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人生初。悪魔と過ごす休日

「ふわあ〜〜。ねむぅ……」

ピコちゃんを助けた翌朝。

あたしは目をこすりながら、体を起こす。

だって帰ってきたの2時すぎだよ!?そこから寝て、6時に起床。四時間睡眠とか地獄でしょ。

ちなみにピコちゃんは、グレッムの家で泊まることになった。


「おはよう。レミィちゃん」

「ん。おはよ〜霞ぃ。くわあ〜」

「大丈夫?寝不足なの?」

「ん〜。大丈夫、大丈夫〜」

「なら良いんだけど……」

その後は朝食を食べて、出かける準備をした。


せっかく休みになったし、遊びに行っちゃお!

そう思って外に出た、次の瞬間。

「おはよぉ!」

「わっ!」

急に抱きつかれた。抱きついてきたのは―――

「ピコちゃん!?」

「おはよう、金髪のおねえちゃん!」

ピコちゃんがとびっきりの笑顔で出迎えてくれた。

「ちょっ、おま……」

なんか声が聞こえた。声がした方を見ると。

グレッ厶が塀に隠れながら、こっちを見てた。

「なあに〜?グレッ厶〜」

呼ばれたピコちゃんは、不満げに返事した。

「お前っ。いいから、こっち来いっ」

手招きをして小声でピコちゃんを呼ぶ。

「なんでよ〜」

「グレッ厶、何そんなに気にしてんの」

「何って……」


呆れたようにため息つきやがった。

「ここ、タンポポの園だろ?俺らが来るとまずいんじゃないのか」

ああ、なるほど。そういうことね。でも―――

あたしはピコちゃんを見つめる。

「なあに〜?おねえちゃん」

首を傾げるピコちゃん。うん、可愛い。

「この子なら大丈夫よ。変わった服装してるけど」

愛でるために頭をなでなで。

「えへへ〜」

「……」

答えを聞いたグレッ厶は「マジ?」って言いたげな顔をした。


「レミィちゃん。その子、誰?」

「なっ、霞!」

後ろにいたの!?いつの間に。

「え、えっと。この子はね!その―――昨日知り合った子で、最近越してきたばかりなの!」

「そう、なんだ……?」

「う、うん!それで昨日、一人で公園で寂しそうにしてたから。一緒に遊んであげたら懐かれちゃって―――」

「ん?違うよ。ピコがパソコンから出られなくて―――」

「あー!!行こうかピコちゃん!ここで突っ立ってても迷惑だし!」

危ねえぇぇぇ!

あたしはピコちゃんを連れて、逃げるように施設をあとにした。


  △  △  △


焦ってて行き先を考えてなかった。

とりあえず、近くの公園のベンチに座る。

「はあ……」

「おねえちゃん、どうしたの。大丈夫〜?」

ピコちゃんは傍で立って首を傾げる。

「ん……大丈夫。―――てか、名前教えてなかったよね」

そういえば自己紹介してなかった。

胸に手を当て、ベンチから立ち上がる。

「あたしはレミィよ、宵駆レミィ」

「レミィかぁ……じゃあ、レミっちだね!」

ん?レミっち……?

「ピコちゃんってあだ名で人を呼ぶの?」

「うん」


「私にも素敵なあだ名をつけてくれましたよ」

疫病神とグレッ厶が歩いてきた。

「あ!やっくん!」

「やっくん!?」

疫病神のビジュアルに似つかないあだ名だな……。

「レミィもあだ名もらったんだな」

「あ。グレ―――」

言いかけた時。ふと、あることを思い出した。

「ピコちゃん」

「なあに、レミっち」

「さっき。グレッ厶のこと、呼び捨てにしてなかった?」

塀から呼ぶグレッ厶を、呼び捨てにしてたよね?

「なんかぁ、思いつかなかったの」

「そうなんだ」

「まあ、特殊な名前だからな」

グレッ厶はピコちゃんの隣に来た。

「で、この後はどうするんだ」

「どうするって。遊びに行くわよ」

「遊びに?ピコも行きた〜い!」

ピコちゃんは勢いよく、あたしに抱きついた。

「うわっ!―――ふふ、ピコちゃんも行く?」

「うん!」


「レミィさ〜ん」

疫病神が肩を叩いて呼んできた。

「そんなはしたない格好で、どこに行こうと言うんですか」

「―――はあ!?」

はしたなくなんて無いし!!

疫病神はあたしの肩をゆっくり、指で撫でる。

肩を出すタイプの服だから、気味悪い感触が伝わってくる。

「それやめろ、気持ち悪い!」

「ククッ。スカートもそんなに短い物を―――」

視線を下げて、あたしのミニスカを見つめてくる。

目元に皺がよって、ニヤリと卑しい顔をしてる。

(キモすぎる……!)

嫌な気持ちが強くなりすぎたのかな。

気づいたら、疫病神の顔を掴んでた。


「ジロジロ見んじゃねぇよ……!」

自分でも驚くくらい、低い声だった。

「レミっち……?」

ピコちゃんの声が震えていた。

「あ。ごめんね。大丈夫、ピコちゃんに怒ってるわけじゃないから」

「うん……」

大丈夫だと言ったけど、俯いちゃった。

「はいはい。分かりましたから、離してください」

一方、疫病神はあたしの怒りを軽くあしらってる。

「次こんなことしたら、マジで殺すからな」

手を離すついでに、指を差して警告する。

「分かりました。あーこわい、こわい」


なんだよその態度。最後までナメやがって。

でも、ここでキレたらピコちゃんを怖がらせちゃう。

「ふぅ―――よし。気持ち切り替えた」

せっかくの休みなんだから、楽しい気分でいないと。

それじゃあ行こうか、アポロンストリートへ!


  △  △  △


あたし達はアポロンストリートにやって来た。

まあ、ただのショッピングモールだけどね。

でも、ここに来れば。ほとんどの物が揃う。

スーパー、コスメショップ、薬局、美容院、ゲームセンター、おもちゃ屋、服屋、靴屋、本屋、雑貨屋、レストランとかがある。

三階建てで、最上階は映画館になってる。


「ここで分かれよう。あたし達は二人で遊んで来るから」

駐車場の一角。木が植えてあって、周りから見えにくい、この場所。

ここでグレッ厶と疫病神の二人に、離れる旨を伝えた。

「俺達は留守番かよ」

「別にそうは言ってないじゃん。入りたかったら、二人で入ればいいし」

「二人で……か」

グレッ厶は疫病神の方を横目で見た。

「どうかしましたか」

「いや、何でもない」

あたしとピコちゃんは、そんな二人のやり取りを気にせず中に入った。


(より子さんからお小遣いもらったし、服とかコスメとか買っちゃおうかな〜)

あれを買おうか、これを買おうかと思考を巡らせる。

ふと、周りの視線が気になった。

なんか皆、こっち見てない?いや、正確にはあたしの少し右―――ピコちゃんを見てる。

あたしも釣られるように右を向く。

「ん?レミっち、どうかした?」

何で皆が見てくるか分かった。

ピコちゃんは銀色の輝くワンピースを着てる。

全身にスパンコールつけてるのかってくらい輝いてる。

足には黒いロングブーツ。

なんていうか……すごい独特なコーデ、よね。

これだと目立っちゃう。あんまり良くない方で。


「ピコちゃん。せっかくだから、着替えない?」

「え〜?でもピコ、これ以外お洋服持ってないよ」

「大丈夫。今から買えばいいんだから」

「あー!そっかぁ」

あたしとピコちゃんは服屋に向かった。


「ピコちゃんはどんな服が好きなの?」

「どんな服って」

「んー。例えば、ガーリーとかクールとかパンクとか。そういうジャンルは?」

「ん〜……」

ピコちゃんは服を見ながら考え始めた。

「これ!」

ピコちゃんが指差したのは、紫のパーカー。

「他は」

「ん〜。じゃあ、これも」

次に指差したのは、黒いワンピース。

「ピコちゃんってワンピース、好きなの?」

「着やすいし、脱ぎやすいから」

ん〜。まあ、上下くっついてるわけだから。

シャツとスカートのセットで着るよりは、速く着られるかもしれないけど。

あたしはワンピースとパーカーを買った。


早速トイレで着替えてきてもらう。

2分くらい経って。ピコちゃんがトイレから出てきた。

見た感じ、さっきよりずっと良いと思った。

でも。まだ一つ問題点が―――

あたしは視線を少し下げた。

目に入るのは、ロングブーツ。

それがまだ、人目を惹いてしまう。

このコーデとも合わない。

「ねぇ、ピコちゃん。靴も変えない?そのロングブーツ、今のコーデと合わないっていうか……」

「そっかあ〜」

あたし達は靴屋に向かった。


到着。ピコちゃんが唸りながら、靴を見歩く。

「ねぇ〜レミっちぃ。どんな靴が良いと思う〜?」

「え。え〜っと―――」

まさか質問されると思ってなかった。

あたしは見渡して、良さげな靴を探す。

ピタッと、目についたのは黒いスニーカー。

「これはどう?」

手で持って、見せてみる。

結構、無難なチョイスをしたと思う。

これだったら大抵のコーデに合うし、機能性もあるからね。

「おお!良いかも!履いてみよ〜」

椅子に座って、そのスニーカーを履くピコちゃん。

履き終わって立ち上がる。

うん。悪くない。

とりあえず見た目の問題は解決した。


ついでに白いショートソックスも買って、ピコちゃんは新しい姿になった。

ちなみに最初に着てた服は紙袋の中。

どうするかは後で考えよう。


「この後はどうするの〜?」

「ん。んん〜。まだそれは考え中―――」

「ん?わあ!ゲーセンだぁぁぁ!!」

ピコちゃんが先に走って行っちゃった。

「え?ちょ、ピコちゃん!」

追いかけて。着いたのはゲームセンター。

「おお〜!!このクレーンゲーム、すごぉぉい!大きいし、ピカピカしてる!」

ピコちゃんは目を輝かせてる。

「ゲーセン好きなの?」

「うん!でもなんか。前見た時とは変わってるかも。クレーンゲームなんて、前はもっと地味だったのに」


そう言って、じっと目の前のクレーンゲームを見つめる。

それを遊んでる男の人がチラチラこっちを見てくる。

見られると遊びづらいわよね……。

「あ。ピコちゃん。見てると迷惑だから離れようね」

あたしが離れるよう諭した、その時。

「は?この俺が見られながらじゃ、取れないと思っているのか?ナメるなよ」

その男が急に話しかけてきた。

なんか、怒らせちゃったみたい……?

て、いやいや。あんた、こっちチラチラ見てたよね?

それって『迷惑です』って間接的に言ってない?


「いや、あの。あたし達のこと、気にしてましたよね?こっち見てましたし」

初対面だから、もちろん敬語を使う。

ただし、キレたら即タメ口。否、暴言。

「いや。迷惑だから見ていたんじゃない。その女が()()だからだ」

「は……?」

ピコちゃんを指差しながら男が言った言葉。

それは予想だにしなかった言葉だった。

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