48 風結ノ章 四十八
「まずい!囲まれた!!」
何とか嶺巴と皆秀は逃げたようだが、自身はすっかり役人に囲まれてしまった。
その役人の後ろには赤く丸い球・・・・中御体が三体。
・・・・逃げられない。戦うしか・・・・。
刀を持つ手に力を入れる。
「えやあああ!」
役人たちが一斉に白結丸に斬りかかる。
白結丸は跳んでするりと躱す。
そこへ次の役人がやってきて逃げ道を塞ぐ。
「くっ!」
斬りかかってくる役人の一撃を刀で受け止めると、後ろから別の役人が斬りかかってくる。
地面に転がって避けると、その上から中御体が拳を撃ってくる。
ずん!!
間一髪、身をよじって躱す。
中御体の拳は地面にめり込む。
・・・・きりがない!
すでに宿儀も逃げているようだ。
居場所がばれた以上、弓を持ってその場にとどまるのは得策ではない。
だが、その分の役人たちが白結丸のところへ集まる。
もう、何人いるのか見渡してもわからない。
ずん!!
「盗人!!お前ひとり残るとは感心してやろう!だが、この但馬出石国司、緋道明を怒らせたことを悔やむがいい!!」
白結丸の前に、さらに戦御体が一体現れた。
さっき、皆秀が御霊石を外していた奴だ。
朱色に塗られた体、さらに白い線が体側に沿って走っている。
顔はまるで仁王像のようにこちらを睨んでいる。
「戦御体・魁怨!!盗賊を始末する!!」
・・・・相当怒らせてしまったなぁ。でも、盗賊相手にここまでしないだろ、普通!!
役人たちが刀を構えながらじりじりと迫ってくる。
前も後ろも敵。
・・・・さっき、嶺巴はなんて言ったっけ?しちめんちょうか?(四面楚歌※まわりを敵に囲まれて絶体絶命の状況のこと)
「お待たせ!白結丸っ!!」
その時、上から嶺巴の声がした。
「蒼刃!!」
青い戦御体、嶺巴の蒼刃が、国府の壁を飛び越えて白結丸たちの前に現れた。
ずううん!!
蒼刃は地面に降り立つと、腰から太刀を抜く。
「やっと、やっと、蒼刃の出番だ!!新しくなった蒼刃の力、ずっと我慢していたぶん、思う存分暴れてやるからね!!」
「盗賊風情が戦御体だと!?ふざけるな!!帰りうちだ!!」
魁怨も腰の太刀を抜いて構える。
「嶺巴!気をつけろ!そいつ、腕が立つぞ!」
「あいよ!!でもね、あたしはそういう奴を待ってたんだよっ!!」
蒼刃が一気に魁怨に迫る。
・・・・速い!!
白結丸も目を見張った。
蒼刃は一気に魁怨の目の前に迫ると、袈裟懸けに太刀を振り下ろす。
「なんと!?」
道明は呻くと、その一撃を魁怨の太刀で受け止める。
ぎいいいん!!
火花が散る。
次の瞬間、蒼刃は後ろへ跳んで、間合いを取る。
「あはは!これこれ!!」
・・・・楽しそうだな。
「おっと、見ている場合じゃないな!」
白結丸はまわりにいる役人たちに意識を向けて刀を構える。
「もう一回行くよっ!!」
嶺巴のうわずった声が響く。
「ふざけるな!盗賊っ!!」
魁怨が姿勢を低くして太刀を構える。
だだだだっ!!
地面を響かせて蒼刃が走る。
そして魁怨が目の前に迫った時。
横にいた赤い球、中御体を蹴り飛ばした。
「ぐえ?」
中御体の中から役人の呻きが聞こえる。
蹴り飛ばされた中御体は魁怨めがけて一直線に飛んでくる。
「な、なんとっ!!」
べきゃっ!!
魁怨は中御体に激突し、そのまま地面に倒れる。
「はい、もらったっ!!」
仰向けに倒れた魁怨めがけ、蒼刃が跳び上がる。
「させるかっ!!」
ざんっ!!
蒼刃の振り下ろした太刀は、確かな手ごたえがあった。
だが、斬ったのは魁怨ではなく、魁怨が盾にした中御体だった。
中御体は真っ二つに割れた。
「仲間を盾にするとは!ひどい野郎だね!!」
「お前たちに人のことが言えるか!!」
魁怨は立ち上がると蒼刃に向けて太刀を構える。
「じゃあ、こいつもあげるよ!!」
蒼刃はもう一体の中御体を捕まえて持ち上げると、魁怨めがけて投げつけた。
「邪魔をするな!」
「ひえぇぇぇぇぇっ!!」
中御体の中の役人が叫ぶ。
魁怨はさっとそれを避ける。
「うっひゃああああぁっ!!」
中御体はそのまま地面を転がり、御体蔵の中へ。
残っている中御体にぶつかって弾き飛ばしてやっと止まった。
ぼおん!!
「きゅう・・・・」
役人は目を回して気を失った。
・・・・嶺巴が中御体を減らしてくれている!
今なら、役人たちを抜けて逃げられる!
白結丸は地面を蹴って走り出す。
「来るぞ!構えろ!!」
役人たちが間合いを詰めてくる白結丸に向けて刀を構える。
「どりゃあああっ!!」
役人たちが気合を入れて白結丸めがけて迫る。
たん!!
白結丸は役人たちの目の前で地面を離れる。
「え!?」
全員がその白結丸の軌道を追って上を見上げる。
役人たちの頭上を飛び越え、背後に降りる。
「・・・・・・飛んだ?」
「そんな、馬鹿な!?」
「嶺巴、もういい!逃げるぞ!!」
白結丸はそう言うと、一気に走り国府の壁を飛び越えた。
「・・・・・・」
ぽかんとする役人たち。
「い、いかん!追え!追えーっ!!」
「逃がすな―っ!」
「道明様に怒られるぞっ!!」
「でもねぇ。こんなに楽しいのに、やめられないよっ!!」
蒼刃は魁怨の振り下ろす太刀を避けると、すっと背後を取る。
・・・・今までの蒼刃と全く違う!自分の体以上に、動いてくれる!
蒼刃の振り下ろす太刀を、魁怨が紙一重で躱す。
「なんだ、こいつ!戦御体の動きではないではないか!」
魁怨は、残った最後の一体の中御体を持ちあげる。
「おい、死にたくないなら降りろ!」
「え?あ、はい!!」
中御体の中から役人が地面に落ちて、逃げて行く。
「これでも喰らえ!!」
蒼刃めがけて投げつける。
「ははっ!!やられたらやり返すって!?」
蒼刃は跳んできた中御体を袈裟懸けに斬る。
中御体は二つに裂け、勢いを失って落ちる。
その中御体の後ろから、魁怨が一気に迫ってきた。
「えっ!?」
「くたばれぇーーっ!!」
魁怨の太刀が蒼刃めがけて振り下ろされる。




