6-7 禍神ノ章 七
ぎいいんっ!
禄染の振り下ろした太刀を、風結が太刀で受け止める。
ぎりぎりぎり・・・・。
禄染はそのまま、風結を力で押し込んでくる。
・・・・たしかに力はあるようだ。だが!
ぎいん!!
風結は禄染の太刀を跳ね飛ばすと、一気に禄染の懐に入り込む。
「もらった!!」
淡影が叫ぶ。それと同時に風結が太刀を禄染めがけて一閃する。
ばしゅっ!!
裂けるような音がして、禄染の体が後ろへ大きく下がる。
「くっ!!」
禄染の黒い体、その胸あたりが裂けている。大きな傷を負った。
痛みに、玖狼の顔がゆがむ。
・・・・強い。今まで戦った中でも一番強い。おそらく、伶守殿よりも。
玖狼は、風結に不気味な強さを感じていた。
気配を感じさせず突如現れたことといい、禄染の全力を力で跳ね飛ばしたことといい、普通ではありえない。もし、あと一瞬、力押しを諦めるのが遅ければ、禄染の胴体は真っ二つになっていただろう。
「ミカナ、行けるぞ!前よりも敵が見える!」
『当たり前じゃっ!!おれが全身全霊の霊力を注ぎ込みまくっておるのじゃ!!踏み潰して畑の真ん中に埋めてやるのじゃ!!』
「・・・・何かあったのか?」
『それを言うなっ!!』
玖狼は目を閉じた。
・・・・おれの敗北は決まった。ならば、捨て身で戦うのみ!!
禄染は風結めがけて飛び掛かってきた。
「こいつっ!!」
淡影は風結を走らせる。
「でええええいっ!!」
玖狼が叫ぶ。
◇
「黒い戦御体・・・・やはり滅創衆でしょうか?」
瑞奈が空の上から侵入者の戦御体を見下ろす。
ようやく、内裏の中でも御体蔵から白縫や朱獄が動き出した。
そして、朱雀門の辺りが騒がしい。
「あれは・・・・もう一体!」
朱雀門を潜り抜け、すさまじい勢いで走ってくる黒い戦御体がもう一体。
「まずい、敵が二体に!!」
狐白丸は急降下する。
「淡影殿っ!!もう一体来ます!!」
◇
ぎいん!
ぎいいんっ!!
ぎいん!
激しい打ち合いが続く。
「もう一体!?」
瑞奈の声に、淡影が呻く。
だが、激しく打ち込んでくる禄染に、目が離せない。
「ミカナ!こいつを吹き飛ばす!」
『おれに任せるのじゃ!!』
風結は後ろへ跳んで間合いを取る。
その瞬間、風結が太刀を上から一気に振り下ろした。
その太刀の岬から風が起こる。その風は渦を巻いて大きくなり、禄染に向かって飛んでいく。
「何っ!?うわぁぁっ!?」
巨大なつむじ風は禄染を弾き飛ばし、内裏の壁や建物をガラガラと崩した後、ふっと消えた。
「ああ・・・・」
禄染が吹き飛ばされた跡、まるで竜巻が通ったあとのようにばらばらに破壊されている。
「ちょっと、やり過ぎたのでは?」
『言ったじゃろう!今宵のミカナ様は一味違うのじゃ!!ぶっちぶっちのぎったんばったんにしてやるのじゃ!!』
「・・・・やっぱり、何か・・・・」
『うるさい!!』
「くっ・・・・」
玖狼の禄染が頭を抱えながら立ち上がる。
瓦礫がばらばらと崩れ落ちる。
「ふん!ざまあないね!この壺頭!勝手なことするからだよ!」
「紺織・・・・」
立ち上がろうとする禄染の隣に、紺織の華裡が立っている。
「だけど、やっちまったものは仕方ない!あたいもこいつには礼をしたいからね!」
華裡は風結に向き直る。
「おい!おまえたち!これ以上内裏を壊すなら、おれが容赦しないぞ!」
淡影が言い放つ。
「壊したのはあんただろう!」
紺織が叫ぶ。
「そもそもおまえたち、何者だ!」
「ふん!久しぶりだね、霞の末子。あたいは滅創衆四の衆、華刃の紺織さ!」
「・・・・」
淡影は眉間に皺をよせる。
「瑞奈殿!」
「どうしました、淡影殿!」
「今の聞いていたか?」
「はい!」
「なんと言った!?」
「・・・・さあ?」
「ええいっ!!もういいっ!!」
紺織の華裡が首をぶんぶんと横に振る。
「あたいはね、あんたに受けた屈辱を晴らしに来たんだ!」
「・・・・屈辱?」
「あんたがあたいに短刀を投げたせいで、あたいは死ぬところだったんだよ!!隣に伶守がいなきゃ、あたいは死んでたんだ!」
「・・・・それは・・・・知らん!そして、すまん!」
「もういい!ともかく、あんたたち、ふたりともここで死んでもらうからね!!」
「そうとなれば話は別だ!」
風結は太刀を構える。
「玖狼!あたいの短刀に当たるんじゃないよ!!」
「・・・・わかっている」
禄染は太刀を構えると、華裡の前に出た。
「まてーっ!!これ以上、内裏の中で暴れることは許さんっ!!」
白縫が三体、朱獄が二体走ってくる。
「・・・・邪魔だよっ!!」
華裡が短刀を投げる。
どすどすどす!
白縫たちの足元の地面に、短刀が突き刺さる。
「うおおっ!?」
白縫たちは踵を返すと逃げ出した。
「まったく、何だいあれは!!」
淡影はその様子を見ていた。
「手前の奴が太刀で斬りかかってきて、後ろの奴が短刀を投げてくる。少し厄介だな」
『飛んでくる短刀はおれに任せろ!全部吹き飛ばしてやる!!』
「わかった!ミカナ、頼りにしている!」
『・・・・そういうことをじゃな、軽々しく言うから・・・・』
「行くぞっ!!」
『最後まで聞けいっ!!』
風結は走り出した。




