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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第20話 合宿開始

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109 温泉確保

 視点からの視界が赤、黄色、緑、青と、かなり派手な表示に変化した。

 確かにサーモグラフィーだな、これは。


 地面がみっちり詰まっていても、30m程度の範囲は見える。

 見ているものが土か砂か液体かなんてのも、表示の具合でなんとなくわかる。


 ということで、視点を移動。

 確か地下300m程度と言っていたよなということで、下へ下へと視点を移動。

 割と近場にも幾つか水を含む砂の層があるけれど、温度が高くないのでパスし、更に下へ。


 地面の境目っぽい場所があったので、そこに沿って更に下へと視点を動かす。

 結構下まで見たかなというところで、やや粗めの砂に水が溜まっている層を見つけた。


 ただその水を含んだ層にも、温度が高い場所と低い場所がある。

 適温の場所は……


「一応見つけた。けれど場所によって、温度が大分違う気がする」


「温度を正確に把握できない場合は、低めのところの方が無難だね。圧力で100℃を超えているのをここに出したら、突沸というか爆発状態だから。温度が低い分には魔法で温めればいい」


 言われてみれば、確かにメイの言う通りだ。

 いきなり突沸なんてさせたら、大火傷ものだろう。


「わかった」


「全員がお湯を確認できた。なら次はお湯を中に入れる。転移でも短絡でも可能だが、大量に持ってくる場合は短絡の方が適している。衣緖菜さん、どう?」


「転移なら簡単。短絡は……出来ないことはない。でも途中で止まりそう」


「なら出来るところまで。そして衣緖菜さんが出来るなら、陽翔もメイさんも、方法は知っているはず」


 美羽さんの言うとおり、転移魔法も、空間短絡魔法も、衣緖菜の知識にある。

 ただ短絡するには距離が遠い。

 俺の魔力では短絡のために、空間を曲げることが出来そうにない。


 なお浴槽には、お湯が入り始めた。

 無色透明で臭いもないけれど、湯気が上がっているし、今の俺の視覚ではそれなりの温度があることもわかる。


 そして俺でも短絡できそうな方法に気づいた。

 今、衣緖菜が短絡をかけているから、空間がその分歪んでいる。

 この歪みを使えば、魔力が低くても何とかなりそうだ。


「衣緖菜の作った歪みを借りるよ」


 メイは、俺より早くこの方法に気付いたようだ。

 出るお湯の量が3割程度増える。

 そしてメイが魔法を使ったことで、空間がもう少し歪んだ。

 この状態なら、俺でも……


 繋がった!

 そう思った瞬間、浴槽に出るお湯の量が増えた。


「OK。なら私と陽菜は調整。陽菜は適宜お湯を転移させて温度調整。目標温度は45℃。入るまでに時間があるから。私は成分を調整する」


「わかったのです」


 空間の復元力は結構強くて、気を抜くと短絡路が塞がりそうになる。

 だから俺は強く強く意識して魔法を使用し、短絡路を維持する。

 他の皆さんの魔法を観察する余裕はない。


 なお俺の短絡路経由で出ているお湯は、概ね水道の蛇口を思い切り捻った程度。

 そこそこ強い勢いの割に絶対的な水量が少ないのは、短絡路が細いから。

 最初に衣緖菜が出したのは数段水量が多かったし、メイも俺より多い水量を出している気がする。


 衣緖菜はともかく、メイよりは俺の方が魔法を使えて当然のはずなのだけれど。

 魔法訓練用の魔力車を使えるし、その気になればすぐに衣緖菜にアドバイスを貰える環境だし。

 この辺は人間としてのスペックの違いだろうか。

 メイは俺と比べると、遙かにできることが多いから。


「訓練終了。湯量はこれだけあれば充分」


 美羽さんの言葉で魔法を止める。

 湯船からお湯が少しあふれていた。

 でもまあ、これくらいなら問題ないだろう。


 メイが浴槽のお湯に手を触れ、そして指についたお湯を舐める。


「うん、ただのお湯とはやっぱり違う。確かに温泉だね、これ」


「この近くの温泉では、肌がすべすべになる効用があるようなのです」


「いわゆる美人の湯と呼ばれているタイプだよね、きっと」


「アルカリ性で肌の老廃物を溶かすという意味」


 なんて3人で話しているのを見て、ふと気付いた。

 今、お湯が入った浴槽のある風呂場に、女子と一緒にいるという状況に。

 もちろん服は脱いでいないから問題ない。

 でも衣緖菜はともかく、陽菜ちゃんや美羽さん、何よりメイが一緒というのが、どうにも……


 なおこの建物には風呂が、この一箇所しかない。

 混浴というのはあり得ないから、俺が入るのは皆が寝静まった後あたりが無難だろう。


 風呂に入らなくても魔法で身体を綺麗にできるから、問題はない。

 しかしせっかく温泉と広い浴槽があるのだから、入らないと損という気がする。

 でも衣緖菜はともかく、メイが入った風呂に入るというのも……

 気にしすぎだとは、わかっているけれど。


「お風呂の支度は終わったし、広間に戻ろうか」


「そうですね」


「同意」


 浴槽の蓋を閉め、ぞろぞろと最初に転移魔法で移動した広い部屋へ戻りつつ思う。

 深く考えたら負けだ。

 ここは何も考えない、気にしないのがきっと正解だと。

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