19 風結ノ章 十九
「嘘でしょーーーーーっ!!」
皆秀は柱に縛られたまま叫ぶ。
「ついさっき、言ったばかりなのにぃ!?”おいて逃げるくらいならここには来ない!”って、言ったのにぃ!?」
がらがら!
「ひぃええええっ!?」
どうん!!
「うわぁあああっ!?」
ばらばらばらっ!!
「うっひゃあああああっ!?」
瓦礫が落ちてくるたびに皆秀の絶叫が続く。
「あの筋肉爺!化けて出てやる!!」
「・・・・誰が筋肉爺だって!?」
「お、親方っ!?」
「さっき、来る途中に鑿が落ちていたのを思い出したんでな。取りに行っていた」
「お、親方・・・・」
「よし、切れたぞ!」
皆秀を縛っていた縄がはらりと落ちる。
「お、親方ーっ!!」
重蔵に縋りつく皆秀。
「ともかくここを離れるぞ!」
「へぇ・・・・・い!」
涙でぐしゃぐしゃの顔を重蔵に向ける皆秀。
・・・・・・みっともねぇ顔だな、まったく。
◇
「嶺巴!門が崩れる!」
天上が落ちて地面で粉々に崩れる。
「そろそろ逃げないと!!」
嶺巴も紅鎧二式を避けながら、落ちてくる瓦礫を気にしている。
「逃がすかーっ!!」
佐伯の紅鎧二式はその素早い動きで出口に先回りする。
反対側の出口はすでに、落ちてきた瓦礫で埋まってしまった。
ずうん!!
がらがらがら・・・・・。
「ちょっと、やりすぎたねぇ・・・・」
「おれも、そう思うよ」
佐伯は完全に我を見失っているようだ。
「絶対許さん!!絶対にぃ!!許さんっ!!」
門の建物全体が揺れ始めた。
広間の中央にある太い柱。
今はあの一本でこの門を支えているようなものだ。
あれが折れたら、一気に崩れ落ちるだろう。
その柱も、メキメキと音をたて始めている。
逃げる出口は、紅鎧二式が立ちふさがっている左右のあの隙間。
もたもたしていると、その隙間も瓦礫で塞がってしまう。
「嶺巴、あの赤い球の左右を二人で同時に抜けよう。もうすぐあの柱も折れる!」
「わかった!やるしかないね!」
ふたりは身を低くして構える。
「いくぞ、三!」
ばらばらと瓦礫が落ちてくる。
「二!」
ふたりの頭の上にも埃が降ってきて、白く積もりだす。
「一・・・・・」
「絶対に逃がさんぞおっ!!」
紅鎧二式がその短い腕を左右に広げる。
「行けーっ!!」
白結丸と嶺巴は叫ぶと同時に紅鎧二式へ向けて走り出す。
「来い!!踏み潰してくれる!!」
佐伯が叫ぶ。
白結丸は右。
嶺巴が左。
二手に分かれる。
佐伯はその瞬間、どちらを捕まえるか迷った。
そこに一瞬の隙ができる。
ふたりはその横を通り抜け、中庭に・・・・。
どおおおおおん!!
「うわっ!?」
中庭が見えた直後。
二人の眼前に大きな瓦礫が落ちてきた。
ずうううん!!
瓦礫は大きな風を巻き起こしてばらばらに砕け散る。
その落下した瓦礫の巻き起こす風で二人は吹き飛ばされる。
「うわぁつ!?」
「なんだぁっ!?」
紅鎧二式も煽られて転がる。
白結丸と嶺巴は地面に叩きつけられる。
「ぐはっ!!」
「いったーい!!」
紅鎧二式はごろごろと転がって、中央の太い柱にぶつかる。
がつっ!!
・・・・メリメリメリ・・・・・。
「くっ、出口が!?」
白結丸が何とか立ち上がると、唯一の出口が瓦礫に塞がれている。
「しまった!出口が!!」
「は、白結丸!!」
唯一、門を支えていた太い柱。
紅鎧二式がぶつかった辺りから、メリメリと亀裂が走る。
ゆっくりと、柱が傾き始める。
「まずい!どこか、出口はっ!!」
白結丸があたりを探す。
そこへ、暗い広間の中に、明るいところがあった。
・・・・光がさしてる!?
そこの天井を見上げる。
屋根と天井が崩れ落ち、ぽっかりと穴が開いている。
そこから外の夕陽が入り込み、地面を照らしている。
「嶺巴、あそこに穴がある!飛ぶぞ!!」
「え!?」
白結丸は嶺巴の体を両腕で抱きかかえる。
そしてそのまま地面を蹴って走り出す。
「ちょ、ちょっと!!」
「暴れるな!落ちる!」
メリメリメリ・・・・・。
べきっ!!
その瞬間、柱が折れた。
・・・・・・・。
どおおおおううううん!!
支えられていた二階、三階が一気に崩れ出す。
どどどどどど!!
嶺巴を抱いて飛び上がる白結丸。
その目指す穴のまわりが次々と崩れ落ちる。
「届けーっ!!」
あと少し・・・・・!
天井まで・・・・、
届かないっ!!
白結丸は嶺巴の体を空中で投げる。
「白結丸っ!?」
投げ出された嶺巴は天井の穴を抜けて外へ浮かぶ。
「嶺巴・・・・・・・っ!!」
「は、白結丸ーっ!?」
白結丸へ嶺巴が手を伸ばす。
宙にあがっていく嶺巴。
勢いを失って落ちていく白結丸。
ふたりの距離は離れていく。
それでも必死に手を伸ばす嶺巴。
届くはずもない。
「白結丸ーーーっ!!」
崩れ落ちる羅城門の中へ落ちていく。
ひゅっ。
何かがしなる音がした。
ずうううううんん!!
がらがらがら!!
どおおおおん!!
「ひ、ひやああああああっ!!」
佐伯の叫びが、崩れ落ちる瓦礫の音にかき消された。
そして辺りには轟音が響き、羅城門が崩れ落ちた。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
静寂があたりを包む。
「・・・・・これは、どういう?」
白結丸があたりをみる。
「ええと、助けられた・・・ようだね」
嶺巴も、良くわからない顔で言う。
崩れた羅城門の瓦礫の上。
白結丸と嶺巴の体は、鎖でぐるぐる巻きになっていた。
そして、そばにはカシャカシャという音がしている。
「・・・・こいつに、助けられたのか」
一気に力が抜ける。
小御体・・・・。
そこに人が作った蜘蛛のような六本足があった。
「ああ、もう駄目と思ったよ・・・・。助かった、ありがと!」
そう言う嶺巴の体を、小御体はぎゅっと抱きしめる。
「あ・・・・・」
嶺巴の顔が引きつる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」




