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戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
一章 風結 かぜゆい

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47 風結ノ章 四十七

「今の光は・・・・なんだ?白結丸殿からの合図か?」

宿儀は塀の上で目を凝らしていた。

御体蔵から緑色の光が見えた。

その後、役人たちが騒ぐ声や、大勢の人の足音が聞こえてくる。


・・・・何か、騒がしいが・・・・この暗さではさすがに離れていて見えん。

まあ、見つかったことは間違いなさそうだな。


五里霧中ごりむちゅう混迷窮乏こんめいきゅうぼうといったところか?」








「くそっ!!まだ出てくる!」


すでに白結丸と嶺巴は役人を七人、あて身で倒した。

倒された役人たちは地面に転がって、痛そうにのたうち回っている。


だが、次から次へと役人が現れ、逃げ道を塞ぐ。

「白結丸!後ろから!」


「!?」


御体蔵に並んでいた、赤く丸いもの。中御体なかみたいが迫ってきた。

二つ、いや、三つ!


「これは・・・まずいな!」


「白結丸!あたしが前に出る!白結丸はミカナのとこまで走りな!」


「だが、ひとりで相手するには多すぎる!」


「でも、これじゃふたりともやられちまうよ!」




その時、群がる役人たちの間から強面の大男が現れた。


「盗賊如きにいつまでもたもたしておる!!」


「ど、道明様!」


役人たちに動揺が広がる。



「・・・・あれが、緋道明ひどうみょうか。但馬出石たじまいずしの国司だね・・・・」

嶺巴が耳打ちする。


「お前ら、とんでもないことをしてくれたな!よりにもよってこの国府を狙うとはな!」


そして道明が懐から淡く緑色に光るものを取り出す。


「お前たちの狙いはこれだろう!?」


・・・・御霊石!?




「す、すみません・・・・・つかまりました・・・・。御霊石も取り上げられて・・・・」


道明の後ろから、役人に後ろ手を掴まれた皆秀が前に出る。



「御霊石をねらうとは、大胆な盗賊だ!おろかにも、この国府に忍び込むなど、即刻処刑せねばならんな!」


道明は腰から刀を抜くと、皆秀の首に当てた。


「ひいっ!?」


「おとなしくしていろ。お前たちも刀を捨てろ!」




「どうする?人質とられて、後ろに中御体。四面楚歌しめんそかってところだね」

・・・・嶺巴が宿儀のようなことを言った!?

「よく知ってるな、そんな難しい言葉」

「あたし、よくあるからね。四面楚歌」



「仕方ない。皆秀を見捨てよう」


「・・・・そうだね」



ふたりは刀を構える。


「え!?」


「は?」



驚く役人たちと皆秀と道明。


それを尻目に、白結丸は高く刀を上げる。

うっすらと雲の切れ間からのぞく月明かりに刀身が光る。



その瞬間。


どすっ!!


皆秀の腕を掴んでいた役人の背中に矢が突き刺さった。

役人は力が抜けてゆっくりと倒れる。


「なにぃっ!?矢だと?他にも仲間が・・・・?」


道明が振り向くと、誰もいない。

「ど、どこだっ!?」


「殿!あそこに!」

役人が指さした先、遠くの塀の上に豆粒よりも小さな人影がうっすら見える。


「馬鹿言うな!あんな遠くからの矢が届くわけがなかろう!!」


ひゅっ!


どすっ!


道明の目の前の役人が矢を受けて倒れた。


「な、なんだとっ!?」



「皆秀!!」


「あ、あわわわっ!!」


皆秀は慌てて白結丸たちのところへ駆け寄る。


「くそっ!!」

道明は刀を構え、向かって来る。


白結丸が刀を構える。



「嶺巴!皆秀を連れて逃げるんだ!おれもすぐに風結まで行く!」


「でも、御霊石が!!」

皆秀が情けない声で言う。


「失敗だ!ともかくここを出る!」


「逃がすわけがないだろうがぁっ!!」


道明の合図で中御体が嶺巴と皆秀の逃げ道に立ちふさがる。


「ひいいっ!!」


「おちつきな、皆秀!中御体は人より動きが鈍い!しっかり気をつければ避けられる!」


「そ、そんなこと言っても!!」


相手は見上げる大きさの丸い物体。

それだけで威圧される。




「うりゃあああっ!!」

道明が叫ぶ。


ぎんっ!!


道明の振り下ろしの一撃を、白結丸が刀で受け止める。

・・・・重いっ!!


柄を持つ手に振動が走る。

びりびりと痺れが伝わる。


「うりゃああっ!!」

再び雄叫びを上げながら道明が攻撃を繰り出してくる。


・・・・まともに受けていたら、腕がやられる!


するりと後ろへ跳んで躱しながら、距離をとる。


だが、背後に殺気を感じ、横へ体を捻る。


ずん!


中御体が白結丸めがけて拳を振るった。

その拳は白結丸の背中を掠めて地面を叩く。


「あ、危ない!」


「もらったぁ!!」


そこへ、道明が飛び掛かって来る。


その瞬間、道明が何かを感じ取った。


ひゅん!


白結丸めがけて振り上げた刀を横へ一閃する。


きいん!!


跳んできた矢が、弾かれて地面に落ちる。


「くそっ!なんてやつだ!おい!あいつを何とかしろ!!」


道明が命じると、役人たちが宿儀のいる塀へ向けて走り出した。



「くそっ!邪魔ばかりしやがって!これでもう、お前は逃げられ・・・・あれ?」



道明の目の前にいたはずの白結丸がいない。




「奴はどこだぁっ!?」

「あ、あっちに逃げました!」

中御体の中から役人の声がする。そして短い腕で向こうを指さす。


盗賊たち三人が、広い中庭を走って逃げて行く。


「何をしておる!追わんか!!」

「承知!」


どすん、どすん、どすん・・・・。


「遅いっ!!」

「そう言われましても、これは足が短くて・・・・」


「もういい!おれが魁怨かいおんで出る!!」


そう言うと、道明は御体蔵に向かって走る。


一番奥の戦御体へ走り、縄梯子を昇ると繰り座へ滑り込む。

そして、御霊石を握る。


・・・・ない!?


「あいつら、よりによってこの魁怨の御霊石を・・・・!!許さんぞぉっ!!」


懐から御霊石を取り出して、取り付ける。


・・・・うまくつかない。


「・・・・この管と、この石のここと・・・・。あれ?何か余るな。何だ、これは?」



かちっ。



・・・・は、はまった!!



その瞬間、道明の意識が戦御体・魁怨と同調する。


そう、同調してしまった。



ずうん、ずうん。

解怨の巨体が動き出す。


ちゃんと嵌りきっていない御霊石は、少し揺れるたびにかたかたと鳴った。


「盗賊ども!!覚悟しろぉっ!!」

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