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戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
一章 風結 かぜゆい

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19 風結ノ章 十九

「嘘でしょーーーーーっ!!」

皆秀は柱に縛られたまま叫ぶ。


「ついさっき、言ったばかりなのにぃ!?”おいて逃げるくらいならここには来ない!”って、言ったのにぃ!?」


がらがら!

「ひぃええええっ!?」

どうん!!

「うわぁあああっ!?」

ばらばらばらっ!!

「うっひゃあああああっ!?」


瓦礫が落ちてくるたびに皆秀の絶叫が続く。


「あの筋肉爺きんにくじい!化けて出てやる!!」


「・・・・誰が筋肉爺だって!?」


「お、親方っ!?」

「さっき、来る途中にのみが落ちていたのを思い出したんでな。取りに行っていた」

「お、親方・・・・」

「よし、切れたぞ!」


皆秀を縛っていた縄がはらりと落ちる。


「お、親方ーっ!!」

重蔵に縋りつく皆秀。

「ともかくここを離れるぞ!」


「へぇ・・・・・い!」

涙でぐしゃぐしゃの顔を重蔵に向ける皆秀。



・・・・・・みっともねぇ顔だな、まったく。







「嶺巴!門が崩れる!」

天上が落ちて地面で粉々に崩れる。


「そろそろ逃げないと!!」

嶺巴も紅鎧二式を避けながら、落ちてくる瓦礫を気にしている。


「逃がすかーっ!!」

佐伯の紅鎧二式はその素早い動きで出口に先回りする。


反対側の出口はすでに、落ちてきた瓦礫で埋まってしまった。


ずうん!!

がらがらがら・・・・・。


「ちょっと、やりすぎたねぇ・・・・」

「おれも、そう思うよ」


佐伯は完全に我を見失っているようだ。



「絶対許さん!!絶対にぃ!!許さんっ!!」



門の建物全体が揺れ始めた。


広間の中央にある太い柱。

今はあの一本でこの門を支えているようなものだ。

あれが折れたら、一気に崩れ落ちるだろう。



その柱も、メキメキと音をたて始めている。


逃げる出口は、紅鎧二式が立ちふさがっている左右のあの隙間。

もたもたしていると、その隙間も瓦礫で塞がってしまう。


「嶺巴、あの赤い球の左右を二人で同時に抜けよう。もうすぐあの柱も折れる!」

「わかった!やるしかないね!」


ふたりは身を低くして構える。


「いくぞ、三!」


ばらばらと瓦礫が落ちてくる。


「二!」


ふたりの頭の上にも埃が降ってきて、白く積もりだす。


「一・・・・・」


「絶対に逃がさんぞおっ!!」

紅鎧二式がその短い腕を左右に広げる。



「行けーっ!!」


白結丸と嶺巴は叫ぶと同時に紅鎧二式へ向けて走り出す。


「来い!!踏み潰してくれる!!」


佐伯が叫ぶ。



白結丸は右。

嶺巴が左。


二手に分かれる。


佐伯はその瞬間、どちらを捕まえるか迷った。

そこに一瞬の隙ができる。


ふたりはその横を通り抜け、中庭に・・・・。





どおおおおおん!!


「うわっ!?」


中庭が見えた直後。

二人の眼前に大きな瓦礫が落ちてきた。


ずうううん!!

瓦礫は大きな風を巻き起こしてばらばらに砕け散る。


その落下した瓦礫の巻き起こす風で二人は吹き飛ばされる。

「うわぁつ!?」


「なんだぁっ!?」

紅鎧二式も煽られて転がる。


白結丸と嶺巴は地面に叩きつけられる。

「ぐはっ!!」

「いったーい!!」


紅鎧二式はごろごろと転がって、中央の太い柱にぶつかる。


がつっ!!


・・・・メリメリメリ・・・・・。


「くっ、出口が!?」


白結丸が何とか立ち上がると、唯一の出口が瓦礫に塞がれている。


「しまった!出口が!!」


「は、白結丸!!」


唯一、門を支えていた太い柱。

紅鎧二式がぶつかった辺りから、メリメリと亀裂が走る。


ゆっくりと、柱が傾き始める。


「まずい!どこか、出口はっ!!」


白結丸があたりを探す。



そこへ、暗い広間の中に、明るいところがあった。


・・・・光がさしてる!?


そこの天井を見上げる。


屋根と天井が崩れ落ち、ぽっかりと穴が開いている。


そこから外の夕陽が入り込み、地面を照らしている。



「嶺巴、あそこに穴がある!飛ぶぞ!!」


「え!?」



白結丸は嶺巴の体を両腕で抱きかかえる。

そしてそのまま地面を蹴って走り出す。


「ちょ、ちょっと!!」

「暴れるな!落ちる!」




メリメリメリ・・・・・。

べきっ!!



その瞬間、柱が折れた。





・・・・・・・。


どおおおおううううん!!






支えられていた二階、三階が一気に崩れ出す。


どどどどどど!!


嶺巴を抱いて飛び上がる白結丸。

その目指す穴のまわりが次々と崩れ落ちる。



「届けーっ!!」



あと少し・・・・・!





天井まで・・・・、






届かないっ!!






白結丸は嶺巴の体を空中で投げる。


「白結丸っ!?」



投げ出された嶺巴は天井の穴を抜けて外へ浮かぶ。




「嶺巴・・・・・・・っ!!」

「は、白結丸ーっ!?」





白結丸へ嶺巴が手を伸ばす。




宙にあがっていく嶺巴。

勢いを失って落ちていく白結丸。



ふたりの距離は離れていく。



それでも必死に手を伸ばす嶺巴。



届くはずもない。




「白結丸ーーーっ!!」


崩れ落ちる羅城門の中へ落ちていく。

















ひゅっ。


何かがしなる音がした。














ずうううううんん!!



がらがらがら!!



どおおおおん!!



「ひ、ひやああああああっ!!」

佐伯の叫びが、崩れ落ちる瓦礫の音にかき消された。








そして辺りには轟音が響き、羅城門が崩れ落ちた。












・・・・・・・・・・・・・。










・・・・・・・・・・・・・。










静寂があたりを包む。


「・・・・・これは、どういう?」

白結丸があたりをみる。


「ええと、助けられた・・・ようだね」

嶺巴も、良くわからない顔で言う。




崩れた羅城門の瓦礫の上。

白結丸と嶺巴の体は、鎖でぐるぐる巻きになっていた。


そして、そばにはカシャカシャという音がしている。



「・・・・こいつに、助けられたのか」

一気に力が抜ける。


小御体・・・・。


そこに人が作った蜘蛛のような六本足があった。



「ああ、もう駄目と思ったよ・・・・。助かった、ありがと!」


そう言う嶺巴の体を、小御体はぎゅっと抱きしめる。




「あ・・・・・」



嶺巴の顔が引きつる。



「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

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