表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

謎の男の正体は

「あんた、今なんて」

「だから。その女は悪魔だ」

聞き間違いじゃなかった。

この男、ピコちゃんが悪魔だって気づいてる。

「あんた……何者……?」

若干睨みつけながら問う。

男は黒いパーカーを着て、フードを目深に被ってる。

そのせいで顔が見えない。


「さあな。何者なんだろうな」

そう返して、男はフードを少しずらした。

そうして見えた男の顔。

金髪に赤い瞳。それになかなか整ったイケメン。

ニヤリと不敵に笑う男。その口元に鋭い牙がある。

「人間じゃないでしょ」

「知りたいか?だったら―――」

男はゲームセンターの奥に進んで、手を招いてきた。

「ついてこい」

何なのこいつ。なんか余裕そうなところがムカつく。

あたしは少し苛立ちつつ、男についていった。


「これで俺に勝ったら教えてやるよ」

男が指差したのはアーケードゲーム。

どこにでもある、レースゲームのやつ。

「ふーん。そのゲームでいいんだ?」


ナメてんじゃねぇよ。あたしだって、そのゲームは結構やってきたんだからな。

あたしは、今まで戦ってきた相手に全勝してる。

まあ、霞とか角山とか。あんまりゲームしない相手ばっかりだけどね!


「ほおう。かなり自信があるようだな」

「あんたこそ。余裕でいられるのも今のうちだからね」

各々、ゲーム機に付属してる椅子に座り、コインを投入。


画面の中の信号が赤く灯り、一斉に青に変わる。

レースが始まった。

アクセルを踏んで発進させ、まずは直線を進む。

次に曲がりくねった道を突き進む。

チラチラと男の操作している車が見える。

(抜かれてたまるか……)

さらにアクセルを踏み込み、スピードを上げる。


すると、急にカーブが現れた。

(うわっ!マジか……)

スムーズに曲がれるよう、スピードを落とす。

そうすると当然、上手くスピードを調整していた隣の車に抜かれる。

「あまりやってないんだな、このゲーム」

煽るように男が話しかけてきた。

黙れよ!こっち集中してんだから!

「話しかけないでくれる?集中してんの」

「集中する必要があるんだなぁ―――」

フッと、男はあたしを鼻で笑った。


(ナメんじゃねぇよ……!)

カーブを曲がってから、スピードを上げる。

だけど、少し先にある男の車には追いつけない。

追いつけそうなのに。抜かすあと一歩手前で、急にスピードを上げる。

……バカにしてんだろ、こいつ!!

「クソっ……!」

悔しくて、ハンドルを握る手に力が入る。


再びカーブ。

内側に攻めて、曲がる距離を縮める。

ハンドルを回し、スピードを調整する。

ガードレールにぶつかることなく、スムーズに曲がれた。

「ふぅん。ちょっとはやるようだな」

でも。それでも男の車を抜かせなかった。

「くっ……」

「次のカーブを曲がったらゴールだぞ?それまでに俺の車を抜かせ―――」


そこまで言いかけて。男が突然、固まった。

肩をびくりと震わせ、ハンドルから手を離した。

横目で男を見ると、唇を微かに震わせて、額から汗をダラダラ流してる。

(急にどうしたの……?)

訳が分からなかった。でも―――

「チャンス!」

そう。これはまたとない、最大のチャンス。

ここで一気に追い抜かす!


あたしは力いっぱいアクセルを踏み込む。

最後のカーブもぶつからずに曲がり切る。

そして最後の直線。そのままの勢いで突き進んで―――ゴール!

「よっしゃあああ!勝ったぁぁぁ!!」

椅子に座ったまま、ガッツポーズをした。

男は最後まで固まったままだった。


「レミィさん、おめでとうございます」

斜め後ろから、よく聞く声がした。

「あれ。いたんだ」

疫病神が、男の椅子の後ろにいた。

「いつからいたの?」

「少し前からです。レミィさんが、ゲームでボコられてる姿を見たいなぁと思いまして」

「ボコられてねーし!勝ったし!」

本当にこいつは、いつもぉ……。


ダンッ―――!

突然、鈍い音が聞こえた。

男がハンドルに両の拳をぶつけたみたい。

「ふざけるなよ……こんな勝利は認めない……」

男はあたしを睨みつけてきた。

その目には強い敵意と恨みが見てとれた。

いや『こんな勝利は認めない』って。


「あんたが勝手にハンドル離したのが悪いんでしょ。てか何で離したわけ?」

本当にそれだけ謎。

「そいつが、そいつが来さえしなければ!俺が勝ってたんだよぉ!!」

男は疫病神を指差して叫んだ。


「何でやく―――こいつが来たせいで、あんたが負けたことになるのよ?あんたの自業自得じゃないの?」

「違う!そいつの異常な魔力量に、体が反応して―――そもそも何で、こんな化け物が人間とつるんでるんだ!」


男は次にあたしを指差した。

「別にそれはあんたに関係ないでしょ」

「ぐぅ―――。ともかく!俺はこんな勝利は認めない!この借りは必ず返す。覚えておけよ!」

男はそう捨て台詞を吐いて、去って行った。


「行っちゃった……」

「あのお兄ちゃん、ウソつきぃ。正体教えるって言ったのにぃ〜」

後ろでピコちゃんが頬をぷくーっと膨らませる。

あ。そういえば、そういう条件だった。

「あいつ、約束破りやがった―――!」

「そんなこと約束してたんですか?」

疫病神が少し驚いたような顔で聞いてきた。

「まあね。逃げられちゃったけど」

あたしはため息をつきながら、椅子から立ち上がる。


「せっかく久々の曇りで遊びに来たのに。好きなゲームで負けて頭に来たんでしょう」

ん?久々の曇り……?

「どういうこと?」


「彼は吸血鬼です」

「は!?」

吸血鬼!?

「え。吸血鬼ってあの?」

「はい。あの、人の血を吸う、日光とニンニクが苦手な」

「マジかよ……」


吸血鬼もいるんだ……この世界。

「彼、魔力を感じ取る能力が優れているようですね。その結果。私の魔力を感じ取って、体が強張ってしまったようです」

「それでハンドルから手を離しちゃったの?」

「その通り。大正解ですよ、ピコピーノさん」

「いえーい!」

手を上げて、大喜びするピコちゃん。


「お〜い、いつまでゲーセンにいるつもりだよ」

外から、これまたよく聞く声がした。

ゲーセンから出ると。そこにいたのは―――

「え……誰?」

一人の男だった。黒目で目つきが悪い、黒い短髪。

服装はただの黒スーツ。

「俺だよ、グレッムだよ」

「グレッム!?」

いや、普通の人間にしか見えないんだけど!?

確かに声はグレッムだけどさ。

「人間に見える幻想魔法ですね」

後ろから疫病神が解説してくれた。

「グレッムなの?なんか、人間さんみたいだね」

ピコちゃんも人間姿のグレッムに驚いてる。

「そう見えるってだけだ」


グレッムはあたしに近づいてきた。

「で。この後はどうするんだ」

「え〜。それがノープランで―――」

すると、誰かのお腹が鳴った。

音のした方を向く。

「えへへへへ〜―――」

ピコちゃんが顔を赤くして、はにかんでた。

「お腹空いちゃった!お昼ご飯にしようよ〜」

腕時計を見ると、もう午後1時回ってた。

「それもそうね。お昼にしようか」


  △  △  △


フードコートで昼食をとる。

ピコちゃんの希望に合わせて、ハンバーガーにした。

「あれ。疫病神は頼まないの?」

疫病神は注文する前に椅子に座ってた。

「レミィさん。私の主食が何か、忘れたんですか」

あ……。こいつの主食、死骸だった。

「え。てか、こういうの食べられないの?」

「こういうの―――調理された人間の食物、ということですか」

「うん」


疫病神は首を横に振った。

「食べられません。というか、食べない方がいいです。必要以上にエネルギーを得てしまうので」

「そしたら、どうなんの?」

「魔法が誤作動したり、体がまともに働かなくなったり。最悪、爆発します」

爆発……!?

「マジ……!?」

「はい。私に必要な分は、死骸そのものにこびりついているような、残りカス程度のエネルギーなのです」

「そうだったんだ……」

(疫病神、ちょっと生きづらそうだな……)

話を聞いて、あたしはそう思った。


椅子に座って、各々が注文した物を食べる。

「んふふ。久々のバーガー、おいしー!」

ピコちゃんは口の端にケチャップをつけて、満面の笑みを浮かべている。

「おい、ピコピーノ。ケチャップ付いてるぞ」

グレッムが紙でピコちゃんの口を拭く。

なんかグレッム、お兄ちゃんみたい。

「グレッム〜。ポテトちょーだい」

「は?お前も頼んだだろ―――っておい」

答える前に。ピコちゃんは数本、ポテトを持ってった。

「おいし〜い!」

「全く、もう―――」

グレッムはため息をついて、額を押さえた。


昼食を終えて。

(この後はどうしようかな……)

もうプランとかないのよね。本当にどうしよう。

「映画とか見るか?」

「おお〜映画かぁ。ピコ、今の映画がどれだけのものか見てみた〜い!」

「なんか上からだな―――」

ということで、四人で映画を観ることになった。

ショピングモール編、思ったより長くなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ