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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第23話 一人回収

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121 事件発生

 衣緖菜に似た、大きい魔力を感じた。

 それに続いて、今度は衣緖菜本人と、あと多分花音さんの魔力。


「行くか」


 そう思わず言って、そして意味がないことに気づく。

 俺が行っても何にもならないだろう。

 この島にいる中では、きっと俺は最弱だ。


「まあそれでも、合宿場に帰った方が状況がわかると思うよ。この後はどうせ予定変更だろうと思うからさ」


 結奈さんがそう言う間にも、魔力の反応が合宿場に移動しているのがわかる。

 なお俺たちは、わざわざ移動魔法を使う必要はない。

 回れ右して歩けば、合宿場はすぐそこだ。


 今回集まったのは大広間ではなく、昨日俺が籠もろうとした和室。

 中央には布団が3枚敷かれ、それぞれに女子が横になっている。


 右側は衣緖菜で、左側は花音さん。

 そして中央に寝ているのは、合宿に参加した俺たち8人以外の、9人目。

 灰色のTシャツとショートパンツという姿の、一見衣緖菜とよく似ているが、やや幼い感じの女子だ。


「説明は少し待って貰えますか。今、カナ姉と衣緖菜さんが複雑な魔法を発動中ですから。詳細は全てが無事済んで、全員揃ってからの方でいいでしょう」

 

 愛美さんの説明で、すぐに理解した

 衣緖菜と花音さんは横になっているけれど、問題があるわけじゃない。

 真ん中に寝ている女子に全力で魔法をかけるため、姿勢などを気にしなくてもいい様に横になっているだけだと。

 

 それでも心配なのは確かだし、何が起こったのかも知りたい。

 中央で横になっているのは衣緖菜の元部下、おそらくは5340112だろうと俺の中の衣緖菜の記憶は判断しているけれど。

 

「とりあえず、この後はこの合宿では、何か起きるということはないのです。カナ姉も衣緖菜さんも、この彼女も無事に目が覚めるのも見えているのです。だからこの場で心配する必要はないのです」


 陽菜さんが、まずはそう宣言。

 俺はとりあえず一安心する。

 大丈夫だろうとは思っていたけれど、それでも。


「私も陽菜と同じように、見えています。目覚めるのはあと2時間くらい後、15時20分過ぎです。ですのでそれまでは、道を作る作業を続けましょう。ただいざという時のために、結奈はここで3人の体調を見ていて貰えますか。あとは私とメイとで南側の道、陽翔と美羽と陽菜で西側の道を整備で。この組み合わせなら、そうかからないで終わるでしょうから。そうしたらまた集まりましょう」


 確かにここで待っていても、あまり意味はない。

 そして愛美さんと陽菜さんが無事目覚めると言っているのなら、信じていいだろう。

 それに陽菜さんは、話を聞きやすい。

 これは年齢差があるからではなく、花音さんや愛美さんはその先のあれこれを考えて、話をごまかすことがあるからだ。

 ごまかすという言い方が悪いとすれば、隠すというべきだろうか。


 一方で陽菜さんは、割と率直にあれこれ言ってくれる。

 そして近未来予知魔法を含む空間操作魔法は、愛美さんと互角かそれ以上に使えるらしい。

 結果として、話してもらいやすいし、聞きやすいというわけだ。


「行こう。とりあえず作業」


 美羽さんの言葉で、俺たち3人は合宿場を出て西側へ。

 南側で俺たちが作っていたのよりずっと道らしい道が、出来ていた。

 幅は1.5mくらいで、道にかかる竹をただ切っただけでなく、簡易舗装っぽい処理までしてある。


「何かこの道、完成度が凄いな。来た時はこんな道、無かっただろ」


「カナ姉と衣緖菜さんが担当。二人ともほぼ全属性の魔法を使いこなせる」


 確かに美羽さんの言うとおりだな。

 そう思いつつ、道を辿る。

 南側の道と比べると、この道は坂がそれほどきつくない。

 しかも整備状態がいいから、非常に歩きやすい。


 できあがっていないのは、最後の5m程度だけだった。

 それすら道の予定地の竹は全て刈り取られ、更には地面を掘り起こして根なども取り除いている様だ。


 とすると、俺たちが出来る工程は……

 衣緖菜の魔法の知識を漁って、とりあえず思いついたのは。


「俺の魔力だと、土を上から叩いて平らにする位だな。あの舗装みたいにするのは無理だ」


「叩いて固めた後、魔法で乾燥させて、高熱で焼いたと思うのですよ。しかし私は愛美姉以上に空間操作専門型で他の魔法は苦手ですし、美羽姉も空間操作以外の魔法は苦手なはずなのです」


「陽翔に土を平らにして貰って、陽菜が乾燥魔法、私が熱魔法をかける。5mくらいなら何とかなる、多分」


 つまり美羽さんも自信はないということだ。

 でもまあ、最善は尽くそう。


「とりあえず、そうしようか」


「仕方ないのです。なら一度海側に降りるのです。下から見る形でやった方がやりやすいのです」


「了解」


 ということで海側へと降りて、海のそばの岩の上から土で出来た坂道を見る形で作業を開始する。

 上から土を叩いて平らにする。

 これは力をかけるタイプの魔法だから、熱をかけるよりは楽。

 そんな作業をしている俺の横で、陽菜さんが呟く様に言う。


「ところで陽翔は何が起きて、そしてあの状況になったのか、知らないと思うのです。違うでしょうか?」


「ああ、その通りだ」


 魔法をかけながら、俺は頷く。


「なら何が起こったのかを、まずは説明するのです。起きることは事前にわかっていたので、遠見魔法で確認しているのです」


 そう言って、陽菜さんは話し出す。 


「13時ちょっと過ぎ、そこまで舗装が完了して、道路のこの部分を切り開いて土中の根を排除したところで。

 カナ姉と衣緖菜さんの前に、あの人を抱きかかえた、衣緖菜さんやあの人とそっくりの人が出現したのです。そして衣緖菜さんにあの人を渡すと、すっと消えたのです」


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