197 花舞ノ章 幕間 十
「・・・・・瑞奈様、なんか、こう・・・・丸くなりましたね」
蓮華が瑞奈を見るなり、言った。
「え!?」
「ほら、ここ」
そう言って顎の下をたぷたぷと触る。
「・・・・・・・・・」
「これはこれで愛らしいですけれど。でも、もうすぐ落成の宴がありますが・・・・舞は大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですよ!ほら!」
瑞奈は「よっこいしょ」と言いながら立ち上がると、扇を持って構え、くるりと回る。
「ぜぇ、ぜぇ・・・・」
・・・・・たったこれだけで息が切れてる!?
「あの・・・・・・」
蓮華が頬を赤らめてこちらを見ている。
「瑞奈様・・・・・ころころして、かわいい・・・・・・」
ぐわわわわん!!
「狐白丸、走りますよ!!」
「おん!」
その日から毎日、瑞奈は関ノ府の街道を、狐白丸と一緒に走り始めた。
「ぜぇ、ぜぇ・・・・・。駄目だ!これでは!」
思えば、関ノ府に来てから、美味しいものを食べてばかりいる。
おまけに、嶺巴が毎日のように芋や栗などを山ほど持ってくる。
行尊と惟正の三人で食べるのだが、あの二人はどうにも食が細く、結果ほとんどを瑞奈が食べきる。
どうしよう!?
こんなことくらいでは、落成の宴に間に合わない!
もっと、激しく体を絞らないと・・・・!
そこへ、一人の男が通りかかった。
・・・・あの人は・・・・黒部宿儀って言ったっけ?
・・・・・どうしてあんなにいつも顔色が悪くて、下を向いて歩いているのだろう?
体もひょろひょろで・・・・今にも倒れそう・・・・・・。
「黒部殿・・・・」
「はい・・・・・何でしょうか?」
思わず声をかけてしまった。
「あの、実は・・・・」
「まず痩せたいと?」
「はい」
「ですが、荒唐無稽―――。わたしは別に痩せたくて痩せているわけでは・・・・」
「いえ、ただ参考にするだけでよいのです」
「・・・・はぁ、気随気儘にしてください」
・・・・良くわからないけど、許しを得たみたい。
朝。山に入り、獣を狩る。弓を使って、鳥や兎を狙う。宿儀ほどの弓の腕があっても、獲物が出てこなければ狩りは空振りに終わる。そうなると食べるものはない。
昼。たたら場へ入る。真っ赤でドロドロに溶けた鉄を型へ流し込み、形を作る。戦御体の部品を作っているらしい。炉の熱は恐ろしいほど熱く、その熱風を浴びるだけでも全身が汗だくになる。
夜。灯台の小さな光を頼りに、書を読み漁る。関ノ府には膨大な書庫があり、夜の間はそこで朝まで籠る。
朝。狩りに出る・・・・・・。
「・・・・・黒部殿、いつ寝ているのですか?」
「気が付くと、今、寝ていたのかもしれない、と思うときがあります・・・・・」
・・・・目の下のひどい隈も納得できる。
そして、瑞奈は五日間で関ノ府へ来た頃の姿に戻った。
戻ったが・・・・・。
「瑞奈様・・・・・大丈夫ですか・・・・。顔色悪いですが・・・・・」
蓮華が瑞奈を見るなりそう言った。
「・・・・・天上天下唯我独尊・・・・・・・」
「どういうこと!?」
・・・・・・。
ばたっ!
「瑞奈様ーっ!?」




