56話 二人の新たな仲間
放課後、俺は三千なにがし君を使って、1年生の二ノ宮親衛隊兼風紀委員のあの二人組を生徒会室に呼び出した。 三千なにがし君を仲介したのは、副会長が風紀委員会の活動行使権を持っているからだ。
「まあ、ボッチと言えばボッチですね。 あの人自身馴れ合おうとしないですし 」
楓と同じクラスである彼女らを呼び出したのは、クラス内の楓の現状を教えてもらう為。 俺はその辺りは何も知らないし、下手に手の出せない場所だ。
「そうなのか? 転校生っていうと、物珍しくてワイワイやるとか…… 」
「リア充ですね会長は。 そんなのドラマの中か、よほど美男美女しかあり得ません。 バカですか? バカですよね? バカと言ってください 」
おぉ…… 憎しみたっぷりだよ…… まぁいいけど。
「自己紹介から失敗してましたね、あのお…… 人は。 ボソッと一言『よろしく』なんて言ったって、誰も食いついて来ません 」
え? そんなキャラだったか? アイツ。
「一部の男子にはウケたみたいですけど、女子はドン引きです 」
「…… 何かしたのか? かえ…… 鳥栖 」
つまらなさそうにショートカットの髪を弄りながら片割れが口を開いた。
「蘭島君を冷たくあしらったのが効いてますね。 会長も知ってるでしょ? 1年C組委員長の蘭島君 」
「…… 知らね 」
「「はあ!? 」」
二人に物凄い剣幕で睨み付けられた。 いや、知らないものは知らないし……
「イケメン委員長の蘭島君ですよ!? 」
「星院祭対抗バトルにも出てたじゃないですか!! 会長の目はどこまで節穴なんですか!」
そこから始まった彼女らの噛み付きそうな勢いの説明に、俺の体は徐々に仰け反っていく。 唾飛んでますよ君たち……
「わ、わかったわかった! 君達はその蘭島君ファンなんだ 」
「「私達は二ノ宮親衛隊ですよ!? バカにしないで下さい! 」」
ハモるんかい! どうやら地雷を踏んでしまったようで、しばらく蒼仁先輩への情熱と忠誠心話に付き合う羽目になった。
「それで、その蘭島君を軽くあしらったのを面白く思わない女子達が、副会長をボッチに追い込んでいるわけだ 」
「鳥栖さんも引かないんですよね。 一ノ瀬さんが文句をつけに行っても全然動じないんだもん 」
「一ノ瀬? 」
ショートカットの方が苦笑いでため息をつく。 『なんにも知らないんですね』と言われても、下級生の事に興味はないからなぁ。
「クラスのお姉さま的なお嬢様ですよ。 私達はあまり構っていませんが、当たり障りなく付き合わないと面倒くさいんです 」
はあ、どこかで聞いたような事象だな。
「一部の男子っていうのは? 」
「アンチ蘭島の面子ですね。 数人ですけど、『女神降臨』なんて言って毎日のように端から眺めてますよ。 気持ち悪いったらありゃしない! 」
「…… 君達は? ぶっちゃけ副会長をどう思ってる? 」
二人はお互いに顔を見合わせて首をひねった。
「別に。 可愛いなとは思いますけどちょっと影のある人かなって。 二ノ宮親衛隊にも誘ってみましたけど、スッパリ断られましたし 」
ショートカットの方はそう口を尖らせていたが、ロングの髪の方は俺の顔をじっと見ていた。
「まさか会長、私達に副会長の護衛をしろとは言いませんよね? 」
察しがいいのは助かるけど、そこまで深くは考えていない。
「そうじゃない。 見ている中でケンカになりそうだったら止めて欲しいだけなんだ。 俺が休み時間毎に行くより自然だろ? 」
「…… 意外に頭いいんですね 」
意外は余計だ! 悪かったな、頭悪そうに見えて。
「いいですよ、休憩時間毎に会長が来るのは見張られているようで雰囲気が悪くなりそうですし。 これで貸し借りなしってことで手を打ちます 」
「貸し借り? なんか貸したか? 」
「公開処刑で助けてくれたじゃないですか。 もう忘れたんですか? 」
言うんじゃなかった、という表情でチッと舌打ちをしたのは
ロングの方。 それを注意したのはショートカットの方だ。
「あれはホントに終わったと思いました。 会長がいなかったら、私は学校を辞めていたかもしれません…… 不服ながら、カッコいいと思っちゃいました 」
「不服にも、ね。 別に貸しにしたつもりもないし、恩義に感じることもないよ 」
「…… なんですか、シスコンですか? 可愛い私達を妹でもするつもりですか? 」
「俺の妹は菜のはだけだ! 」
彼女らは俺をからかって満足したのか、ケラケラと気持ちよく笑った。 自分で可愛い言ってんじゃねぇよ! まあ笑顔は可愛いけど。
「まあ何でもいいけどな、楓をちょっと気にかけてやってくれ。 見た目よりも打たれ弱い奴だから 」
二人の笑い声がピタッと止まる。
「ひとつ聞いていいですか? 」
「ん? 」
「鳥栖さん、って会長の何なんですか? 」
突然そんなことを聞かれてもな……
「友達だよ。 友達は放っておけないだろ? 出来れば君達にも友達になってもらいたいんだけど 」
無理かなと思うけど、クラスに1人二人くらいは仲間が出来て欲しかった。 彼女らは『善処します』と一礼して去っていく。
「紫苑、うまくいってるのかな…… 」
今頃紫苑は、楓と友達になる為に真っ向勝負を挑んでるんだろう。 とっておきがあるとは言っていたけど、何をするのかは知らない。
「ボーッとしてどうしたんだい? 」
ノックなしに生徒会室に入ってきたのは蒼仁先輩だった。
「どうだい? 調子は 」
それは生徒会長としてだろうか? それとも楓の事だろうか? どちらにしても、『まだまだです』と答えておく。
「まあ焦らないことだね。 みどりの方も、今のところは動きがないらしい。 佐伯君が声を掛けられたという雑貨店を中心に歩き回っているが、ナンパはされるがそれらしい連中は見当たらないそうだ 」
「先輩、吹石先輩は大丈夫なんですか? 」
俺の言葉にクスクスと笑う蒼仁先輩は、『失礼』と笑いを堪えながら表情を直す。
「彼女なら心配いらないよ。 合気道と薙刀の師範代クラス、と言えば安心してくれるだろうか? 」
「うぇ!? でも相手は大勢の男ですよ? 」
「10人がかりでもみどりは平気だろうね。 最近暴れ足りないから余計かも 」
おいおい……
「吹石先輩って何者ですか? 」
「なに、可愛い僕の婚約者だよ 」
ワケわかんねぇよ吹石家! いや、平然としている二ノ宮家もわかんねぇ……




