106 ある朝の風景
月曜日、朝。
早速、香取たちに聴取を受ける羽目になる。
「金曜、佐藤さんとあの後、何処へ行ったんだよ。何か仲良さそうだったけど」
まずは香取から、こんな質問だ。
実は金曜だけではない。
土曜には、
○ メイ含めた異世界魔法部総勢6人に家に押しかけられた上
○ 家で合宿の計画を更に詰めたり
○ 昼に花音さんに昼食を作ってもらって全員で食べて
○ その後に必要なものの買い出しに行ったりした
けれど、ここは正直に言わない方がいいだろう。
ということで、あらかじめ考えてあったプラン1で返答する。
「佐藤さんは引っ越す前に通っていた中学校の知り合いで、姉貴の友達。今やっているサークルの活動に名前を借りていたんだけれど、本格的に参加するからって挨拶に来た。それだけだ」
「佐藤さんは飽多出身で、都筑はここが地元だろ」
再び香取から質問、しかしこれは問題ない。
「昨年の7月までは、俺も姉貴も飽多にいたんだ。その時の中学が1学年1クラスしかなくてさ。うちみたいな高校を受験する奴なんて、俺と姉貴とメイくらいだ。必然的に顔も覚えたし話もした」
ほぼ事実だから、問題なく答えられる。
しかし香取はまだ納得しない様だ。
「でもそれなら、サークルには衣緖菜さんが案内すればいいだけの話だろう。わざわざ都筑のところに来て一緒に行くなんて、不自然だと思うが」
これも一応、返答は考慮済みだ。
「あれこれあって、今は部長が俺ってことになっている。そのせいだ」
「何で高等部で入ったばかりの都筑が、部長なんてしているんだ。衣緖菜さんに頼まれて、人数あわせの為に入ったって行っていたと思うが」
よく覚えているな、香取。
これは……こんな感じではどうだ!
「高等部2年生の先輩がいるんだが、身体が弱くてさ。だから部長やってくれと押しつけられた」
花音さんごめん!
そう思いつつ、こういう言い訳で抵抗したところで。
「それでそもそも、都筑がやっているのは何をするサークルなんだ?」
今まで何も言わずに聞いていた長柄に、面倒くさいことを聞かれてしまった。
これは……
「ファンタジー系のロールプレイサークルだ」
「何だそりゃ?」
「ファンタジー系の設定のもと、それぞれ設定通りの登場人物になりきって演技するという内容だ」
以前、課外活動の届け出を書いている時に考えた目的をつい思い出して言ってしまった。
『異世界からの帰国子女というロールプレイを行いつつ交流を深める』
ちょっと酷すぎる内容だと自分で思った結果、没にした目的を元にして。
「何だそりゃ。コスプレか何かか?」
「似たようなものだ。ただ普段はコスプレなしで、あくまで設定だけで演じている。実は魔法少女でこの学校に潜んでいるとか、実は異世界から侵略に来て、学校に拠点を置いて活動を始めたところだとか」
事実が微妙に混じっているけれど、仕方ない。
むしろ事実が混じっている方がリアルだろう。
そう開き直ってしまおう。
「……何というか、怪しい活動だな。意識してやっている中二病みたいなものか?」
あ、香取が何となく理解してしまった。
そういえばこいつ、創作系じゃない方の漫研で、そういった世界も知っているんだった。
なら仕方ない。
「似たようなものだ。流石に『俺の魔眼がうずいているぜ』とまではやったことがないが」
これで何とか誤魔化せただろう。
そう思ったところで、今まで黙っていた長柄が口を開いた。
「ちなみに男女比は?」
それは言えないのがお約束だ。
「ノーコメントで」
「いや、そこが重要だ。魔法少女なんて言っているからには、女子が複数いるのが確実。違うか?」
魔法少女は失言だった。
そう思っても、もう遅い。
こうなったら仕方ない、強硬に拒否だ。
「あくまでノーコメントだ。それに部室で活動できる程度の人数は集まったから、募集は停止した」
「都筑のハーレムの臭いがする。まさか『異世界ハーレム』のロールプレイ中じゃないよな」
香取まで追及してきやがった。
まずい。
「何だそれ」
とっさにそう言い返してみるけれど。
「課外活動棟の部屋をもっていると言う事は、学校公認の活動。そして都筑が部長だってことは、学内ネットで検索すれば出る」
確かに課外活動紹介には、部長の名前とクラスが記載されている。
つまり検索すれば一発だ。
どこぞの三浦と違って、長柄は頭が切れる。
どうしようかと思ったところで……
『心配ない。時間切れ』
衣緖菜の伝達魔法だな、これは。
そう思ったところで授業開始のチャイムが鳴り始めた。
確かにこれで、今は時間切れで逃げ切り成功だ。
しかし次の休み時間があるし、昼休みだってある。
『大丈夫。この授業中に忘れるようにしておく』
助かった。
そう思ったところで、英語表現Ⅰの君津先生が入ってきた。
「起立」
日直の市原さんの号令で、俺達は席を立つ。




