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戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
花舞 (はなまい)

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194 花舞ノ章 幕間 七

「わたしの紫雲(むらくも)、直りますか?」

蓮華が淡影を伴って御造所(みぞうじょ)を覗きに来た。

そこにはたくさんの御体匠たちが御体を作っている。

その中で、淡影の計らいで皆秀が蓮華の紫雲の修理をしていた。


「ああ、蓮華様。これはかなり深くやられていますね」

蓮華の乗る戦御体・紫雲は、先日の鷹根峠(たかねとうげ)の戦いの折に、両肩を切り裂かれて動けなくなっていた。


「そうなんですよ。あの人、全然容赦なくて!」

蓮華がむくれた顔をする。


「しかも、これ、おれは見たことない構造になっているんです。どなたがお造りになったのですか?」

「朽平(くちひら)様です!旅の御体匠って、本人は言ってました」


その時、不思議なことが起きた。

淡影の頭の中に、蜘蛛が浮かんだ。



「え?なんで?」



思わず声に出す淡影。

「どうしたの?」

蓮華が聞くと、頭を振る淡影。

「い、いや、何でもない。気のせい・・・だと思う」


「朽平・・・・聞いたことのない名ですが、これは素晴らしい組み方です。これからの参考にもなりますよ。どこからこんな技を思いつくのでしょうね」

「えー、そうなんですか?」

「ただ、良く(・)も(・)悪く(・)も(・)ありますけど」


・・・・・くも。蜘蛛?

蜘蛛と言えば・・・・因幡で戦った蜘蛛型戦御体を思い出すが。

関係ないだろう、きっと。


「どんなところですか?」

蓮華が皆秀に言う。

「ほら、ここに内側からひく(・)も(・)のがついているでしょう。このく(・)も(・)がたの形はとても珍しいです」

皆秀が紫雲の裂け目を指さしながら答える。

「それはよく(・)も(・)ないのですか?」

「いえ、わるく(・)も(・)ないですけど、代わりが作りにくく(・)も(・)あるのです」


「蜘蛛蜘蛛・・・・雲・・・・・紫雲・・・・・?」


「どうしたの?さっきから」

蓮華が不思議そうな顔をする。

思わず声を出してしまった。

「い、いや、気にしないで・・・・」


「そう?」

「では、話の続きですが・・・・」

皆秀が話を続けようとする。

「でも、空にく(・)も(・)が出てきましたね」

蓮華が外の方を見ながら言う。

「そうなんです。湿気が高いときに無理にやっていく(・)も(・)のでもなく、結局割れてやり直しなんて、く(・)も(・)んの表情が出てしまいます」

「く(・)も(・)っているときはそんなにだめなんですか?」

「まったく(・)、も(・)ってだめですよ。く(・)も(・)りぞらだと、木が湿ってしまって・・・・・」


「なんか、わざとやってるだろ?」







「なあ蓮華、その朽平っていう御体匠、どこに行ったのかわからないのか?」

「ええと・・・・東雲山から東へ向かったのは間違いないのだけれど・・・・」

「それまではどこにいたか聞いていないか?」

「西からずっと旅してきたって聞いたかな?」

「・・・・西から」





なんだろうな、変な感じがする。


朽平か・・・・。心にとどめておこう。


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