表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
一章 風結 かぜゆい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/239

65 風結ノ章 六十五

ぎいん!!



かん!!


ぎいいいんっ!!



幾度となく太刀がぶつかる固い音が響く。


「なんだよこいつ!こんな大きな図体のくせに素早くてっ!!」

嶺巴が呻く。


「手を止めるな嶺巴!止まるとやられる!!」

白結丸が叫ぶ。


『牛鬼蜘蛛を流れておる霊力が多いから奴も速く動く!気を抜くな!』


「牛鬼蜘蛛を流れている霊力が多い!だから奴も速いんだ!!気を抜くな!!」


『真似するでない!』

「真似するでな・・・・。」





宿儀しゅくぎの乗る英醐えいごが、牛鬼蜘蛛うしおにぐもから間合いを取りつつ矢を放つ。


ひゅん!!



かん!!



「ああっ!!何故まっすぐ飛ばん!!切歯扼腕せっしやくわん!!」



ぎりぎりと歯を食いしばる。

狙いは間違っていない。

牛鬼蜘蛛の足の関節についている、緑色の光。御霊石。


だが、どうしても竹を切っただけの矢はまっすぐに飛ばない。


竹が軽すぎる。しなり過ぎる。曲がり過ぎている。

数え上げればきりがない。


「こうなれば、自暴自棄じぼうじきっ!!」




英醐の足に縛り付けた矢筒から次々と竹の矢を取り出し、狙いも大概に放ち続ける。



「うりゃっ!こりゃっ!そりゃっ!!」



かん!



かん!



かんっ!!



・・・・まったく当たらない。

矢はことごとく牛鬼蜘蛛の背中に当たり、すべて跳ね返されて地面に落ちる。




「やはり、矢は作らねば・・・・」



矢筒へ手をやる。



・・・・・・。



・・・・・・ない。



あ、あと・・・・一本!?




「・・・・・・無駄に撃ちすぎた!?覆水難収ふくすいなんしゅうっ!!」




震える手で最後の一本を掴むと、弓へ番える。



ぎりぎりと弓を絞る。



狙い通り・・・・飛んでくれっ!!



せめて一か所でも御霊石を砕けば、あの牛鬼蜘蛛は動きが鈍る!

この一本で、この一本でぇっ!!


「南無八幡大菩薩!この矢が的を射抜かなければ、もう神も仏も信じるものかっ!!」




宿儀が見つめる先、竹の矢の先端の軌道が、牛鬼蜘蛛の右側の足の付け根、一番大きな御霊石を捉えた。




「いけぇっ!!」



弓を絞る手を離す!



びいん!!



弾かれた竹の矢は、宙に弧を描く。


ひゅううううううん!!






ざくっ!!




竹の矢は、地面に刺さった。




「駄目かぁつ!!万事休すっ!!」



・・・・・・こうなれば、牛鬼蜘蛛の足元に落ちている竹の矢を拾いに行くしかない!









『白結丸!このままではこちらが先に霊力切れじゃ!嶺巴や宿儀はもう限界じゃろう!』


「しかし、どうすれば!」


『”枷”を外す!何とか風結を操れ!』


「ちょ、そんな急にっ!?」

『今やらねばいつやるのじゃ!』


「で、でも、心の支度が!?」


『来るぞっ!!』



牛鬼蜘蛛の太刀が風結めがけて振り下ろされる。


「くそっ!!」


風結はそのまま跳んで躱す・・・・・・。



ばしゅっ!!



高く跳びあがった。



・・・・・高く・・・・・・高く・・・・・・高く。




「うおぉぉぉっ!?と、飛びすぎぃっ!!」



『このまま落ちれば風結はばらばらじゃ!落ちる寸でのところで地面に向けて風を放つ!!』


「なんでもいいっ!!頼むぅっ!!」



ずっと下の方に因幡の街並みが見える。


「おお、すげぇ、風結・・・・」

見上げる嶺巴の蒼刃。



跳びあがり最も高い位置に達した風結は、落下を始める。



ひゅうううううううっ!!



「ひええええええっ!!落ちてるっ!!」


『白結丸!手のひらを下へ向けろっ!!』



「はああいっ!!」




その落ちてくる風結へ向けて、牛鬼蜘蛛の腹の先が狙いを定めた。


ぶしゅううっ!!


白い液体を吐き出す。



「何か来たぁっ!!」


『構わん!もう落ちるしかないっ!!』



風結が真下へ向けた手の平へ空気が集まりだす。

集まった空気は渦を巻き、真下へ向けて一気に放たれた。


牛鬼蜘蛛が放った白い液体は風に押されて牛鬼蜘蛛自身の上に降り注いだ。



ばしゃああっ!!



暗闇の中で牛鬼蜘蛛は白く塗られた。


「おお!!さすが白結丸っ!!」

嶺巴が言うと、宿儀の英醐も雲に駆け寄る。

「千載一遇!!今のうちに矢を拾う!!」






がんっ!!


ずざざざざざ・・・・・。



風結は風の勢いで地面を滑りながら吹き飛ばされる。



「いってぇっ!!・・・・大丈夫か、ミカナ!」


『・・・・い、痛いのじゃ!迂闊に飛び跳ねるな、白結丸っ!!』


「す、すまない・・・・つい、いつもの調子で!」


・・・・痛いけど、大丈夫みたいだ。風結、かなり頑丈になっている!


さすが彦佐たち、ずっと何年も戦御体を調べ続けてきただけのことはあるな。




ぎいん!!ぎいん!!


蒼刃が牛鬼蜘蛛と刃を打ち合っている。


「少しづつ、動きが鈍くなってるよ!」

嶺巴が叫ぶ。


「よし、今行く!!」


『おい、待て!!白結ま・・・・・ひいっ!!』



地面を蹴った風結は、一瞬で牛鬼蜘蛛の目の前に。


「しまったぁ!!」


『言ったばかりじゃろうがぁつ!!』


「ちょ、ちょおおっとおおおおおっ!?」


牛鬼蜘蛛と切り合っていた蒼刃に、そのままぶち当たる。



ごんっ!!



ずざざざざざ・・・・・!!


絡み合った蒼刃と風結は地面を転がる。



「うぅ、うげぇ・・・・・・にゃにふんだぁ、ひゃきゅゆういまぁりゅう・・・・」

嶺巴の目がくるくる回る。


「しゅ、しゅまぁん・・・・・・」


『き、気をつけんかぁつ!来るぞ!!』


地面に横たわる風結と蒼刃に牛鬼蜘蛛が迫る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ