表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
一章 風結 かぜゆい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/240

58 風結ノ章 五十八

「但馬出石の国司と緋家の姫が?」

「はい。先ほど、門兵から・・・・」

「追い返したか?」

「はい」

「ならよい」


・・・・何故だ?


何のために隣国の国司と六原の姫がこのようなところに?

戦御体がばれているのか?

・・・・だが、検非違使でなく、国司と姫・・・。

わからない。


だが、もう猶予はない。



「成正!あの娘が!!」


毎朝、この様子ではもう長くないだろう。

成正は手慣れた様子で成親の刀を取り上げる。


「な、成正・・・・・あの娘が・・・・」


縋りついてくる成親を蹴り飛ばす。


「うぎゃっ!?」


「よいか、父上。今はまだ取り乱して死ぬ時ではない。よく心しておけ」


「な、成正・・・・」


なおも縋ろうとする成親をもう一度蹴飛ばすと、そこを後にした。






朽平くちひら、もう後がない!土蜘蛛つちぐもはどうなっておる!?」

成正は御造所へ入り込むなりそう怒鳴った。


「若殿!そう大きな声を出さずとも・・・・」


「六原から使いが来た!もう隠しておけん!」


「そうは言ってもな。御霊石の純度が低すぎて・・・・。こんなではお前さんの霊力れいりきでは半刻も持たんぞ!?」


そう言う朽平の襟をぐっと掴む。


「それを何とかするのが己ら御体匠の役目ではないのか?」


「・・・・・・」


「それが出来ぬような無能は・・・・」


「勘違いするな。おれはお前たちの家臣ではない。どれだけでも木や石、鉄を用意すると言ったから、戦御体を作ってやっているんだ」


成正は朽平の襟を離す。


「ともかく、もうときがない!三日だ!三日で仕上げろ!」


「・・・・もう、出来てはいる。だが、さっき言ったように、今の状態ではお前が動かせばあっという間に霊力切れだ。それだけ覚えておけ。あと三日、出来るだけのことはしてやる」


「・・・・・・」

成正は踵を返すと、御造所の出口へ歩き出す。


「それはお前のためではない!おれの御体匠としての誇りだ!」

朽平の声が響いた。






「このおれを門前払いとは、富士江成親ふじえなりちかめ、何を考えておるか!!」

このところ、道明の怒りが消えるときはない。

原因の一つが、ここにいる坂忠房だ。


「なんとなく、おかしいですね」

「なにがじゃ?」

「国司自らが訪ねてきたのに、理由も聞かずに追い返すなど、ありえない」

「だからおれは怒っておる!」

「道明殿、関所の役人たちから何か聞いてはいませんか?」

「いや、何も・・・・そういえば・・・・」

「そういえば?」

「・・・・そういえば、石をたくさん積んだ商人が街道を行き来しているとか・・・・それがどうした?」

「・・・・そこまで聞いていて、なぜおかしいと思わないのです?」

「・・・・・何?」

「石ですよ?おそらく、御霊石」

「・・・・・・」

「因幡国府では戦御体を作っているのですよ、きっと」

「何のために?」

「わかりません。ですが、もしそうだとすれば霞の末子などよりもずっと大物が釣れるかもしれませんよ?」

忠房はニヤリとした。





「あの男、どうやらミカナの仇だって言っていた富士江成親ふじえなりちかの子、成正だよ」

嶺巴は夜ごと廃屋敷に通って来る男が、国司の子息であることを門兵から聞きだした。だいたいあの手の男は胸元を少し見せると何でも話してくれる。


「と、言うことはここで待っていれば白結丸たちもここへ来るってことだ」


「しゃああ・・・・」


「でも、気になるのは、毎晩通っているあの屋敷」


「しゃあ!」


「こうなったら、今夜は声のするところを覗いてみようと思う!」


「・・・・・・」


「・・・・急に黙らないでおくれよ。興味本位とか、助平心すけべいごころとかじゃないよ?」


「・・・・・・」


「しょうがないだろ?怪しいんだから。それに、どっかの役人や紅羽たちも来ているんだ。もたもたしてらんないだろ?」


「しゃあ!」


「そう!ということで、あたし、夜まで寝るわ」

嶺巴は蒼刃の繰り座に入ると、あっという間に寝息をたて始めた。







「しゃあ!」


蒼刃の繰り座の蓋が開いた。

「・・・・あ、荊火いばらび、あいつ来たかい・・・?」

「しゃあっ!!」


嶺巴が眠い目を擦ると、屋敷に入っていく男の姿が見えた。


「よし、じゃあ後をついていくよっ!」

嶺巴が勢いよく飛び出す。


「しゃっ!」


「えっ!?」


べちゃっ!


またも嶺巴の足に荊火の鎖が巻き付いて、嶺巴は顔から地面に倒れた。


「だから、何すんだいっ!!」


「しゃっ!」


荊火が見る方、屋敷の入り口に、成正を追ってきたらしき男がいる。

その男はあたりを見回しながら、成正が屋敷に入って行ったのを見届けると、走って引き返していった。


「・・・・あたしら以外にも、あいつを追っている奴がいるのかね?」

「しゃっ!」

「こうしちゃいられないね。行くよ!」

「しゃっ!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


「今度は大丈夫だね?」

そろそろと歩き出す嶺巴。






やはり、屋敷の中は真っ暗だ。


奥へ進むと、やはり声が聞こえる。


「はっはっ・・・・・」

ぎしっ、ぎしっ・・・・・。


「なんか、やっぱり気持ちのいいもんじゃないねぇ・・・」


音をたてないように忍び足で進む。


「はぁっ、はあっ!!」


声が大きくなる。

すぐ近くだ。


・・・・・・・。



ここだ。


聞き耳を立てる。


ぎしっぎしっ・・・・。


この襖の向こう・・・・。


間違いない。


そっと、隙間から・・・・・・。



ばん!!


「きしゃあああっ!!」


いきなり荊火は襖を開けると、大声で叫んだ。


「ひやぁぁぁぁぁぁっ!?い、荊火っ!?何すんだよおっ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ