↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第20話 合宿開始

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
106/129

108 合宿開始

 4月26日金曜日の午後3時40分、いつもの部室。


「これが移動用魔道具なんだ」


 メイが手に持って見ているのは、ぱっと見にはスマホのモックアップっぽく見える物体。

 魔法陣や魔法式を描いたアクリル板5枚を重ね、片面と側方をアルミ板でぐるっとカバーしたものだ。


 転移魔法が使える人がこの魔道具を使えば、移動可能距離が一気に数百倍になるという効果があるらしい。

 なお転移魔法が使えない人には、効果はない。

 つまり俺は、使えない。


「なんと言うか、工場で生産された製品って感じの仕上がりだよね。工作精度も作りも含めて」


「工作系の魔法使い、それもドワーフ系の魔法を使いこなせる人が作ったそうです」


「そんな人も日本にいるの?」


「らしいです。花梨さんから聞いただけで、会ったことはありませんけれども。あと複製防止と使用期限設定の魔法式もかけてあるそうです。それなりに危険な使い方ができますから」


「私も加工系の魔法を一通り使えるんだけど、この精度は無理だね。今回の合宿用に結構あれこれ作ったし、それなりに製作系の魔法にも自信あったんだけどな」


 今の話によると、結菜さんは魔法で物を作ることができるようだ。

 どんなものを作ったんだろう。

 一方で、衣緖菜は別のことが気になったようだ。


「私の知っているものよりずっと小さい上、効果が高い。サラステクスの理論で作った魔道具?」


「理論を構築したのは元フィルメディの一等魔法技術士だと聞いています。こちらの世界に来てから考え出したもので、アトラ世界に同等品は存在していないそうです」


 そう思ったところで、陽菜さんが転移魔法で出現した。


「遅くなったのです」


 中等部1年は、今日は新入生オリエンテーション。

 千葉の山の方へ行って、あれこれ活動してきたらしい。

 ジャージ姿なのは、解散してそのままここへ直行したからだろう。


「陽菜は着替えたり、荷物の用意をしたりしないで大丈夫?」


「問題ないのです。着替えを含めた合宿装備は全部魔法収納に入っているのです」


「それじゃ、移動かな」


 そう言ってメイが愛美さんに移動魔道具を渡す。


「そうですね。合宿場に移動しましょう。念のため、皆さん立ってください」


 これは椅子に座っていた場合、移動後の場所に椅子がないと尻もちをつくから。

 そういった愛美さんを含め、美羽さん以外の全員が座っていた椅子から立ち上がる。


「それでは移動します」


 愛美さんの言葉の1秒後、景色が変わった。

 どうやら玄関に相当する場所のようで、片側に入口があり、靴を脱いで入るような仕組みになっている。


 今いるのは素焼きの陶器みたいな色の床で、上がった先の床や壁、天井は、カーキ色っぽい仕上げのプラスチックっぽい板で仕上げている。


「わっ、焼土床だ。懐かしい」


「壁や天井は植物系の魔法合成材ですね。ここは地震が多い国のようですから、軽量化を意識して作ったのでしょう」


 窓ガラスやサッシ、扉はおそらく日本の既製品。

 でもそれ以外は見慣れない素材だ。

 今の結菜さんや花音さんの言葉からすると、向こうの世界の材料というか、家の様式なのだろう。


「それでは訓練を兼ねた宿泊準備をしましょう。ここのお風呂は地下300m程度のところにある温泉水を、魔法で探知し、転移させて入れる方式です。陽菜、美羽なら余裕でしょうから、今回は衣緖菜、メイさん、陽翔に指示してやってみてください。愛美と結菜は、建物内の掃除をお願いします。私はこの先の広間で、夕食の準備をしますから」


 いきなり難易度が高そうな訓練をやらされるようだ。

 しかし……


「俺は物を転移させる魔法すら、まだ使えないんだけど」


「指導は衣緖菜さんや陽菜、美羽に任せます。一緒にやれば、普段より魔法が使いやすくなるはずです。上手くいけばpH9程度のアルカリ性の温泉が出るはずです。温度調整その他は、適当にお願いします」


 問答無用でやれということか。

 でもまあ訓練合宿だし、仕方ないか。


「愛美と結菜の掃除については、風魔法と水魔法でゴミを集め、火魔法や熱魔法で分解か固める形でお願いします。結菜は一通りできますから、基本的には愛美メインで。

 私はそこのキッチンで、夕食を作っています。材料はある程度狩ってありますけれど、この島で採れる材料もある程度転移魔法などで調達して使用する予定です。

 来てすぐですから、訓練時間は夕食までの30分程度でいいでしょう。食べ終わったら釣りに行くという形で」


 そんな形で、いきなり訓練となってしまった。

 ということで靴を脱いで、俺達は風呂場へと移動。


 風呂場は広い。

 図面で見て知っていたけれど、こうやって実際に見ると改めて広さを感じる。

 湯船だけで六畳間くらいありそうだ。


 北側と東側は北東の柱を除けば広い窓で、全部開ければ半露天に近い開放感がある。

 窓からは海が見えていて、東側には他の島も見える。


 床と壁は素焼きの陶器みたいな赤茶色の材質で、結構高い天井は、先程の部屋と同じカーキ色の不明素材。

 浴槽は黒っぽい艶がある、やはり陶器みたいな材質で、この広い風呂場の7割近くを占める広さだ。


 全体的に色が赤茶だったり黒だったりと馴染みの風呂と違うけれど、なかなかいい感じだ。

 しかし俺が知っている風呂場とは、明らかに何かが違う気がする。

 色と材質以外に何が違うのだろうと俺が思ったところで……


「ここのお風呂には、水道やシャワーが無いんだね」


 メイがそう言ったことで、俺もやっと何が違うか理解した。

 浴槽があるし、洗面器や椅子もあるけれど、水栓とかシャワーなどが一切見当たらない。


「そういえば、そうです。花音姉(ねえ)の農場にはそういったものがありませんでしたから、気づかなかったです」


「サラステクス時代の洗体場と同じ作り。魔法で身体を綺麗にできるから、洗う必要は無い」


 陽菜さんと美羽さんの説明で、とりあえず理解した。


「では温泉のお湯の場所を探す。メイさんと陽翔は、遠くを見たりする魔法、使える?」


 美羽さんがそう質問してくる。

 それは一応、問題ない。


「一応は」


「見るだけなら、私も大丈夫」


 メイも問題なさそうだ。


「ならその魔法で、下方向を見てみる。衣緖菜さんはもう把握済?」


「問題ない。泉源を確認した」


 衣緖菜はもうお湯を発見したようだ。

 でも俺の遠くを見る魔法では、上手くいかない。

 地面の中へ視点を移動させることはできている。

 しかし真っ暗で、何も見えないのだ。


「真っ暗で何も見えないけれど、何か方法があるのか?」


「光が届かないから、視覚は使えない。しかし遠くを見る魔法で、温度も把握可能。温度と強く意識すれば、温度を見るモードに移行する」


 サーモグラフィーみたいなものか。

 そう思ったところで、遠見魔法の視点からの視界が変化した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。