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戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
一章 風結 かぜゆい

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18 風結ノ章 十八

「お前たち!」

重蔵が叫ぶ。


「来てくれたのですか!?白結丸殿!嶺巴殿!!」

皆秀も声を上げた。


「当たり前じゃないか!見捨てるわけないだろう!?」

白結丸が言うと、嶺巴も頷く。

「あたしはね、こう見えて面倒ごとが大好きなんだ!」

ニヤリとする嶺巴。


・・・・見たまんまだが。



「くそっ!!」

佐伯は踵を返すと、門の中へ逃げ込む。


「あ、待て!」

嶺巴が追いかける。


「白結丸殿!あいつを追ってください!あいつは御造所のことに気づいています!緋家の奴等に知られる前にあいつを何とかしないと!」


「わかった!」


「皆秀のことはおれに任せろ!!」

重蔵が胸を叩く。

「親方ーっ!!」

半泣きの皆秀。



「後は頼む!」

白結丸は佐伯の後を追って門の中へ消えた。






「このおれが何の支度もなく一人で来たと思っているのか!?」


「なんだよ!負け惜しみか!?」

嶺巴が刀を構える。


佐伯は暗い広間の中、何かに手を伸ばした。

「こいつは、中御体なかみたい紅鎧二式こうがいにしき!おれのような霊力れいりきの少ない者でも、長く動かせる!戦御体よりも安く簡単に作れ、扱いやすいという・・・・・・」


「そんなことはどうでもいいよ!ともかく観念しなっ!!」


嶺巴が刀を振りかぶって、佐伯めがけて振り下ろす。


「うわっ!!まだこいつに関して言いたいことがあるのに!!」



「・・・・あんた、ただの戦御体馬鹿だね!?」



「ふん!もうよい!おまえなんぞ踏み潰してやる!」


佐伯はそう言うと、そこにあった大きな赤い丸いものの蓋を開け、中に入り込んだ。

「嶺巴!!」

「白結丸!あいつ、あの中だ!」

嶺巴が指さしたのは、白結丸がさっき頭をぶつけた赤い球のようなもの。


その赤い球には、両腕と両足が生えている。

その図体に似つかわしくないくらい短い。

だが、その足で赤い球はゆっくりと立ち上がった。


「どうだ!!これが紅鎧二式だ!!」


「毬だ!」

「いや、あれは栗だろ!?」

「違うよ、太った蛙だ!」


「こらっ!!馬鹿にするな!」



紅鎧二式は嶺巴めがけて走り出した。

「えっ!?」


見た目に反して、その動きは素早い。


一気に嶺巴の目の前まで間を詰めると、その腕を嶺巴に振るった。


「うあっ!?」


嶺巴の体が飛ばされて、床に打ちつけながら転がる。


「嶺巴!!」


「痛いっ!!」


「・・・・はぁ、生きてた」


「あいつ、素早いよ!だけど、それほど力はないみたいだね!」

嶺巴も立ち上がる。



「・・・・・・やはり手足が短いぶん、力が乗らない!これは改良の余地ありだな」

佐伯がぼやく。



「だが!!この紅鎧二式、刀は通らん!くたばれ!!」


白結丸めがけて紅鎧二式が突進してくる。

白結丸は壁を背にして刀を構える。


「刀では斬れんというのに!馬鹿な奴だ!!」


紅鎧二式の体当たりが白結丸に届こうかというその瞬間、白結丸は飛び上がって避ける。

紅鎧二式はそのまま壁に突っ込む。


どうん!!

・・・・がらがらがら。


壁が崩れ、紅鎧二式の丸い体に瓦礫が降り注ぐ。


「やった!?」

嶺巴が声を出す。


「甘いわっ!!」

瓦礫の中から紅鎧二式が立ち上がった。


「・・・・でも、痛そうだねぇ」

「痛くない!!」

佐伯が見栄を張る。


「嶺巴!やはりあいつ、丸いだけに急に止まれないんだ!壁や柱にぶつけよう!」

白結丸が佐伯に聞かれないように嶺巴に囁く。

「承知だよ!要はぶつからなきゃ勝手に建物に突っ込んでいくんだろ?」

「その通りだ!」




「何かごちゃごちゃ言ってやがるなーっ!!」

逆上した佐伯が紅鎧二式を走らせる。


白結丸と嶺巴はすっとそれを避けると、紅鎧二式はその勢いのまま羅城門の柱に突っ込む。


べきっ!!


乾いた音を立てて柱が折れる。


「こいつら!!」

佐伯の額がずきずきと痛む。




「ほうら、こっちへおいでーっ!!」

変な顔をして舌をべろべろとさせる嶺巴。


どううん!

がらがらがら。


「当たんないよー!どこ見てるんだいっ!?」


「くそーつ!!」


べきっ!!

めりめりめり・・・・。



「はははっ!あんたが突っ込みたいのはここだろーっ!!」

大きなお尻を向けてぺんぺんと叩く


「馬鹿にしおってーっ!」



・・・・敵を挑発するなら嶺巴の右に出る者はいないな。



「白結丸、感心してる場合じゃないよ!そっちへ行った!」



「あ、ああ!よっと!」



ずううん!!

がらがらがら・・・・・。









「なんだ、これ!ちっともほどけないぞっ!?」

重蔵は皆秀を縛る縄が絡まっていて苦戦していた。


「親方、おれのために危険を冒してきてくれたのですね!?」

目を潤ませる皆秀。

「あたりめぇだろ!?お前は俺の弟子だ!弟子はおれの子供だ!」

「親方・・・・・・」

「破門なんて言ったがよ、本当はお前に真っ当な木彫り職人になって欲しくてよ・・・・」

「・・・・え?」

「だがな、皆秀。お前には木彫り職人の才能はない」



「・・・・・・え?」



「だから、この先どれだけ修行しても腕の立つ木彫り職人にはなれねぇよ」



「・・・・・そ、そんな!?」



「だから、やっぱりおめぇは破門だ!彦佐たちと戦御体でも作って遊んでな!」



「お、親方・・・・・」

一気に皆秀の目から涙が溢れだす。



どうううん!!

ばらばらばら・・・・

べきっ!!

どうううん!!


門の中から破壊音が立て続けに響いてくる。


「しかし、あいつら何をやっているんだ!?」


重蔵と皆秀の頭上から細かい礫が降ってくる。


「も、もしかすると、門が崩れるかもしれません!」

上を見上げながら皆秀が叫ぶ。


三階建ての羅城門、白い壁にびりびりと亀裂が走る。

そして上の方がグラグラと揺れ始めた。


「おい、だけどよ、この縄、ちっともほどけねぇんだ!!」


「う、うそっ!!危ないっ!!」


ふたりのすぐそばに大きな瓦礫が落ちてくる。


ずううん!!


「うひゃっ!?」

砂埃が舞い立つ。


「げほっ!!」

「大丈夫ですか、親方!?」


「あ、ああ!大丈夫だ!」


「門が崩れます!親方、逃げてください!!」


「お前を置いて逃げられるわけねぇだろ!?それが出来りぁあ、ここにはいねぇよ!


「でも!!」


ずううん!!

またすぐそばに大きな瓦礫が落ちてくる。


「・・・・・・・」


「親方!」


「じゃ、そう言うことで」


ぴゅっ!!


一瞬にして重蔵の姿が皆秀の視界から消えた。




・・・・・・・・。





・・・・・・・。






「え?」

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