195 花舞ノ章 幕間 八
「いいかい、行尊、惟正!」
嶺巴が神妙な顔で二人を交互に見る。
「はい、姉御!」
行尊も嶺巴を見る。
「いつでもよい!」
惟正も嶺巴の目を見る。
「あたしが調べたところによると・・・・・」
行尊と惟正はごくり、と息を飲む。
「瑞奈は・・・・・・・」
・・・・・・・・。
「食べるのが好きだ!」
「知ってます」
「だいぶ前から」
「馬鹿だね、だからだよ」
「ええと、何か美味しいものを献上して気を引こうということですか?」
惟正が言うと、嶺巴は首を横に振った。
「そんなことやっているから駄目なんだよ!」
「え、では、どういう・・・・?」
「女はねぇ、自分を超える男に惚れるのさ!」
どーーーん!!
「そ、そうかっ!?」
「それは考えもしなかったです!!」
「だろう?」
得意満面の嶺巴。
「要するに、瑞奈殿よりたくさん食べれば、惚れてくれるってことですね!」
行尊が興奮気味に言う。
「その通りっ!!」
「さすが姉御だーっ!!」
「女心の化身!!」
「・・・・まあ、あたしも女だからね」
こほん、と咳払いをする嶺巴。
「そもそも、あたしが淡影の嫁になったのも、あいつがあたしに剣で勝ったからだからね。そしてあたしの上に馬乗りになって、あたしの胸に顔をうずめながら言ったのさ!く、くるしい・・・・」
「この辺りのくだりはどうでもよさそうじゃな」
惟正が言うと、行尊も頷く。
「よし、じゃあ瑞奈のところへ行くぞ!」
嶺巴が歩き出す。
「姉御、そっちは出口です!瑞奈殿はこっちです!」
「ほら、あそこに瑞奈がいるだろ?」
三人が隠れる垣根の向こうに、狐白丸を遊ばせている瑞奈が見える。
「そりゃあ、わたしたちが連れてきたのですから」
「姉御、なぜか逆の方にばかり行くんで・・・・」
「じゃあ、いいかい?元康!持っておいで!」
「!?」
ふたりは顔を見合わせる。
「あのう・・・・これでよいのでしょうか?」
元康が荷車いっぱいに積んだ、山盛りの焼いた芋を持ってきた。
こんがりと焼かれていて、いい香りがする。
「これを、瑞奈よりたくさん食べたら惚れるに違いないよ!」
「・・・・・・え?」
「おーい、瑞奈!こっちおいで!」
・・・・・・。
嶺巴に呼ばれ、仕方なく振り返った瑞奈だったが、ものすごく嫌そうな顔だ。
「芋がたくさん取れたっていうからな!せっかくだから焼かせてみた!瑞奈、大好物だろ?」
「・・・・・食べていいの?」
ちょっと涎が出る。
「もちろん!だが、こいつらも負けないように食べるから、それも見てやってくれないか?」
「・・・・・・えー・・・・・・・」
「ぐるるるるるる・・・・・」
唸る狐白丸。
「瑞奈殿!わたしたちだって、男らしいところを見せられるのですよ!!」
「絶対に瑞奈殿よりたくさん食べるのじゃ!見ていてくれ!」
「では、いただきますーっ!!」
嶺巴の合図とともに、三人が食べ始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「美味しかった♪」
「・・・・・お前たち、芋の十や二十くらいは食えるようになれよ・・・・・」
「く、苦しいです・・・・」
「む、無理じゃっ!」
結局、ほぼすべて瑞奈がひとりで食べた。




