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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第21話 独り言

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112 まずは一匹

 この島は、南側に少し砂浜っぽい場所がある他は、基本的に岩場がメインだ。

 北側はやや岩が大きめで、南側は岩場というよりゴロタ石の浜辺という感じだけれど。

 事前情報によると、どちら側もすぐに4mくらいの深さになっているそうだ。


 さて、今回、俺が選んだ釣り道具一式は、

 ○ 竿:スピニングリールがついた、4mくらいのもの

 ○ 仕掛け:浮き、餌かご、赤い小エビ状の疑似餌がついた釣り針が5本ついた仕掛け、重りという順に繋がっているもの

という組み合わせ。


 この一週間で、主に美羽さんと陽菜さんが調べたところによると、『大きさや魚種を気にしなければ、一番簡単かつ確実に魚が釣れる仕掛け』らしい。


 なお俺は竿と仕掛け一式の他に、クーラーボックスを持ち歩いている。

 クーラーボックスには氷の他、折りたたみバケツと、仕掛けの予備やペンチや軍手、鋏、軍手など、道具一式入り大型タッパー入り。


 俺とメイ以外の皆さんは、魔法収納を使えるから、荷物を持ち歩く必要はない。

 そしてメイは、今回は衣緖菜と組んでいるので、やはりこういった道具を持ち歩く必要はない。

 

 さて、合宿所は島のほぼ中心にあって、周囲を竹藪に囲まれている。

 公園なんかにあるような、整備された竹林を想像してはいけない。

 竹が生え放題に生えていて、下草の笹もこんもりという、素直に歩くのは多分不可能という感じの繁り様だったりする。


 一応、僅かな砂浜があって小舟をつけられる南側へ出られる小道はついている。

 しかし使用者が魔法で移動可能な魔法使いばかりだからか、整備状況は最悪に近い。

 獣道というのもおこがましいような藪の切れ目を、気合い入れて突破していく形だ。


 なお遠見魔法で周囲を確認したけれど、これ以外に本当に道はない模様。

 笹藪の、しかも結構な下り坂を全神経を注いで、慎重に慎重に進んで。

 たまに踏んだ笹の茎で滑りかけたりしつつも、何とか竹・笹藪を超えて岩場へ。

 

 足下を確認して、何となく道というか踏み跡っぽい場所を辿って、やっと海辺へと到着。

 こちらからは海の先、割と近くに別の大きな島が見える。

 そして浜辺には先着1名。これは……愛美さんだな。

 すぐ近くだと危ないしということで、5m程度右側にクーラーボックスを置いて、そして愛美さんに声をかける。


「ここで釣っていいですか?」


「どうぞ」


 ということで、まずは折りたたみバケツを出して、海水を汲んで。

 竿を伸ばし、仕掛けをつけて、餌カゴに半固形の佃煮みたいな餌を袋を絞る感じで入れて、準備OK.

 説明のビデオで見た様に糸を人差し指で固定し、スピニングリールの糸かけ部分を動かして糸をフリーにして、竿を後ろ向きに持っていって、斜めに振り下ろすようにして投げる。


 思ったより右側へ、それも結構近場に着水。

 でもまあ深さはそこそこあるようで、ウキはしっかり立った。

 なら投げ直さないで、ここでいいかと思ったところで。


「本当は投げている間に、風魔法や物を動かす魔法で、重り部分を引っ張って狙った場所に飛ばすなんて魔法の訓練を考えたのですけれどね。初めてですと、仕掛けを投げる動作で精一杯ですね」


 そういえばそんなことを、部室で陽菜さんが言っていた気がする。

 でも確かにそんな訓練、出来る様な余裕はない。

 仕掛けをビデオ通り投げるのが精一杯だ。


 なんて思いながら、愛美さんの方はどうなのだろうと見てみる。

 ウキは真っ直ぐ先、大分遠目の場所に見えていた。


「でも愛美さんのは、まっすぐ遠くまで届いてますね」


「着水してから、ウキを魔法で動かして、沖の投げたかった位置まで移動させました」


 なるほど。


「でもそうすると、餌カゴから余分に餌が出てしまいませんか」


「ええ。ですので最初は餌カゴのスライド部分を閉めて、餌が出ないようにして投げて、完全に移動させてから魔法で餌カゴのスライドを餌が出る位置にしました」


「なら俺も、この次投げる時は、そうやってみます」


 その程度の魔法なら、今の俺は余裕で使うことが出来る。

 今回は餌が勿体ないから、今の場所でそのまま釣るけれど。


 さてということで、海中の様子を遠見魔法で見てみる。

 俺のエサかごから流れたエサに、魚が寄せられてきているのが見えた。

 なら移動や投げ直しをしないで、このまま待っている方が良さそうだ。

 

 そう思ったところで、群れた魚の一匹が妙な動きをした。

 同時に波間に揺られていたウキが沈み込む。

 これは、針に掛かったということだよな。

 そう思いつつ竿を上げたら、確かにぴくぴくする手応え。


 魚そのものは小さいのに、結構引いている。

 それでもリールを巻けないほどではない。

 波にあわせて引っ張り、下の岩に引っかからないよう釣り上げる。


 5本ある針の上から3番目に、手首から小指の先くらいの長さの小魚がかかってバタバタ暴れていた。

 竿を浜辺に置いて、滑り止め付き軍手をはめた左手で掴んで、ペンチで針を外して、バケツに入れる。

 

 餌カゴをあけて、餌を追加し、今度は蓋をしめたまま投げて。

 さっきよりはまっすぐ飛んだので、遠見魔法で海中を確認。

 今の場所より、さっき釣れた手前の場所の方が魚が多そうだ。


 ということで、魔法でウキをゆっくり動かして、先程の位置へ。

 餌カゴをスライドして開けて、次が釣れるのを待つ。


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