0-04 赤月ノ章 四
「いくぞっ!!」
孝基が一気に踏み込む。
「こいっ!!」
宗矢が刀を横に構える。
孝基の刃が、上から振り下ろされる。
ぎいんっ!!
刃と刃が弾け合い、固い音が響く。
・・・・・・力はあるが、躱すのは容易い!
宗矢はその勢いのまま、一気に刀を振り上げた。
「うおっ!?」
孝基は呻きを上げてのけ反り、その一閃を躱すと二歩・三歩と後ろへよろめく。
「このおっ!!」
孝基は怒りの顔で再び上から刀を振り下ろす。
宗矢はすっと横へ身を翻すと、すれ違いざまに太刀を横に一閃した。
「貴様、逃げてばかりしか能が・・・・・」
振り向きざまに孝基が言いかけた時、孝基の顔の前にはらはらと黒いものが落ちてきた。
それは孝基自身の髪と、切られた烏帽子。
「は、はぁっ!?」
「もう、やめなさいっ!!」
澄乃が大音声を上げる。
宗矢と孝基、縛られた役人たちや、荷を引いた一団の者までもが驚いて澄乃を見る。
「孝基殿、わが殿は今、あなたの烏帽子でなく首を落とすこともできたのです!負けを認め、おとなしく引きなさいっ!!」
「くっ・・・!」
孝基は悔しい顔を浮かべたが、目を閉じて刀を鞘に納めた。
「仕方あるまい。我が妹の顔を立てて、ここは引いてやろう。だが、わが父はわしほど潔くないお方だ。それを忘れるなよ・・・・」
孝基は振り向くと、馬に飛び乗り、踵を返した。
「おい、こいつらも持っていけ」
宗矢が縛り上げた役人たちを指さす。
「そいつらは好きにせい」
「えっ!?なんと、殺生なっ!!」
「お、お待ちをっ!!」
縛られた役人たちが一斉に声を上げる。
「では、壊したものをすっかり元通りに直していただきましょう・・・・ね」
澄乃が不気味な笑みを浮かべて役人たちの前に立つ。
「ひ、ひぃぃぃ・・・・・」
その後、荷を引いた一団は街道を逸れ、草叢の方へ分け入っていった。
それを見届けると、宗矢は縛られた役人たちを見下ろす。
「お前たち、澄乃を怒らせるとものすごく怖いからな。命がない方がましだと思えるぞ」
宗矢が手を口元にあてて、小声で言う。
「聞こえていますが・・・・?」
澄乃が笑顔で宗矢の後ろに立つ。
この笑顔が怖い。
「と、ともかく、壊したものを直せ。その後、爺の野良仕事を手伝いを命じる」
「・・・・そんなぁ・・・・・・」
「何か!?」
澄乃の睨みは何よりも効くようだ。
「はいっ!やらせていただきますっ!!」




