↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
流転 (るてん)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

411/418

5-44 流転ノ章 十五

ざんっ!!


鹿嶺王の一閃は、敵の白縫を切り裂いた。

白縫はそのまま仰向けに倒れ、動かなくなる。



・・・・やはり、見事だ。


恒影は鹿嶺王、宗影の剣技に見惚れていた。


その勢いはすさまじく、気がつけば勢多の唐橋まで戻ってきている。

唐橋は炎を上げていて、その火はあたりの森の木々に飛び火していて、辺りに熱気が籠っている。


「淡影はどこだ?そろそろ敵の中心のはずだが」

宗影がそう言った時だった。


!


鹿嶺王は不意に太刀を一閃する。

かん!という乾いた音を立てて、鹿嶺王の太刀は飛んできた矢を弾いた。

大きく太い矢が地面に落ちる。


「・・・・戦御体で矢を放ったのか?」

恒影が言う。

あたりを見渡すが、すでに矢が放たれたあたりに気配はない。森の木の間を隠れるように移動している。

「恒影、気をつけよ」


ひゅん!


空を切る音がして、矢が飛んでくる。


かん!


鹿嶺王がその矢を払い落す。


「宗影殿・・・・」

「少し手強い相手のようだな。姿が見えん」


・・・・。


「恒影、後ろへ跳べ!」

不意に宗影が叫んだ。


恒影は理解する暇なく、それに従う。


ずしゅっ!!


恒影の白縫がいたあたりの地面に、矢が刺さった。


「次も来る!」

宗影が続けて叫ぶ。


「くっ!!」


恒影の白縫はまた後ろへ跳ぶ。


ずしゅっ!!


また地面に矢が刺さる。

「まただ!!」

白縫はさらに後ろへ。

ずしゅっ!!

また矢が地面に突き刺さる。


・・・・宗影殿と離されてしまった。


そう思いながら、木の陰に隠れる。


・・・・もしや、わざと離したのか?だと、まずいな。


恒影がそこから出ようとすると、足元に矢が飛んでくる。

ずしゅっ!

・・・・やはり、わざと離されたのか。


恒影の視線の先に、佇む鹿嶺王。


その先には燃えている唐橋がある。



その炎が、少しづつ揺らぐ。


・・・・なんだ?風か?


唐橋に立ち上る炎が、一気に左右に分かれ、道を開けた。

その間を風が吹き抜ける。

その中を、一体の戦御体が渡ってくる。


一瞬だった。


まるで飛んでいるように。

向こう岸からこちらまで、瞬きする暇もないほど。


ざざざざ・・・・・。


戦御体は地面を滑ると、鹿嶺王から少し離れたところに立った。

唐橋の炎が元に戻る。



「遅かったな、淡影」

「すまない!場所を間違えて迷っていた!!」

宗影が言うと、風結の淡影が答えた。


『まったく、嶺巴のことは言えんのじゃ!』

「はは、そう言うなよ、ミカナ。ちゃんと間に合っただろ?」

『間に合ったとは言えんのじゃ!』

「だが、すまない、ミカナ。ここからはおれと兄上だけでやらせてくれ」

『まったく、素直でない兄弟じゃ!好きにせい!』

「ありがとう、ミカナ!」


ミカナの体が光となって風結の頭部から外へ出る。

それは緑色に光りながら、ゆっくりと地上へ降り、一糸まとわぬ少女の形になる。

「離れて隠れていてくれ!」

風結の繰り座から淡影がミカナの衣装の入った包みを投げる。

「わかったわ!やりたいだけ存分にせい!!」

ミカナはその包みを受け取ると、草むらに隠れた。


「さて、待たせてすまない!兄上!!」

「待ちくたびれたぞ!淡影!!」


鹿嶺王が太刀を構える。

風結も太刀を抜き、低く構えた。



「宗影殿っ!!」

ずしゅっ!

恒影の白縫が木の陰から出ようとすると、足元に矢が飛んでくる。


・・・・邪魔するなということか!


「いくぞっ!!」

宗影が叫ぶ。

鹿嶺王が地面を蹴った。


一瞬で風結の間合いに入る。


ひゅんっ!!


鹿嶺王の真横の一閃は空を切る。


姿勢を低くして躱した風結は、その低い姿勢のまま鹿嶺王めがけて太刀を振り上げる。

ひゅっ!!


鹿嶺王は身をよじって躱すと、

地面に転がってその勢いのまま立ち上がる。


その鹿嶺王めがけて、風結が地面を蹴る。


「うわぁぁぁぁぁっ!!」

淡影が叫び、太刀を振るう。


ぎいいん!!


激しい金属音が響き、風結の太刀を、鹿嶺王の太刀が受け止めた。


「まだまだだ!おまえの力はその程度か!?」

「絶対に、兄上を越えてみせる!!」


鹿嶺王が太刀を振り切ると、その勢いで風結が後ろへ跳ぶ。


ざざざ・・・・。


風結は間合いを取って立つ。


・・・・やはり、ミカナがいないと風結が重い。それに、長引くと危ないな。おれの霊力がどこで切れるのか、まだわからない!


淡影は再び風結を走らせる。




◇




「なんという速さだ・・・・」

二体の戦御体の戦いは、目で追うのもやっとだ。


恒影は飛んでくる矢を警戒しながら、木の間を縫うように走る。

だが、鹿嶺王と風結に近づこうとすると、どこからともなく矢が飛んでくる。


「これでは、籠の鳥と同じだ・・・・」


・・・・わかっている、おれが近づいたところで、あの戦いの中には入れない。足手纏いになるだけだ。だが・・・・。


あの矢を放つ戦御体を、何とかせねば!


・・・・どこにいる?


目を凝らせ・・・・音を聞くんだ・・・・。


近くで、こちらの動きを窺っているはずだ。


・・・・・・。


その時、木の間を駆け抜ける黒い影が一瞬垣間見えた。

「そこかっ!!」

影めがけて白縫を走らせる。


だが、すぐにその影を見失う。


・・・・速い。


・・・・どうすれば!?


恒影の頬を汗が伝う。

相手はこちらを殺そうとしているわけではない。おそらく、宗影殿と淡影殿の戦いを邪魔するな、見届けよと言いたのだろう。


それはわかっている。だがおれも武士だ・・・・。


あの矢を放ってくる戦御体には、一矢報いなければ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。