表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
一章 風結 かぜゆい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/240

67 風結ノ章 六十七

嶺巴、どうして泣いている?


そうか、荊火が傷つけられたんだな。


荊火、可哀そうに。



今、わかった。

記憶が雪崩れ込んできた。

荊火も、緋家にやられたんだ。


子供の頃、妹を奪われて、母親を見殺しにされた。

そして自分自身も殺され、そんな体にされたんだ。


緋家の血を恨んでいるだろう!


嶺巴だってそうだ。

あいつらに父親を殺された。

そして生きていくために六原にいたんだろ?

そして、あらぬ罪を着せられて追い出された。


嶺巴、もうお前を泣かせるような奴ら、生かしておけない。




おれが、みんなみんな、根絶やしにしてやるよ。




今、すごく殺したいんだ。






緋家の血を、地面にぶちまけたい。





怒りが、止まらないんだよ!






殺したい!!





今、一番近くにいる奴らの血はどこだ!?








ああ、いた。


三人も。






いいじゃないか。



死んでもらおう。













『なんだとっ!?』


牛鬼蜘蛛の片足が崩れる。


「おっと!!」


英醐が牛鬼蜘蛛の下から転がり出る。



ずうん!!



牛鬼蜘蛛は右足三本が力をなくし、地面に落ちる。


『石が、やられた!?』




牛鬼蜘蛛はガシャガシャと動き回るが、片方の三本では巨体を支えきれない。


『貴様かぁっ!!』


夜和が吼える。


その先に英醐がいた。



「どんなにまっすぐ飛ばなくとも、近ければ当たる!!」


英醐は牛鬼蜘蛛の背中の上に乗り、もう片方の足の付け根にある大きな御霊石に矢を放つ。


ばきいいん!!


音を立てて御霊石がはじけ飛ぶ。



ずううん!!



残った方の足も力を失い、牛鬼蜘蛛は完全に地面に落ちた。



『やはり、成正では足りない!』


夜和が呻く。


『だが、あの小僧なら・・・・!』









殺したい!



緋家の血を、地面にぶちまける。


それは、気持ちいいだろうな!





向こうに感じる。



緋家の血を引く者。





おれが殺しに行く!!




『おいっ!!白結丸!!』



・・・・・・・。



『くぅ、お主、おれの父様の仇を討つと約束したじゃろう!?どこへ行く気じゃっ!?』



・・・・・・・・ミカナ。




『白結丸!おれとお主はひとつじゃ!お主が今、何を考えておるかわかっておる!』





・・・・・・なら、止めないでくれよ。




『じゃから、止めておるのじゃ!!今すべきは、あの妖を討つことじゃ!!』




・・・・・・でも、おれは・・・・殺したい!緋家の奴らを!!



父上を殺し、母上を追いやり、皆を苦しめた!!

そんな奴ら、全部殺したい!!





『違う!!』





違わないっ!!





『違う!!お主がやるべきは、よき世に戻すことじゃ!!緋家によって曲がってしまった世の中を、元ある場所へ戻すこと!そのためにお主は生まれたのじゃろう!?』





・・・・・・それには、奴らを殺さないと!!




『白結丸!お主の母はそれを望んでお主を育てたのか!?お主の父親は何を望んでお主に何を託したのじゃ!?』




・・・・・・。




『何のために生まれてきた?何のために、おれと風結を見つけたのじゃ?何のために、ここまで来たのじゃ!』







・・・・・・。






『おれを暗闇で見つけてくれたのはお前じゃ、白結丸・・・・。お前のおかげでおれは目覚めた。おれは、おれのすべてを、白結丸に捧げるつもりじゃ・・・・。じゃが、おれの慕う白結丸は、あんな妖に心を操られるような、弱い男ではない!』



・・・・・・。




『目を、目を覚ませーーーーーっ!!』





・・・・違う。


父上はそんなことのために死んだんじゃない。


母上もそんな人じゃない。


兄上たちもそうだ。


おれが憎しみに飲まれたら、


みんなが守ろうとしたものまで失ってしまう。





・・・・ミカナ!







そうだ、おれはミカナを守りたい。


ミカナの想いを叶えたい。


ミカナと出会ったのは、たくさんの偶然が重なっていた。


でも、おれはあの時、光る風に引き寄せられた。


偶然が必然だったんだ。







そうだな、ミカナ。思い出した。







おれの中にやっぱり憎しみがあるんだ。




そうだ。



憎しみに心が染まっていた。




でも今、憎しみを向けるべきなのはこっちじゃない!





ミカナも、嶺巴も、皆秀も、宿儀も、荊火も、紅羽も、伊佐も、時千代も!


みんな仲間だ!



おれが憎むべきは、その仲間を傷つけるやつだ!!






「ミカナ!!すまない!もう大丈夫だ!」



『白結丸・・・・』



風結の御霊石の光。


赤から緑へゆっくりと戻って行く。




「大丈夫か?ミカナ!」



『ああ。じゃが、ちと霊力を使いすぎた・・・・。あまり長くもたん!』



「わかった!すぐに片付けよう!!」




風結は太刀を構える。


牛鬼蜘蛛に向かう。









「もう絶対許さないよっ!!」


蒼刃が牛鬼蜘蛛めがけて太刀を振り下ろす。



ぎいん!!



それを牛鬼蜘蛛が太刀で受ける。



・・・・・・やっぱり、少しづつ固まってきているんだ。今までよりずいぶんと動きが鈍い!



足の付け根の御霊石を失った牛鬼蜘蛛だが、それでも六本の足をずりずりと動かして、這い回るように動いている。


その動きも、牛鬼部分の動きも少しづつ遅くなってきていた。


「だけど・・・・こっちもだね」

意識が薄れてきている。







びゅしゅっ!!


「おっと!当意即妙とういそくみょう!」


英醐は牛鬼蜘蛛の腹の先から出る白い液体をさっと避ける。


「こちらも勢力減退!!」



そのまま近づくと、足の先の関節に矢を撃ちこむ。


ばきん!!


御霊石が砕け散る。


「まだ、たくさんあるな・・・・そこまで霊力が、もたん」







「宿儀!嶺巴!すまなかった!あとはおれが片づける!!」


風結が牛鬼蜘蛛の前に立つ。


「白結丸!頼む!もう、霊力が・・・・」

「白結丸殿!おれもだ!」


「ああ!これで最後だ!」



『行くぞ、白結丸!』

「ああ、ミカナ!この後のことは何も心配いらない!これで終わりだ!」




風結が低い姿勢で太刀を構える。


牛鬼蜘蛛も太刀を振り上げ、風結に向かう。




「ミカナ!」

『行くのじゃ!』



風結が、地を蹴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ