196 花舞ノ章 幕間 九
・・・・・どうしよう。
毎日子供たちのお守りをするのが当たり前になってきてしまった。
これではまるで、汐永家の女房と同じだ。
そもそも、わたしは影が薄くて淡影様に女として見てもらえていないのではと、気が気ではない。
わたしはいたって、どこにでもよくいる娘だからだ。
淡影様のまわりにいる女は誰も皆普通じゃない!
だから、わたしのような子はどうしても印象に残りにくい。
紅羽姉様のような、凛々しく逞しい容姿もない。
嶺巴のように、大きな胸やお尻があるわけでもない。
ミカナのように、愛らしい赤みのある頬や大きな目があるわけでもない。
蓮華殿のように、力が強くもないし、素直でもない。
瑞奈殿のように、艶やかな色気もない。
わたしには、皆に勝てるものが何もない。
「伊佐姉様、遊びたい!」
「おれも!」
「はい、何をして遊びますか?」
伊佐はいつものように汐永から二人を預かって面倒を見ている。
「竹丸は毬!」
「狛丸は木の馬!」
わたしに寄って来る男子はこのふたりだけだ。
竹丸と狛丸。ともに三つ。
かわいい。それは認める。
だけど・・・・。
たぶん、みんな、わたしの子だと思っている・・・・・。
いつも連れて歩いているから・・・・・。
時千代も小さい頃はこうだったかな?
その頃はわたしも小さくて、覚えていないけど。
それに時千代は紅羽姉様にべったりだったから。
・・・・気持ちはわかるけど。
「ねぇ、ふたりとも。どうしていつもわたしばかりなの?」
「?」
・・・・別に嫌で聞いたのではないのだけれど。
「だってさ、ミカナと嶺巴たちはいつも喧嘩しているでしょ?・・・怖いもの」
「あ、あははは・・・・。あれは喧嘩ではありませんよ。なんというか、仲が良いからお互い言いたいことを言っているのですよ」
「そうなの?じゃあ、伊佐姉様は仲が悪いの?」
「そんなことないです・・・・・。ないですよ?」
すると、竹丸が伊佐を見上げて言う。
「伊佐姉様がいちばん優しいから」
すると、狛丸も伊佐を見ながら言う。
「うん、おれも伊佐姉様がいちばん好き」
・・・・・・・・・。
何かじんわりと胸の中に広がるものがある。
何と言えばいいものなのだろうか?
思わず二人を抱き締めていた。
「ありがとう。わたし、うれしいよ」
「伊佐姉様が母様ならいいのに」
竹丸が言った。
「え?」
「だって、岩姫には母様がいるけど、おれにはいないもん」
「・・・・・・そ、それは」
「うん、おれにもいない」
狛丸も。
「父様はいつもいないし、伊佐姉様が母様ならいいな」
狛丸が続けて言う。
「でも、おれは伊佐姉様を嫁にもらうから、母様じゃなくていい」
竹丸が言った。
「え?」
狛丸も言う。
「じゃあおれも」
・・・・・・・・・・・この子たち。
「そんなこと、軽はずみに言うもんじゃありませんよ」
「はーい」
ふたりは声を揃えて返事した。
・・・・・とりあえず。
わたしは、皆に比べて無いものは多いけど、皆よりも優しいらしい。
これからは、無いものを数えるのはやめよう。




