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戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
一章 風結 かぜゆい

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61 風結ノ章 六十一

「よ、よくも!!よくもよくもよくもっ!!」


道明が怒りにわなわなと震える。


「護堕天に傷をつけたなぁっ!!」


護堕天は蒼刃の肩に食い込んだ太刀を引き上げて振りかぶる。


そして蒼刃めがけて振り下ろした。


・・・・よ、避けられない。





きいん!!





振り下ろしたはずの、護堕天の太刀が宙を舞った。





ひゅるるるる・・・・・。


ざくっ。


空中をくるくると回りながら跳んだ後、地面に突き刺さる。




「・・・・何が、起きた!?」



地面に、転がる竹。








「すごいじゃないですか!振り上げた太刀に矢を当てるなんて!」

皆秀は飛び上がらんばかりに喜ぶ。

その後ろに、宿儀の英醐えいごが弓を持って立っている。


「皆秀殿、おれはあいつの頭を狙ったのだ。誤発之懼ごはつのく


「・・・・それ、嶺巴殿には絶対に秘密ですよ」

秘密厳守ひみつげんしゅ







「ミカナ!その怪しい霊力れいりきというのはあいつか?」


『いや、違うな・・・・あいつのもっと奥・・・・あの屋敷の中じゃな』


「とりあえず、あいつを倒すぞ!」


『ぬかるでないぞ!』



風結は森の中から一気に姿を現すと、そのまま跳びあがり、蒼刃の前に着地する。


ずんっ!!



「すまない、嶺巴!遅くなった!!大丈夫か!?」


「は・・・・白結丸!!みんな!!」


蒼刃はその場にぺたん、と座り込んだ。


「お、おい!まだ戦いの最中・・・・」


「あーん!!ごめんなさい!いつもいつも、戦いに遅れてごめんなさい!!こんなに怖いって知らなかったっ!!」


・・・・泣き出した!?


「もう迷わないように気をつけますー!!ごめんなさいーっ!!」


蒼刃は両手で顔を覆うと、地面に伏せて嗚咽を始めた。


「ちょ、ちょっと嶺巴!!泣いてる場合じゃない!!」


「だって、だって!怖い女とか、おっさんとかいっぱい出てくるからーっ!!あーんっ!!」


・・・・・・。


「と、とりあえずミカナ!こいつを倒そう!」


『おもしろいのう、嶺巴。くくく』


「ミカナ、そういうところあるよな」




「さっきから何をやっているかわからんが、何のつもりだーっ!!」


道明が雄叫びを上げる。


「と、とりあえずお前の相手はおれがしてやる!かかってこい!」


「誰が来ようと、この護堕天に敵うものかっ!!」


護堕天は横へ跳ぶと、さっき飛ばされた太刀を拾う。

それを追って風結が間を詰める。


きんっ!!


風結が振り下ろした太刀を、護堕天が受け止める。


「速いな!」


『こっちも速さを上げるか?』


「うー、まあ、それほどでもないな」


風結は後ろへ跳ぶと、間合いを開ける。



「させるかあーっ!!」


護堕天は風結めがけて一気に跳ぶ。


太刀を横に一閃すると、その太刀は空を切った。


「消えた!?」


目の前にいた風結は一瞬で姿を消した。


「ど、どこだ・・・・上っ!?」


風結は太刀を逆手に持って、護堕天めがけて落ちてくる。


「くぅううっ!!」


護堕天は地面に転がりながらそれを避ける。


ずうん!!


風結は地面に太刀を突きさして着地する。



「くそっ、避けられた!」


『どうする?速くするか?』


「だから、それほどでもないって!」


風結は地面から太刀を抜くと一気に護堕天めがけて地面を蹴る。


地面に転がった護堕天はその勢いのまま立ち上がる。


立ち上がったその瞬間、目の前に風結の姿が迫る。


「うわぁっ!?」

道明が叫ぶ。


ひゅんっ!!


風結の一閃を、護堕天は身をよじって躱す。


「当たらないっ!!」


『じゃから!』


「いいのっ!!」


だが、風結はそこで岩場を踏んで、よろける。


「おおっ!?」


「いまだぁっ!!」


道明は素早く太刀を振り上げ、風結の頭の上から振り下ろす。


きいんっ!!


風結はその一撃を受け止める。


「お、重いっ!!」


「力比べなら、護堕天の勝ちだ!!」


お互いの太刀を十字に組み合ったまま、ぎりぎりと力押ししてくる護堕天。


護堕天の刃が風結の顔の前に迫る。


「くぅっ!!」


風結は地面に片膝をつく。


「どうだ、護堕天は負けん!!お前などに、負けるわけがないのだっ!!」


「くぅっ・・・・」


ぎりぎりぎりぎり・・・・・・。



「このまま、押し込むっ!!」


道明が叫んだ。



ひゅっ!!



何かが飛んでくる。


竹の矢!


「またかっ!!」


体を逸らして、矢を避ける。

道明が気をとられた。


瞬間、力が緩む。



「とりゃああっ!!」

白結丸が叫ぶと、護堕天の太刀を撥ね退ける。


護堕天はその勢いで後ろへ下がる。


「くそおっ!!」





「嶺巴ーっ!!」


「まかせなーっ!!」



そこへ、嶺巴の蒼刃が太刀を構えてまっすぐ突っ込んでくる。




ずふっ!!





蒼刃の太刀は、護堕天の腹のあたりから、道明の体ごと背中まで貫いた。



「ぐふわぁっ!?」


血を吐く道明。



「ま、負けるかぁっ!!」


護堕天が、蒼刃めがけて太刀を振り上げる。


その腕はゆっくりと下がり、太刀を握る手に力を失った。


からん・・・・。


地面に護堕天の太刀が転がる。



ずううん・・・・・・。



そして、護堕天はゆっくりと仰向けに倒れた。





「あたし、しつこい男は大嫌いだよ!」




『なんじゃ、もう泣いておらんのか?』

「こら、ミカナ」



「白結丸ーっ!!」


がしっ!!


蒼刃が風結を抱き締める。


「ぐへっ!?」

『こら、嶺巴!!風結が壊れるっ!!』


「ありがとーっ!!あたし、もう迷子にならないようにするからさぁ!ごめんなさいっ!!」


「う、うぎゅっ!?」

『壊れるというとるじゃろっ!!』


風結の中のミカナの声は、白結丸以外には届かない。



「とりあえず、矢を拾いましょうか、宿儀殿」

皆秀が言うと、宿儀の英醐は頷く。

「再三再四、拾っては射て、拾っては射て・・・・」


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