0-03 赤月ノ章 三
「それがどうした」
宗矢は言いながら、役人たちをあっという間に麻縄で縛り上げた。
「お、お主、何をしているのかわかっているのかっ!?」
「役人のふりをした野盗を縛り上げているだけだ」
「おれたちは六原様直々の命で荷を運んでおると言っておるだろうっ!?この狭い街道ではあの荷車が通れぬのだ!」
「だから、家を壊して木を切って道を広げていると?」
澄乃が前に出て、不敵な笑みを向ける。
「・・・・・い、いや、だから・・・・」
いい澱む役人たち。
「あの性根の腐った老人が言いそうなことだわ」
・・・・よほど父親のことが嫌いなのだろう。紀基の話になると心底嫌そうな顔を見せる。
「だが、ここは民が暮らす場所。ここを荒らせば租も納められず、最後に飢えるのは武士のみにあらず。道を変えていただこう」
「だから、もうそこまでいらしておるのだ!」
「・・・・・ふん」
宗矢はしばらく考えた後、鼻を鳴らした。
「ならば、おれが追い返してやる」
「おい!この先の街道はとても狭い!そのような大きな荷車は通ることが出来ん!すぐに引き返すがいい!」
宗矢が行列の前に立ち、大声で言った。
「・・・・誰だ!?」
先頭にいた大男が馬に跨ったまま、ずいと前に出る。
「我が名はここ、三埋野の鎮守、霞太郎宗矢である!」
「ほう・・・・」
大男は顎に手をやると、舐めるように宗矢を見た。
「わしは緋次郎孝基!我が父、紀基の命でこの荷を六原へ届ける途中だ!この街道が最もそれに早い!ここは通してもらう!」
「殿・・・・」
澄乃が宗矢の後ろに近づく。
緋家の次男となれば、澄乃の兄、ということになる。
「知っているか?」
「会ったのは初めてです」
「ならば、問題あるまい」
再び孝基を睨みつける。
「お主たちの事情はどうでもよい!この先には我が民の暮らしがある!それをたった一時、荷が通るからと言って壊してしまうことはまかりならん!」
「霞宗矢と言ったか・・・・。では、そこにおるのが我が妹、澄乃であるな?」
「・・・・・・」
「まあ、それはよい。だが、そこの役人ども、われらの道を開けよと命じたものが何故に縛られておるのか、答えてもらおう」
「ふん、語るまでもなし!野盗まがいの悪事を働いた!故に縛り上げたまでのこと!」
「そうか、それはすまぬ」
孝基は馬上から軽く頭を下げた。
「我ら武士、民の生活守ってこそ!それに、この先に邪魔があって通れぬのなら、それも仕方あるまい!」
「では、引き返されよ!」
「だが、われらは一刻を争う!邪魔な者あれば平らげても押し通せとの父上からの命である!邪魔なお主らを”仕方なく”斬り捨てる!」
孝基は馬から飛び降りると、すらりと腰の刀を抜いた。
「面白い!やって見せよ!」
宗矢も孝基を睨みつけながら、腰の刀を抜く。




