61 風結ノ章 六十一
「よ、よくも!!よくもよくもよくもっ!!」
道明が怒りにわなわなと震える。
「護堕天に傷をつけたなぁっ!!」
護堕天は蒼刃の肩に食い込んだ太刀を引き上げて振りかぶる。
そして蒼刃めがけて振り下ろした。
・・・・よ、避けられない。
きいん!!
振り下ろしたはずの、護堕天の太刀が宙を舞った。
ひゅるるるる・・・・・。
ざくっ。
空中をくるくると回りながら跳んだ後、地面に突き刺さる。
「・・・・何が、起きた!?」
地面に、転がる竹。
◇
「すごいじゃないですか!振り上げた太刀に矢を当てるなんて!」
皆秀は飛び上がらんばかりに喜ぶ。
その後ろに、宿儀の英醐が弓を持って立っている。
「皆秀殿、おれはあいつの頭を狙ったのだ。誤発之懼」
「・・・・それ、嶺巴殿には絶対に秘密ですよ」
「秘密厳守」
◇
「ミカナ!その怪しい霊力というのはあいつか?」
『いや、違うな・・・・あいつのもっと奥・・・・あの屋敷の中じゃな』
「とりあえず、あいつを倒すぞ!」
『ぬかるでないぞ!』
風結は森の中から一気に姿を現すと、そのまま跳びあがり、蒼刃の前に着地する。
ずんっ!!
「すまない、嶺巴!遅くなった!!大丈夫か!?」
「は・・・・白結丸!!みんな!!」
蒼刃はその場にぺたん、と座り込んだ。
「お、おい!まだ戦いの最中・・・・」
「あーん!!ごめんなさい!いつもいつも、戦いに遅れてごめんなさい!!こんなに怖いって知らなかったっ!!」
・・・・泣き出した!?
「もう迷わないように気をつけますー!!ごめんなさいーっ!!」
蒼刃は両手で顔を覆うと、地面に伏せて嗚咽を始めた。
「ちょ、ちょっと嶺巴!!泣いてる場合じゃない!!」
「だって、だって!怖い女とか、おっさんとかいっぱい出てくるからーっ!!あーんっ!!」
・・・・・・。
「と、とりあえずミカナ!こいつを倒そう!」
『おもしろいのう、嶺巴。くくく』
「ミカナ、そういうところあるよな」
「さっきから何をやっているかわからんが、何のつもりだーっ!!」
道明が雄叫びを上げる。
「と、とりあえずお前の相手はおれがしてやる!かかってこい!」
「誰が来ようと、この護堕天に敵うものかっ!!」
護堕天は横へ跳ぶと、さっき飛ばされた太刀を拾う。
それを追って風結が間を詰める。
きんっ!!
風結が振り下ろした太刀を、護堕天が受け止める。
「速いな!」
『こっちも速さを上げるか?』
「うー、まあ、それほどでもないな」
風結は後ろへ跳ぶと、間合いを開ける。
「させるかあーっ!!」
護堕天は風結めがけて一気に跳ぶ。
太刀を横に一閃すると、その太刀は空を切った。
「消えた!?」
目の前にいた風結は一瞬で姿を消した。
「ど、どこだ・・・・上っ!?」
風結は太刀を逆手に持って、護堕天めがけて落ちてくる。
「くぅううっ!!」
護堕天は地面に転がりながらそれを避ける。
ずうん!!
風結は地面に太刀を突きさして着地する。
「くそっ、避けられた!」
『どうする?速くするか?』
「だから、それほどでもないって!」
風結は地面から太刀を抜くと一気に護堕天めがけて地面を蹴る。
地面に転がった護堕天はその勢いのまま立ち上がる。
立ち上がったその瞬間、目の前に風結の姿が迫る。
「うわぁっ!?」
道明が叫ぶ。
ひゅんっ!!
風結の一閃を、護堕天は身をよじって躱す。
「当たらないっ!!」
『じゃから!』
「いいのっ!!」
だが、風結はそこで岩場を踏んで、よろける。
「おおっ!?」
「いまだぁっ!!」
道明は素早く太刀を振り上げ、風結の頭の上から振り下ろす。
きいんっ!!
風結はその一撃を受け止める。
「お、重いっ!!」
「力比べなら、護堕天の勝ちだ!!」
お互いの太刀を十字に組み合ったまま、ぎりぎりと力押ししてくる護堕天。
護堕天の刃が風結の顔の前に迫る。
「くぅっ!!」
風結は地面に片膝をつく。
「どうだ、護堕天は負けん!!お前などに、負けるわけがないのだっ!!」
「くぅっ・・・・」
ぎりぎりぎりぎり・・・・・・。
「このまま、押し込むっ!!」
道明が叫んだ。
ひゅっ!!
何かが飛んでくる。
竹の矢!
「またかっ!!」
体を逸らして、矢を避ける。
道明が気をとられた。
瞬間、力が緩む。
「とりゃああっ!!」
白結丸が叫ぶと、護堕天の太刀を撥ね退ける。
護堕天はその勢いで後ろへ下がる。
「くそおっ!!」
「嶺巴ーっ!!」
「まかせなーっ!!」
そこへ、嶺巴の蒼刃が太刀を構えてまっすぐ突っ込んでくる。
ずふっ!!
蒼刃の太刀は、護堕天の腹のあたりから、道明の体ごと背中まで貫いた。
「ぐふわぁっ!?」
血を吐く道明。
「ま、負けるかぁっ!!」
護堕天が、蒼刃めがけて太刀を振り上げる。
その腕はゆっくりと下がり、太刀を握る手に力を失った。
からん・・・・。
地面に護堕天の太刀が転がる。
ずううん・・・・・・。
そして、護堕天はゆっくりと仰向けに倒れた。
「あたし、しつこい男は大嫌いだよ!」
『なんじゃ、もう泣いておらんのか?』
「こら、ミカナ」
「白結丸ーっ!!」
がしっ!!
蒼刃が風結を抱き締める。
「ぐへっ!?」
『こら、嶺巴!!風結が壊れるっ!!』
「ありがとーっ!!あたし、もう迷子にならないようにするからさぁ!ごめんなさいっ!!」
「う、うぎゅっ!?」
『壊れるというとるじゃろっ!!』
風結の中のミカナの声は、白結丸以外には届かない。
「とりあえず、矢を拾いましょうか、宿儀殿」
皆秀が言うと、宿儀の英醐は頷く。
「再三再四、拾っては射て、拾っては射て・・・・」




