖菜たちが目覚めるまでには、時間がある。
「ちょっと待って……結菜姉から連絡なのです。遠隔伝達魔法形式なので、陽翔に直接送れないそうなのです。なので美羽経由で受信してほしいのだそうです」
「右手を出して。接触伝達で送る」
なんども女の子の手を握るのは、なにか申し訳ないという気がするけれど、仕方ない。
ということで、美羽さんと握手する形で手をつなぐ。
先程の魔法に比べると伝送容量が少ないのか、ほぼ一瞬で情報が伝わった。
大雑把にまとめると、こんな感じだ。
○ 花音さんと衣緖菜の魔法は終了、3人とも無事。
○ 横になっていた女子は、衣緖菜の元部下の5340112。益城家に引き取られ香里奈と名付けられて地元中学校に通っていたが、誘拐されて洗脳された。
○ 衣緖菜と花音さんの魔法で、洗脳解除と記憶整理を実施。洗脳で過去の記憶を遮断したり書き換えたりされていたことから、処理に時間と魔力を要した。
○ 香里奈、元5340112を連れてきたのは5310037だが、それ以上の説明はまだ結菜さんも受けていない。
○ 今晩で合宿中止となる可能性が高いので、荷物の整理はしておくこと。
○ 次の合宿までに魚料理を食べたいのなら、今のうちに釣っておくこと。特殊な釣りの仕掛けについて公開しておく。
「気になる事は多いのですが、とりあえずは釣りなのですよ。ということで、今は南風ですので北側の岩場へ回るのです」
背中から風を受ける方が、仕掛けを投げやすいし、仕掛けが絡みにくい。
魔法をガンガン使う皆さんの場合は、そんな常識が通用するかは微妙かもしれないけれど。
ということで北側の岩場で、釣りを開始する。
「結菜姉の怪しいイカの釣り方と、メイさんのえげつない底物狙いの方法も聞いたのです。そしてどちらも、小魚がいい餌になるのです。だから陽翔には、前回と同じ小魚釣り専従でお願いなのです」
「それはいいけれど、結菜さんやメイはどんな感じに釣りをしたんだ?」
そこが少しばかり気になる。
「最初に対象の魚やイカがいる場所を、魔法で調べておくのです。そして疑似餌や小魚を釣った仕掛けを目標より少し遠くに投げ込んで、魔法で動かして誘うのです」
なるほど。
「わかった。それじゃ俺は、投げサビキで小魚狙いに徹する」
「最初は餌が必要なので、私も小魚釣りをするのですよ。美羽姉は、お任せするので好きな釣り方で釣って下さいなのです」
「了解」
それで、今後一週間の食材調達を兼ねた釣りがはじまる。
◇◇◇
俺の小魚100匹超は、まあ釣り方的には前と同じ。
しかし他の2人は……
「何か美羽姉の今回の釣果、派手で羨ましいのです」
鯛、アコウ、ハタ、白っぽい甘鯛、いわゆるシーバスだろう60cm級の魚なんて、いかにも高級魚という感じの魚が、これ見よがしという感じに釣れている。
「今回は食料調達。楽しむより結果を重視」
そもそも陽菜さんも美羽さんも、今回の釣り方は魔法前提だ。
何せ釣り上げる際も、いちいち糸を巻き上げて岸まで上げたりしない。
針に引っかかって引いて、動きを止めた瞬間に、冷却魔法で動きを止めて、エラ辺りを切って放血させ絶命させた後、魔法で収納している。
だから釣れた後、また釣り始めるまでの時間が、かなり短く効率がいい。
「でも陽菜も、充分以上の成果。今週の食事が楽しみ」
スルメイカとは明らかに形が違うでっかいイカとか、大小様々なサイズのタコとか、ヒラメやカレイ類やコチ、キスなんて底物の魚とか。
これらが俺用のクーラーボックスでは入りきれないだろう程、釣れている。
「底物やタコは、あまり動かないので狙いやすいのですよ。いずれにせよ、来週にまた挑戦なのです。ということで、そろそろお時間なのです」
つい夢中になって釣っていたけれど、気がついてスマホで確認すると、もう15時28分。
「それでは戻るのです。大広間で愛美姉と結菜姉、メイさんが待っているのです。香里奈さんが目覚めた時にあまり大人数で取り囲むと何なので、最初の説明はカナ姉と衣緖菜さんに任せるそうなのです」
陽菜さんの転移魔法で、合宿場の玄関へ。
そこから広間へと向かう。




